「流れ作業のお役所仕事だ」 東京都議が明かす「不健全図書」不透明すぎる選定制度の実態
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「鳥取県から届いた有害図書指定の理由がヤバすぎた」(三才ブックスHPから)

 有害図書の指定について今、疑問の声が上がっている。発端は今年2月、三才ブックスの書籍3冊が鳥取県から有害図書指定を受け、Amazonで販売できなくなったことだ。

【映像】有害? 紹介された「つまようじクロスボウ」「お手軽カギ開けマニュアル」

 焦点となったのは、珍しいグッズや医療の裏歴史などを紹介した書籍。理由について問い合わせると、鳥取県は「書籍で紹介されている『つまようじクロスボウ』ついて、実際に暴行事件に用いられた。殺人、強盗など反社会的行為を著しく刺激的に表現している。『お手軽鍵開けマニュアル』は正当な理由で使われると記載されているが、ピッキングの方法を解説していて、反社会的行為の手段となり、殺人や強盗に利用される危険性がある」と回答した。

 都道府県の条例に基づいて指定される有害図書。判断基準や手順に何か問題はないのだろうか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、東京都議と共に考えた。

 三才ブックスなどによると、鳥取県では年に1回から3回、審査をしているという。今年2月のケースでは、審査のために購入した本は10冊で、そのうち9冊が有害と指定された。10冊は鳥取県の職員2名が店頭で試読し、検討した上で購入した。これに、三才ブックスは「実質、2人の担当職員が決めていたようなものではないか」と疑問の声をあげている。

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 ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「有害図書を県ごとに決めるのはありだと思う」とした上で「ただ本当に正しいのか、確認や訂正する手段がない。どういう基準で誰が決めているのか分からない。これは恣意的に出版権を制限していることになるのでは?」と指摘。

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 有害指定図書を巡る問題は、鳥取県に限った話ではない。東京では都に対して「女性向けのBLコミックに不健全図書指定が偏っている」と指摘する声が寄せられた。

  東京都議会議員(2020年当選)で青少年健全育成審議会委員を務める、日本維新の会の松田りゅうすけ氏「年間7万冊近く本が出ている中で、2人の職員で網羅的に見られるわけない。本当に18歳以下に有害なのかも含めて、お役所仕事だと感じている」と話す。

「東京都では協力員の情報を元に少年課職員6人が120冊を選ぶ。ただ、選ばれた本については審議会でも非公開だ。これは都民だけでなく、審議会委員から見ても不透明だ。また職員が120冊の中から、2〜3冊に絞り込んだ後に、民間の自主規制団体から意見聴取があるが、これが全く反映されていない。私が審議会に出席していた1年間、諮問された図書は100%の確率で不健全図書に指定された。私は鳥取県よりも東京都の方がひどいのではないかと思っている」

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 東京都は基準として3つを挙げている。

 松田氏は「指定されるとAmazonで販売されなくなる。つまり、東京都以外の地域でも買えなくなる」とした上で「全国、全世代的に買えなくなる意味で、18歳以上の見る権利も侵害されている。Amazon側の判断だが、行政がしっかりと丁寧に説明をしていない結果だと思っている」と述べる。

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「こういう話でよく出てくる『犯罪を助長する』『暴力を助長する』という指摘は、それを言い出したら殺人を描いた小説は全部犯罪を助長していることになる」とコメント。

「たとえば、BL(ボーイズラブ)と同性愛の違い、性愛と愛情の違いは微妙だ。表現には、グラデーションがある。その微妙さを引き受けないといけないのに、ポーンと放り投げてしまう。それで気が付いたら表現の自由が侵されている。これが最近の流れだ」

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 鳥取県が有害図書に指定した『アリエナイ工作事典』という本には、吹き矢の制作方法が書いてある。鳥取県の言い分では「100円ショップ等で安価に購入できる材料で制作可能で、人を傷つけてしまう道具」として、残虐性の誘発・助長を懸念したという。

 佐々木氏は「こんなしょうもない理由しか言えないところに、テキトーに選んでいることがありありと分かる」と指摘。

「ゾーニングという問題がある。例えばBLの本ばかりを売っている本屋さんもある。新宿の歌舞伎町には、性愛系のセクシーな本が多く置いてあるなど、ある程度のすみ分けがある。それを十把一絡げに『この本はどこにも置いてもダメ』というのは、あまりにも網を大きくかけすぎなのではないか。例えば、ルールとして、置いてもいい書店と置いちゃいけない書店をある程度区分けしていくなど、きめ細やかな対応をしてもいいんじゃないかと思う」

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 松田氏は「不健全図書の選定は必要だが、方法に問題がある」と話す。

「果たして行政がやるべきものなのか。本来は民間の自主規制団体などでやって、それでも表現が問題視されるのであれば、そこで初めて行政がやるべきだ。ただ、東京都の場合、審議会は傍聴もできないし、どういう理由で不健全図書に指定されたのか分からない」

「鳥取県は有害図書の選定理由を出しているが、あれで押し通せると思っている。どこからどう見ても、お笑いとしか思えないような理由を出している。私とは違う感覚だ」

 自治体による有害図書の指定制度問題。今後も議論が続きそうだ。(「ABEMA Prime」より)

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“鳥取県が「有害図書」指定→Amazonが削除” 三才ブックス編集長が条例&規制のあり方に抗議

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