この記事の写真をみる(7枚)

 2019年に発表された原ゆたかの絵本を映画用オリジナルストーリーに再構築した『映画かいけつゾロリ ラララ♪スターたんじょう』が、12月9日より全国ロードショー。本作では、ゾロリが歌手を目指す女の子・ヒポポをスターに導くため奮闘するさまが描かれる。

 ゾロリを演じたのは山寺宏一、そして生田絵梨花がヒポポ役に扮した。2021年12月末に乃木坂46を卒業して以降、ミュージカルにドラマに、さまざまな演技仕事をこなしてきた彼女だが、声優経験は意外にも少ない。そんな中で、山寺は生田の演技を受け「天才だと思った」という。そして「今作はヒポポちゃんの映画。それで良いんです」と力強く語った。

山寺宏一、台本を読んで「ヒポポちゃんに全てがかかっていると感じた」

拡大する

 今回の映画化にあたり、長年ゾロリを演じている山寺は「“ついにあの絵本が映画化”とワクワクしていました。端的に言えば歌手になりたい女の子の成長が描かれている、エンターテインメント作品の王道のようなストーリー。一方でチャレンジングなアイデアも詰め込まれているので、“これは楽しみだ!”と胸を弾ませながら、現場入りをしました」と振り返った。

 生田は「純粋に良いストーリーだと感じました。登場するキャラクターたちはダジャレを言ったりしてるんだけど、実は心に刺さる言葉だったりもして。そういう意味でも気軽に作品に触れられると思うし、その中であたたかな気持ちをもらえます。この作品にキャストとして参加することができて、すごくうれしかったです」と笑顔を見せた。

拡大する

 映画が6作目に突入した同シリーズ。今作の役作りについて聞くと山寺は「初心忘れるべからず。その一方でいたずらの天才・ゾロリは、ヒポポちゃんと出会ったことで、彼女の才能とひたむきな純粋さに惹かれ、だんだんと変化していく。そこは非常に重要な部分なので、どういう風にヒポポちゃんと関わっていくかを意識して、丁寧に作っていきました」と明かす。

 ヒポポは、とある理由で大きな声で歌うことができないスターの卵。生田は演じる上で「自信がないところからスターになっていくために、どう振り幅を設定すればいいかには悩みました。細かい部分で物語の説得力はだいぶ変わってくると感じていたので、そこはプレッシャーでしたね。序盤はいつもの自分の声よりかは細く高く設定して、だんだんと幅を広げて声に厚みが出るように」と意識していたそうだ。

 そんな中、山寺は台本を読んで「ヒポポちゃんに全てがかかっていると感じた」という。「とにかくヒポポ役は難しくて“実際に演じて成立するのか?”と心配してました。声のお仕事をそこまで経験してない生田さんになんて試練を与えるんだ…そんな風に思っていたら見事に演じ切っていましたね。天才だと思いました。今作の音響監督・三間雅文さんは友人でもあるので完成作を観る前に『生田さんどうだった?』って聞いたら、『すごく上手かった。びっくりした』と。めったにそんなことを言わない人なんですけどね」(山寺)。

 この山寺の言葉を受け、生田は「そんな風に仰っていただけるなんて、恐れ多いです…」と恐縮しきり。それから「私は山寺さんたちの声が入った後に、運良く収録することができたので、ゾロリに引っ張ってもらいました。山寺さんの声に導いてもらったんです」と感謝した。

生田絵梨花「私も“自信が持てない”と思うことはよくある」

拡大する

 確かに作品を見ているとヒポポが成長していく様子に自然と感情移入することができる。生田は「“声を入れる”という感覚よりも、ヒポポ自身になり切っていた」と語る。そこまで心を入れた芝居をしていたからこそ、見る者の気持ちを掴むことに成功したのだろう。「私もステージに立つお仕事をさせていただいてますけど、“自信が持てない”と思うことはよくある。だからこそヒポポちゃんの感情にものすごく寄り添うことができました」(生田)。

拡大する

 ヒポポは歌の練習をしている最中に妖怪に邪魔をされ、歌いながら驚くような場面がある。見ているだけで「ここを演じるのは難しいだろうな…」と想像が出来たが、生田自身も「難しかったです。とにかく画面を必死で見て、本気でドッキリを仕掛けられていると感じながら、演じていました」と振り返る。

 そんな難しいシーンだが、生田はたった2回のテイクで「OK」をもらったという。別日に収録をしていた山寺は「ええっ!? あのシーンを2回で」と驚きつつ、「生田さんは器用というだけではなく、人の心に訴えかけてくる声を持っている。本当にヒポポちゃんそのものでしたし、“何でそんなに上手なの?”って今日聞きたかったくらい」と熱く語った。

 特に山寺が生田の声を“圧巻”と感じたのは、ヒポポが街の中で突如新曲を歌唱するシーンだったという。「出来立ての曲で歌詞がないもんだから、ヒポポは“ラララ”と歌唱するんです。でも歌詞がない曲を歌うのって実は難しい。それでも生田さんはきっちりと成立させ、街の人を振り向かせてしまう。そういう声の魅力を生田さんは持っているんです。あれは見事でした」(山寺)。

 それから山寺は「気づいたら僕自身、映画を見て泣いてました。とにかく生田さんに驚いた。今作はヒポポちゃんの映画。それで良いと思っています。共演できて刺激になりました」と力を込めた。

「自分を肯定するきっかけをもらえる」山寺宏一&生田絵梨花が伝える本作の魅力

拡大する

 本作ではヒポポがオーディションに挑戦していく中での成長物語が描かれる。数々の作品に携わり、引く手数多の山寺と生田だが、これまで経験したオーディションで強く印象に残っていることは?

 「絶対に演じたかったあるアニメのオーディションに落ちてしまったその次に、とてもいい作品に恵まれました。それが僕の代表作のひとつといえる『カウボーイビバップ』。以降はオーディションに落ちても“また次がある”と思えるようになりました。若い時はたくさん苦労をした方が良いと思います。免疫を作っておくと、年齢を重ねた時に役に立ちますから。でも実は最近2つほどオーディションに落ちちゃって、“あ痛たたた”って感じです(笑)」(山寺)。

 生田も「オーディションに落ちるとやっぱり落ち込みます」と明かす。「中でも印象深かったのは、学園ドラマの大勢いるうちの生徒役で“決まりそうだ”と連絡をもらっていたんですけど、とある若手女優さんのブログを見た時に『撮影始まってます』とそのドラマの告知が掲載されていたこと。結果を聞かされてないのに落選してしまって、“ワクワクしていた気持ちを返してよ”と思う自分がいました(笑)」。

 そういう経験を経て、生田も「あそこで受かってたら、違う人生になっていたかもしれない。そういう経験を積み重ねて"今があるからOK”と思えるようになった」そうだ。

 最後に「本作で伝えたいこと」について聞くと、山寺は「僕もヒポポちゃんと一緒で、元々は引っ込み思案。今も緊張しいではあるんですけど、大人になるにつれ、思い切ってやることの素晴らしさを学んでいった気がします。なかなか勇気を持てない、自信を持てない子供達に見てもらいたいし、この作品で元気になってもらいたい。大人が見ても『ゾロリってこんなに元気をくれるの?』って思ってもらえるような内容です」と語った。

 本作では山寺とのデュエット曲を含め、5曲の歌唱に挑戦した生田は「純粋に音楽が良いので、ぜひそこを楽しんでもらえたら」と力を込める。それから「みんなそれぞれに“弱さ”とか“自信のなさ”を抱えていると思うけど、きっとこの作品を見たら、自分を肯定するきっかけをもらえると思います。最高な妖怪の仲間たちの賑やかさも、みんなの背中を押してくれるんじゃないかな」と明かした。

 「映画かいけつゾロリ ラララ♪スターたんじょう」は、12月9日より全国でロードショー。

拡大する

取材・文:中山洋平
写真:藤木裕之

(c)2022 原ゆたか/ポプラ社,映画かいけつゾロリ製作委員会

生田絵梨花 「四月は君の嘘」オフショット公開
生田絵梨花 「四月は君の嘘」オフショット公開
乃木坂46時間TV アベマ独占放送「はなれてたって、ぼくらはいっしょ!」
乃木坂46時間TV アベマ独占放送「はなれてたって、ぼくらはいっしょ!」
「1ミリも下ネタは許されない」乃木坂46のガードの堅さをさらば青春の光が証言
この記事の写真をみる(7枚)