勝負の世界にいるものは、勝利によって急激に成長する。そんな瞬間が垣間見れた。8組の師弟により“最強の師弟”を決める超早指し戦「ABEMA師弟トーナメント2022」の予選Aリーグ2位決定戦が12月24日に放送された。チーム畠山とチーム豊川の対戦は第4局までに師匠対決で畠山鎮八段（53）が2連勝、弟子対決で渡辺和史五段（28）が2連勝し、最終決戦となる第5局にもつれ込んだ。勝てば本戦出場、負ければ敗退という大一番で、対局者を決める際、渡辺五段が「僕が行きます！」と発したことに、師匠・豊川孝弘七段（55）は「たくましくなったねー」とニコニコ。ファンからも「頼もしいぞ」「アツいなｗ」といった声が多く寄せられた。
渡辺五段は昨年度に20連勝を達成し、将棋大賞の連勝賞を受賞。苦労した奨励会時代を取り返すようにプロ入り後は目覚ましい活躍が続いた。ただ今回の師弟トーナメントではいまひとつ調子が上がらず苦戦の連続。師匠・豊川七段の踏ん張りもあり、なんとか本戦進出をかけた勝負にたどり着くと、ここで急に覚醒した。第2局、タイトル経験もあり2期連続で名人挑戦も果たしている順位戦A級棋士、斎藤慎太郎八段（29）に後手番で快勝すると、第3局でも先後を入れ替えて再戦。ここでも熱戦を制し、公式・非公式含めて初手合だった実力者相手に2連勝したことで、自信を深めていた。
豊川・渡辺師弟は、今回が大会初出場。陽気ながらも弟子思いの豊川七段の思いに応えるべく、渡辺五段は第5局の対局者を決める会議で「僕でいいなら僕が行きます。次、予選の最後なんで」と立候補。大一番を弟子に経験させたいと思っていた豊川七段だが、勧めるよりも先に弟子自ら手を挙げたのを見て「たくましくなったねー！」とすっかり感心していた。
結果はまたしても渡辺五段が勝利し、斎藤八段相手に3連勝。さらに一皮剥けたような強さで本戦への切符を勝ち取った。過去、ABEMAトーナメントの各大会で活躍した棋士が、公式戦でも活躍するケースは珍しくなく、今後の渡辺五段の将棋に、目が離せなくなってきた。
◆ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
（ABEMA／将棋チャンネルより）
