タイムパフォーマンス、縮めて「タイパ」。人々が効率を重視し、動画の倍速視聴などが当たり前になる中、その波が学問の世界にも押し寄せているという調査結果が出た。
「動画の作り方、あるいは本当にそれが有効なのかを検証していく。我々も手探りの状態でやっているので、それで授業アンケートのようなものを取りました」
こう話すのは、近畿大学情報学部の准教授で、Eラーニングによる学びの支援に関する研究を行う越智洋司氏。
2021年度からオンデマンドでの授業配信「KICSオンデマンド」の運用を始めた近畿大学が今年7月、授業を受ける学生を対象にオンデマンド授業に対するアンケート調査を実施した。すると、学生の約34%が「授業を1.5倍速で視聴した」と回答。また、14%の学生が「1.25倍速で視聴した」と回答するなど、全体の半数近い学生が授業を早送りで視聴していた。
一方、視聴速度と成績の関係性を見てみると、早い速度で視聴しても成績にそん色はなかった。この結果を受けて、越智准教授は次のように述べた。
「私としては何も驚きではないのが第一印象。個人的に『KICSオンデマンド』とは違うところでオンデマンド授業の動画を作っているが、『倍速で見てもいいか』と質問する学生が結構いる。『自分は少し早めのペースで見た方が理解が進む』など」
また、越智准教授はこれらの調査結果から、学生たちの「学びの多様化」が進むことに期待感をのぞかせる。
「オンデマンド授業は(倍速視聴だけでなく)何回も見返しができる。学生によっては早く動画を見て、空いている時間に利用するなど、“学び方の多様化”に関してオンデマンド授業は非常に合っている」
例えば、教員がスライドを埋めていくときには1.5倍速に。スライドが埋まり切ったときには一時停止して確認するなど、授業に対するアプローチの仕方は学生によって様々だ。
また、授業をオンラインで行うことによって「これまで知り得なかった授業のデータ分析を行うことができるようになった」と越智准教授は話す。
「例えば、早送りで見るだけで終わっている場合はスライドの作り方に問題があるので、そこを改善していく。いわゆる教材の評価や改善に使える。もう一つは学生の学習スタイル。オンデマンドの学びでは、自己管理が結構必要になってくる。学生の学びのスタイルを教員側が把握して、特に成績の悪い学生やレポートの提出がよくない学生などに『もう少し生活スタイルを変えた方がいいのでは』と細かい指導を行うこともできる」
倍速視聴といったこれまでできなかったことが可能になるなど、より良い学びの在り方を模索していく上で重要なオンデマンド授業。その一方で、越智准教授は「対面授業も必要だ」と話し、双方を活用した学びの在り方を模索していくべきだと訴える。
「私も別に『オンデマンドが全てで、対面はダメだ』と言っているわけではない。単なる知識を得るのであればオンデマンドで構わないし、自分の意見や疑問点を先生にぶつけていく場は大学で対面の場を活用する。うまくバランスをとることで、これから変わっていく」
(『ABEMAヒルズ』より)
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