2期連続で名人挑戦を果たした愛弟子のセンスには、師匠の目もくらんだ。8組の師弟により“最強の師弟”を決める超早指し戦「ABEMA師弟トーナメント2022」の予選Aリーグ1位決定戦、チーム谷川とチーム斎藤が12月10日に放送された。第2局は、チーム畠山・斎藤慎太郎八段(29)がチーム谷川・都成竜馬七段(32)に75手で快勝したが、この一局で斎藤八段が放った▲6五桂という妙手が絶品。思わず師匠・畠山鎮八段(53)から「その才能についていけないよ!」と、驚きの言葉が出た。
斎藤八段は長時間対局でもじっくりと指して力を発揮するが、得意の詰将棋で培った終盤力にも定評があり、劣勢になっても諦めない粘り強さも持つ。正統派の居飛車党で、バランスよく指しこなす総合力の高い棋士として知られている。順位戦A級では2年連続で名人挑戦権を獲得。またABEMAトーナメントの超早指し、フィッシャールールにおいても好成績を収めている。
1回戦では個人2連勝と上々のスタートを切ったが、1位決定戦でも冴えまくった。第2局、都成七段との一局は角交換型振り飛車の出だしとなり、さらに持った角をお互いにすぐ打ち合う大乱戦。解説していた佐藤紳哉七段(45)も「バランスを崩しやすい戦い。短い持ち時間でまとめるのが大変」と語るほどだった。
難解な中盤に入り、斎藤八段の指し手が難しい局面が続くと、持ち時間もどんどん消費。控室で見ていた畠山八段も「いやー、時間が。時間が」と心配していたところ、斎藤八段が「狙いの一手」と後に振り返ったのが▲6五桂だった。一見、桂馬のただ捨てのように見えるが、これが妙手。斎藤玉に迫っていた都成七段の飛車が詰むことが確定し、動きの悪かった桂馬を持ち駒にも変えられるという、閃きの一手だった。これを見た畠山八段は「いやいやいや。なんだそれは。その才能についていけないよ」と脱帽。また先に感づいていたのか、谷川浩司十七世名人(60)は「いやー、これがあるんですよ」とつぶやいでいた。
この一手で大きく流れを引き寄せた斎藤八段は、そのまま快勝。ファンからも「ダメ出しかと思ったらほめてた笑」「べた褒めはたちん」「才能が出た」「名言出たな」と絶賛されていた。
◆ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)