8組の師弟により“最強の師弟”を決める超早指し戦「ABEMA師弟トーナメント2022」の予選Aリーグ1回戦・第2試合、チーム谷川とチーム豊川が12月3日に放送され、チーム谷川がスコア3-1で勝利、初戦突破を決めた。チーム谷川は、先に勝ち上がったチーム畠山とリーグ1位をかけて対戦する。
昨年の大会での経験と、深めた絆を活かして、チーム谷川が力強く初戦を制した。この試合で活躍したのは都成竜馬七段(32)。第1局、第3局と渡辺和史五段(28)に連勝、チームの勝利を力強く引きつけた。
第1局は後手番から三間飛車・美濃囲いを採用すると、居飛車党の渡辺五段と対抗形の将棋に。序盤はどちらもバランスを重視したため、駒を動かすのが難しい状況になったが、難解なためか渡辺五段の方が時間を早く消費。対局を見守ったチーム谷川・谷川浩司十七世名人(60)も「時間はリードしているので、作戦はある程度成功」と形勢差よりも時間差をつけたことを評価した。すると難しい中盤から、徐々に都成七段の駒に躍動感が生まれる流れに。本人も「なんとか崩れず乗り切れました」と、今大会初勝利にホッとした。
2度目の出番になったのが第3局。対戦相手も先後も同じカードになると、今度は向飛車・穴熊を使って、渡辺五段の居飛車・銀冠に対抗。本局も難しい序盤にはなったが、先に駒が捌けてきたのは都成七段だった。最終盤、時間がほとんどなくなりかけたところで渡辺五段の逆襲にあい、一時は形勢逆転されたかという局面もあったが、再び突き放しての粘り勝ち。対局後には「最後、叩き合いでなんとか制することができました」と胸をなでおろした。
弟子の2勝に結果で応えたかった谷川十七世名人は、第1局で逆転負けを喫した豊川孝弘七段と第4局でも対戦。先手番から居飛車・左美濃を選ぶと、豊川七段も居飛車・矢倉で相居飛車の将棋になった。その後、豊川七段が飛車を2筋に回し向かい飛車のようになると、これが成功したのか谷川十七世名人が苦しい展開で進んでいった。これには思わず「しっかりしろ」と自分に言い聞かせるように、自分の膝を叩く珍しいシーンも。かなり劣勢になっても弟子との戦いで簡単には諦められないと粘りながら指し進めた。するとこの粘りが通じたのか、終盤に形勢逆転。「一度負けたと思っていましたので、強気な手を続けて少しずつ差が縮まったのかなと思います」と振り返る執念の将棋で、チーム勝利を決める白星をもぎ取った。
永世名人を就位した師匠・谷川十七世名人に、結婚や弟子も取るなど環境が変わった都成七段。師弟それぞれ昨年からの変化があり、研究会などで時間を共有する時間も増えた。師弟関係を結んで20年以上にもなるが、谷川・都成師弟の関係は、また新たなステージに進んでいるようだ。
◆ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)