渡辺和史五段、覚醒の3連勝 2期連続名人挑戦者を圧倒「実力以上のものが出た」/将棋・ABEMA師弟トーナメント
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 昨年度20連勝の実力者が、さらに強くなった瞬間だ。8組の師弟により“最強の師弟”を決める超早指し戦「ABEMA師弟トーナメント2022」の予選Aリーグ2位決定戦が12月24日に放送された。チーム豊川の渡辺和史五段(28)は第2、3、5局と3局に渡り、チーム畠山・斎藤慎太郎八段(29)と対戦。タイトル経験もあり、2期連続で名人挑戦も果たしている実力者相手に3連勝を飾った。本人も「実力以上のものが出た」と驚く結果だが、ファンも「金星どころではない」「和史無双すぎる」と絶賛。1勝ごとに強くなる渡辺五段に、興奮の称賛が相次いだ。

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 将棋世界では、対局について相手への敬意から「勉強」という言葉を使う。お互いの力を出し、高め合うことで名局を生み出す。勝敗とは別に、棋士の使命とも言われるものだが、この試合で渡辺五段は1局ごとに学び、そして強くなった。

 関西棋界を代表する実力者である斎藤八段との初手合になったが、渡辺五段は先手番から矢倉を採用。序盤はほぼ互角の展開になったが、徐々に渡辺五段の攻めがうまく連携し始めると、持ち時間が少なくなったところで斎藤八段にミス。これをきっかけに一気に形勢が傾くと、最終盤で時間がなくなる中でも丁寧に攻めをつないで85手で快勝した。

 すると第3局、勢いに乗った渡辺五段が連投で出場すると、あえて挽回を狙ったチーム畠山も斎藤八段が連投。直後に先後を入れ替えての再戦となった。今度こそ負けられない斎藤八段が先手番から得意の角換わりの最新型を採用すると、渡辺五段も苦しみながらしっかりと食らいつくと、中盤から反撃開始。終盤は形勢が二転三転する激戦になったが、最後に渡辺五段が抜け出し124手で勝利。これには渡辺五段本人も思わず「これはもうすごい自信になります。すごく自分の糧になる勝利でした」と素直に大喜びした。

 負けて強くなることもあるが、勝って強くなる時の速度はとてつもない。チームの勝敗をかけて行われた第5局、渡辺五段と斎藤八段が3度目の対戦となったが、急速に強くなった渡辺五段の勢いは止まらなかった。斎藤八段の先手番で相掛かりから始まったが、攻め合いになってから渡辺五段の手が次々に急所に伸びた。短い持ち時間の使い方にも工夫が見え、要所で考慮を入れてから好手の連発。「山場を越えてからうまく駒が前に出た」と自賛する内容で、84手で勝利。本人も周囲も驚きの3連勝を果たした。

 対局後、渡辺五段は「ホッとしているような、今の将棋の余韻が残っているような、不思議な感覚ですね。ちょっとふわふわしてます」と夢見心地。「今日は本当にたまたま最後、出来過ぎな内容で斎藤さんに勝ち星を重ねることができました」と、これ以上ない結果を噛み締めていた。3連勝を成し遂げた渡辺五段には、ファンからも「さいたろうキラー爆誕」「和史覚醒」「和史本物だったわ」といった祝福と驚きの声が殺到。渡辺五段が本戦でどんな将棋を見せるか、さらに楽しみになってきた。

◆ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)

【映像】目を潤ませながら語る畠山鎮八段