3年ぶりに行動制限のない年末年始を迎えるにあたり、空港の「カート足りない問題」が心配されている。そんななか羽田空港で、最新技術で効率化を図る手荷物カートの実証実験が行われている。
開発したのは、東京都江東区の台車メーカー・花岡車輛。デザイナーの兄・花岡雅氏(37)と、営業部長の弟・花岡尚氏(35)の「台車兄弟」が手がけたのは、位置情報を発信できるビーコンタグを搭載した、世界初という「位置管理できるカート」だ。
羽田空港の利用者数は、1日平均約8万人(2021年、国土交通省調べ)にのぼるが、空港内に散らばるカートは、実は職員による人海戦術で回収・補充されている。人手も時間もかかり非効率だが、新カートは「どこに何台あるか」をマップ上に表示できる優れもの。来春の本格導入を目指している。
昭和8年(1933年)創業の花岡車輛は、農業用トラクターのトレーラー・タイヤなどの販売から始まり、高度経済成長期の昭和40年(1965年)には、日本初の台車「DANDY(ダンディー)」を開発した。大ヒットした初代DANDYの仕様は、JIS規格のベースとなり、いまなお国内で生産される台車に生かされている。
昭和44年(1969年)には、当時世界一の航空会社だった「パンアメリカン航空」のコンテナ用台車を製造。前後どちらからでも引ける「両牽引式コンテナドーリー」は、花岡車輛でしか作れない技術で、空港コンテナドーリーでは国内シェア9割以上を誇る。
そんな大手メーカーに育った「台車兄弟」は、ユニークな商品を続々と世に出している。台車の「ダンディレベラーシリーズ」は、荷物の重さに応じて、荷台のバネが上下するため、腰痛対策になるという。天板をのせるとテーブルに変身するホテル手荷物カート「DANDY PORTER」や、センサーで障害物も認識できる自動運搬ロボット「DANDY AUTO PILOT」も、従来の台車とはひと味ちがった商品だ。
3歳違いの兄弟は、幼い頃から台車好きで、いつも一緒に行動していた。兄の雅氏は美術大学から建築会社を経て、弟の尚氏は大卒後にIT企業の営業マンから、花岡車輛へ転職した。そこで兄弟がぶつかったのが、「台車は邪魔な時間が非常に多い」こと。使う場面が限られ、置く場所にも困る——。
イメージを変えるべく作った「ダンディXシリーズ」は、荷台中央に穴が開けられている。台車を折りたたむと、そこを持ち手にできるため、積み下ろしが楽になる。車輪も着脱可能で、狭い隙間にもスマートに収納できるのが特徴だ。
「FLAT CART 2×4(ツーバイフォー)」は、2輪から4輪にできるほか、厚さ13センチに折りたためる利便性から、キャンパーを中心に火が付いた。セレクトショップ「BEAMS(ビームス)」のオンラインショップで先行発売され、売り切れが続出。台車業界を変えるために「ありえない業界とコラボしたい」と考え、兄弟で売り込みに行った勝負台車だ。
台車兄弟の2人がそろった2012年は、売上が前年比1.6倍、問い合わせ数が前年比10倍以上に。父である花岡徹社長は「がんばっている」と評価する。
「花岡らしさは変えないで、新しいものを入れていく、という繰り返しで90年。これから先も、まだまだ若いから思い切ってやって、失敗するときは失敗して、自分で勉強してやっていくことが大事」(花岡車輛・花岡徹社長)
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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