弟子に発破をかける師匠あり、全幅の信頼を弟子に独特の表現で伝える師匠あり。8組の師弟により“最強の師弟”を決める超早指し戦「ABEMA師弟トーナメント2022」の予選Bリーグ1回戦第1試合が12月31日に放送された。試合はフルセットの末、スコア3-2でチーム深浦がチーム中田を下し、1位決定戦へと駒を進めた。この決定局となった第5局の前、チーム深浦は深浦康市九段（50）が佐々木大地七段（27）に、チーム中田は中田功八段（55）が佐藤天彦九段（34）にそれぞれ控室でメッセージを送り、大一番へと送り出した。
深浦・佐々木の師弟はどちらも長崎出身。深浦九段は最後まで諦めない粘りと強い精神力の持ち主で、ファンからは宇宙から将棋で地球を守る「地球代表」とも呼ばれている。その弟子、佐々木七段はプロデビューがフリークラスからのスタートになったが、現在では高勝率を誇る実力者の一人に数えられ、序盤研究の深さは棋士の間でも定評がある。この試合では深浦九段が2勝、佐々木七段が2敗という対照的な成績で、第5局の出場棋士を決めることになったが、ここで深浦九段は「このままでは終われないよね？男を上げてきて。気持ちで負けんなよ」と熱い言葉を連発。当初は「（指すのは）正直、どちらでも私は」と言っていた佐々木七段も、師匠の発破を受けて気持ちを奮い立たせた。
中田・佐藤の師弟は2人とも福岡出身。少年時代の佐藤九段と指した中田八段が驚き、その後は温かく見守ったところ、佐藤九段は名人3期を獲得する名棋士になった。熱い中田八段に対して、佐藤九段は独特な感性の持ち主で、ファンから「貴族」と呼ばれている。同じく第5局前の控室で、中田八段は前局に敗れた佐藤九段が部屋に戻ってきた佐藤九段を見て「オレのカードは捨てたよ。間違ったら嫌だから」と、相談する前から佐藤九段のカードを手に持つ徹底ぶり。佐藤九段も「やっぱり私ですか」とにこやかだった。
結果としては佐々木七段が佐藤九段を下しチームの勝利を決めたが、大事な一局を前にそれぞれの師匠がどんな言葉で弟子を鼓舞するのか、実にカラーの出る時間となった。
◆ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
（ABEMA／将棋チャンネルより）
