静岡県裾野市の保育園で働いていた保育士3人が逮捕され、5日に送検された。容疑は園児への暴行。先週行われた保護者会では、子どもたちが受けた数々の虐待が説明され、大きなショックが広がった。
裾野市は園長を犯人隠避の疑いで刑事告発。園側は10月、一連の問題行為を口外しないよう、職員全員に「誓約書」を書かせたとしている。
園児を守るためにはどうすればいいのか。5日の『ABEMA Prime』で再発防止を議論した。
14年目の現役保育士で育児アドバイザーのてぃ先生は、事件について「逮捕妥当だと思っている。宙吊りにしたりカッターで脅したり、対大人ならとっくに逮捕されていたはずで、これが対子どもだと対応が遅れたり、逮捕の可否が議論になっていたのは不思議だった。実際、いろいろな保育士から『うちでも同じようなことがある』というメッセージをたくさんいただく。世間を脅すわけでも保護者の不安をあおるわけでもなく、氷山の一角だと思う」と指摘。
虐待が起こった背景には、保育士の業務のひっ迫をあげる。「いきなり過激なことをする人は少なくて、基本的にはエスカレートしていく。最初は自分の余裕のなさから、子どもが言うことを聞いてくれない時に強い言葉で叱ってみて、それでも言うことを聞かないともっと強い言葉に、そして手が出て、さらに……となっていく。全国の保育園はどこも余裕がない状態が続いていて、変な話、園としてはこういう先生でも辞められたら困ってしまう。保育士が園に対して交渉力を持っている可能性もあるだろう。これに近いようなことは今日もどこかで起きていると思う」。
保育士資格を持ち2児の母でもある福井春菜弁護士は、事件について「複数人が一斉に逮捕されたこと、園長も刑事告発されるということがこれだけスピーディに行われたのは衝撃を持って受け止めている。虐待に対する社会の捉え方、“刑事責任が発生するものだ”という方向への変化を感じている」とコメント。
逮捕された3人は「しつけのつもりだった」と話しているが、虐待との線引はどこにあるのか。「法律の文言からみると判断が難しい。今回あがっている行為について、暴行やわいせつ行為など刑法上の責任を問われるものではないけれども、虐待に当たるものはそれなりにあると思う。虐待防止法では著しい減食や放置、暴言など、“著しい”という表現でいろいろあげられているが、その境目が法律上はっきりしていない部分があるのは確かだ。現場はそのあいまいな基準で日々対応している中で、どこまでがしつけでどこまでが虐待に当たってくるのかが徐々にわからなくなり、度を越していってしまうのだと思う」との見方を示した。
てぃ先生は「保育士は国家資格を持ったプロ。“罰をもって子どもに言うことをきかせる”という保育が良いものだとは思わないし、その状況は理解ができない」と強く批判した。
では、問題行為をなくすためにどのような対策ができるのか。てぃ先生は、園・保育士側も守る証拠になるとして防犯カメラの設置を勧める。
「保育士を監視しようという目的ではなく、感覚的にはドライブレコーダー。例えば保育士が人数を守って保育している中で、園児が偶発的に転んで骨折してしまった場合、カメラがあれば証拠として提出できる。防犯カメラの設置を提案するとだいたい保育士や園からバッシングされるが、（1）保護者が常に確認できる、（2）お昼ごはんの時だけなど局所的に確認できる、（3）基本はクローズで何か起こった時だけ確認できる、という3つの選択肢はすでにある。まず始めてみて、保護者の需要があって保育士の理解が得られるのであれば、サービスとしてやるのはありだと思う」
福井氏は「保護者の考えにも、保育の様子を自由に見たい、自分の子どもは他の親に見られたくない、など差があると思う。虐待を防止する観点と、保育士が身を守る観点、利用目的を保護者側と保育士側の双方で明らかにしておくことが大前提になる」とした。
てぃ先生は最後、今すぐにできる対応が必要だとし、「行事ごとの数が多すぎたり、保育士が毎年衣装を作っていたり、部屋に張っている画用紙のお飾りは本当に必要なのかなど、見直すところはたくさんあると思う。保育士の給与を上げるのも大事だが、今日から取り組める負担の軽減をまず一生懸命考えたほうがいい」と訴えた。（『ABEMA Prime』より）
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