「過去に犯罪を犯した人間は正しい事を発言する事も許されないのでしょうか?」
先月大きな議論に発展した、このツイート。投稿したのは、人気アイドルユニットの元メンバー、後藤祐樹氏。後藤氏といえば2007年、工事現場から電線を盗み警備員にケガをさせたなどとして、強盗致傷の罪で懲役5年6カ月の実刑判決を受けた過去がある。
ツイートするきっかけとなったのはこの数時間前、電車に具合の悪そうな高齢女性が乗ってきたにもかかわらず、乗客が寝たふりをして席を譲らなかったことにある。そのマナーに苦言を呈したコメントを投稿すると、Twitter上には共感する声が上がる一方で、「前科者が人のマナーを言う資格はない」「経歴に汚点があれば説得力に欠ける」など過去の罪を引き合いに出した批判の声が上がり、賛否両論を呼んだ。
法的に過去の罪を償ったとしても、社会が寛容に受け入れてくれない現実。一度でも罪を犯すと世に意見や主張も認められないのか。19日の『ABEMA Prime』で後藤氏とともに考えた。
2回目のツイートの経緯について、後藤氏は「普段から思ったことをツイートするようにしているが、今回のケースに関しては賛否がわくような内容ではないという思いがあった。ツイートをした本質というよりは、僕自身に宛てて“論点がずれてしまっているのではないか”という思いで2回目のツイートをした」と説明。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「“そうだよね”と思った人はいっぱいいると思うが、大半は何もリアクションせずにただ見ているだけ。積極的にリツイートやいいねをしたり、批判したりする人は少数派だ。我々はSNSを見ると少数派の意見に引きずられて、賛成・反対が多いとか、炎上しているとか言いたがるが、実はそんなことはないというのはもう少し気をつけなければいけない。そして、後藤さんのツイートへの批判を今後なくせるかというと、なくならないと思う。我々がやるべきは、そういう人を排除することに努力するのではなく、罪を償った方にそういうことを言うのがおかしいという文化を作っていくことしかないのではないか」との考えを述べる。
デマがネット上に流れたこともあるという。後藤氏は「例えば、罪名が間違っていたり、逮捕された回数が間違って世間に知れ渡っていたり。自身のことなので、ちゃんと自分の口から訂正したい気持ちはもちろんあるが、一歩踏み切れないところがある。本人が否定をすることによって、また新たな批判というか、『言い訳をするな』ということに繋がるので。あとは、YouTubeやSNSで活動しているので、どなたかのチャンネルで対談形式で話す機会があれば、自ら訂正させていただく」と明かした。
過去のことが掘り起こされる背景として、デジタルタトゥーの問題がある。そうした中、今年6月、男性が自身の逮捕歴を示すツイートの削除を求めた裁判で、最高裁はTwitter社に対して削除命令を出した。「情報を社会に提供する事業者の役割や表現の自由よりプライバシーの保護が明らかに優先される場合は削除できる」とした。
佐々木氏は「今の問題は、どこからどこまで名前を残して、どのくらいの期間残すのかが議論にさえなっていない。GoogleやFacebookのような外資プラットフォームに任されてしまっていて、残るかどうかさえもわからない。誰もコントロールしていないという非常に不健全な状況になっている。そこをまず、10年は保存するけどそれ以上は絶対見せないとか、何らかの定めを作らない限りこの問題は解決しない。インターネット時代になって、記録することの価値はほぼゼロになり、逆に残ることが当たり前になったという反転が起きている。SNSが流行り始めて10年ぐらいで、今子どもの人が60代になった時、中二病だった頃の自分を見せられる時代になっている。過去をなかったものにできる権利は今まで誰も考えてこなかった、新しい時代に来ていることを我々はもう少し認識すべきだ。古いことを蒸し返した時、罰則といったルールを作ってしまうと面倒くさいので、“それはかっこ悪い”という文化を作っていくのがいいと思う」と提案した。
後藤氏は「今回の件もそうだが、世間からの批判や中傷はある程度仕方のないことだと思っている。出所して今年で10年になるが、SNSを始めたばかりの時は何か発信すればほぼ100%批判的な意見しかなかったのに比べて、最近はそうした意見が少なくなってきた印象もある。犯罪をした者が頑張らないといけないのは大前提として、前科のある人たちと関わらないといけない方たちも必ず出てくると思うので、共存していけるような社会になったらなと思う」と訴えた。(『ABEMA Prime』より)
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