北村弁護士「一定の苦痛はやむを得ない」 死刑囚が国を提訴「絞首刑は残虐だ」 代理人に聞く遺族の“報復感情”
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 絞首刑は残虐かつ非人道的で人権侵害に当たる――。11月29日、大阪拘置所に収監されている死刑囚3人が、絞首刑の差し止めなどを求めて国を提訴した。訴状などによると、原告側は刑によって受刑者の体が損壊するなど、残虐で非人道的な結果になる可能性があるとし、国際人権法に違反すると主張している。

【映像】公開された絞首刑の刑場の内部

 では、絞首刑以外はどうなのか。比較的残虐ではないとされている薬物による死刑執行だが、去年、アメリカ・ネバダ州で死刑囚自身が「薬物は違憲とされるほどの痛みと苦しみを伴う」として銃殺刑を求め、物議に。

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 一方、EUが加入の条件に死刑廃止を求めるなど、世界では廃止する流れになっている。アメリカも半数近くの州で廃止。韓国も1997年以降、執行されておらず、事実上の死刑廃止に。

 絞首刑は残虐な刑罰なのか。死刑そのものの是非は。1日の『ABEMA Prime』で議論した。

 死刑囚側の主張について、代理人の水谷恭史弁護士は「著しい苦痛を感じるリスクが残存している」と説明する。

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 「主張の1つは執行を受ける死刑囚が感じる残虐性、もう1つは第三者が見た時の客観的な残虐性。いずれも執行の瞬間に生じるものと、その後の遺体にどんな損傷が生じるかという点からも指摘している。例えば、日本の絞首刑はおおむね3~4mを一気に落とすようなものだと言われているが、その時の衝撃により、首の一部あるいは全部が切れてしまう可能性・リスクがある。縄がしっかり引っかかったとしても、脳の血流が止まるまでの間は意識が続いていると考えられるので、長い場合は数分間、苦痛を感じるということだ。日本も批准している国際人権B規約、いわゆる自由権規約が禁じている残虐な刑罰、非人道的な刑罰、あるいは恣意的な生命の剝奪に当たるというのが我々の主張だ」

 一方、「残虐ではない」という考えの北村晴男弁護士は、その理由を次のように話す。

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 「私は憲法で考えるべきだと思う。憲法の解釈というのは、歴史的にどういう刑罰が世界で、日本で科されてきたかを検討した上で、そのうちの残虐な刑罰を禁止するとされている。代表的なのは、清王朝で行われてきた凌遅刑、日本で江戸時代まで行われた火あぶりの刑、あるいは釜ゆでの刑。そういった日本人の意識として残虐だよね、というものと比較して考えるべきものだ。憲法制定から70年余り経って、絞首刑がどうかという観点はよく検討すべきだと思う。何よりも重要なのは、日本で死刑が執行されるのは単なる殺人ではなく、罪のない人をむごたらしく殺した、あるいは複数殺した人だということ。残虐性は1つの事例だけを見て決めるものではなく、トータルの判断だということは忘れてはいけない」

 では、絞首刑以外に選択肢はあるのか。水谷氏は「あくまで現代日本の唯一の死刑執行方法である絞首刑が、自由権規約あるいは憲法に照らして残虐であるのか、そうでないのかということを事実に基づいて判断すべきだと思う。仮に残虐であるという判断が出た場合に、そうでない方法を検討するのか、導入するのか。この裁判の中では死刑そのものの存廃を問うているわけではないし、“このような執行方法をすべきだ”と積極的に主張するものではない」との考えを述べる。

 これにパックンは「死刑囚は尊い命を残虐な手段で奪っているのに、なぜ自分は違う方法なのか。感情論と言ってもいいかもしれないが、理論的にも論点が強いと思う」と投げかける。

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 水谷氏は「私自身、死刑求刑の弁護人を務めたこともある。非常に残虐な形で命を奪われて、被害者のご遺族が強い処罰感情を持つことも当然だと思っている。しかし、この報復感情を止めて、“国だけが刑罰を行使する”として作ったのが現代の刑事司法制度だ。もちろん遺族の処罰感情は考慮すべき要素ではあるが、それだけで刑罰を決めてしまうのは現代のシステムを根本から崩すことになる。例えば、身寄りがない高齢の方が無残に殺されても、 “報復してやりたい”という遺族が誰もいない場合、その人の死刑の根拠はどこに求められるのか。処罰感情のみで刑罰を考えるというのはふさわしくないと思う」との見解。

 北村氏は「死刑そのものの存否について私が考えているのは、社会の秩序は維持しなければいけないということ。我々が被害者遺族になった場合、感情としては“相手を殺したい”“報復したい”と思うだろうが、法治社会だから留めるわけだ。法に従って国に任せる。この感情や気持ちに対して、“法治国家だからそれはやめてくれ”という説得力を持たせるには、国がそれ相応のことをしてくれるのだというものが必要。殺された本人は仕返しできないけれども、国が代わって死刑という形で応報してくれるのだ、というのが実際に行われることで社会の秩序が維持される。そこが非常に重要な部分だと思っている」との考えを示した。

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 パックンは「ある程度残虐な手段がいいのか? 今の論調だと、逆に一定の苦痛を与えたほうが社会は納得するのではないか」と続ける。

 北村氏は「与えたほうが、ではなくて、死という結果が絶対に必要だというのが死刑制度の存置の理由だ。それは先ほど言ったとおり、切り刻むとか火あぶりとか、あまりにも文明に反するような残虐な刑罰はいけない。ただ、死刑というのは人の命を奪うわけだから一定の苦痛はやむを得ない。私は絞首刑が全てだとは全然思っていないが、憲法の観点では違反ではないと言っている」とした。(『ABEMA Prime』より)
 

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