挑戦者の執拗なボディ攻めに心が折れたか…「お前チャンピオンだろ」など怒号が飛び場内を騒然とさせた絶妙なタイミングでの疑惑のバッティング。メキシコ人王者の狡猾なルールハックによるタイトル死守に、視聴者からは「ベルトはく奪を」「かわいそう」「VARが必要」など怒りや同情、批判の声が相次いだ。
1月6日にエディオンアリーナ大阪 第1競技場で、亀田興毅ファウンダーが主催する「3150FIGHT vol.4」が開催され、IBF世界ミニマム級王者のダニエル・バラダレス(メキシコ)と重岡銀次朗(ワタナベ)がベルトをかけて激突。試合は3ラウンド、偶然のバッティングによるレフェリーストップで引き分け。王座移動なしの異例の裁定となった。序盤から重岡のスピードに翻弄されていたバラダレスのルールの穴をついた故意ともとられかねない棄権防衛に場内は騒然。重岡も人目をはばからず悔し涙を流した。
試合はゴングから終始、重岡が支配。“王座戴冠”寸前を期待させた直後に訪れたまさかの結末だった。序盤から重岡がジャブを軸にパラダレスを翻弄。2ラウンドに入ると、スピードに勝る重岡が王者にボディや右のフックを当てる。対するバラダレスも大振りなフックで応戦する。また、危険を察知しクリンチに逃れる技術など老獪さも見せた。
3ラウンド、開始から重岡が右、ワンツーと当てる。バラダレスの執拗な掴みに対しても離れ際に当てて対処すると王者が徐々に下がりはじめる。さらに強いボディを何発も叩き込み、重岡が主導権を握ったまま試合は進行するかに思われたが、ラウンド終了間際に問題の出来事が起きた。
両者の頭がぶつかりバッティング…顔をしかめるバラダレス。この展開にABEMAゲスト解説の亀田大毅も「メキシコ人は、こうやって(流れが悪いと)誤魔化すんです」と大げさなアピールを指摘。さらに「こういうところは上手いといえば上手いけど汚い。でもチャンピオンなのだからちゃんと戦えよ」など、本音も。
スローで見るとバラダレスが頭から当っていったバッティングに実況席も苦笑い。それでも数分に渡り王者が顔をしかめ「もうできません」と試合続行不可能をアピールし、ゴネ続けた王者にレフェリーは試合終了を宣言した。
試合は3ラウンド終了時での偶然のバッティングによるストップ。4ラウンドに満たないということで引き分け、よって王座移動はなしという裁定に。この裁定、さらに王者陣営の様子に会場は騒然。怒号さえ飛び交った。一方、この試合にかけて準備を重ねてきた重岡はコーナーで号泣。その様子に視聴者からは「ベルトはく奪しろ」「可愛そう」「人生賭けて準備してきただろうに」「VARが必要」など、怒り、同情、さまざまな批判的な声が並んだ。
亀田大毅が「心を折ったということ」と表現した一戦。納得の行かない結果に試合後、囲み取材に応じた重岡は試合の感想を問われ10秒ほど沈黙。「不完全燃焼ですね。試合やっている最中に“これ行ける”というようになって、2ラウンド、3ラウンド目と調子よくなっていって。改めて…よくわからないです」と困惑。
さらに「相手の心が確実に折れたと、ただそこまで考えてなかったので…。嘘だろ、マジ予想外。悔しかった。今も悔しいし、この悔しさをどこにぶつけたらよいのか。是非、再戦させてほしい」とまさかの結末と試合中の手応えについて語り、再戦を要求した。
また今後について聞かれると「皆さんのおかげでリングに立てた。自分は全く納得いってないけど、また頑張るので支えてほしいです。応援ありがとうございました」とも述べ、熊本から駆け付けた応援団に勝利を見せられなかったことに涙した。
なお重岡陣営はバラダレスのバッティングについて事前情報があったという。「頭からくるのはわかっていた。実際最後はここ(左アゴを触り)に当たった。自分は全く痛くないので、相手も痛くないはず。気を付けていたのですが」と王者のバッティングのダメージについて疑問を呈しつつ、故意か否かについては「一瞬のことすぎて、故意かどうかもわからない。ホント、アゴに当たって、自分でも痛くないくらい。4ラウンドになれば負傷判定になる。相手も考えていたのかな」と続けた。
亀田興毅ファウンダーはこの件について「正面から。相撲の立ち合いのようなもの。銀次朗はアゴを当てられてる。逆に銀次朗の方が痛い」と重岡の心情を慮った。さらにダイレクトリマッチについても言及し、一夜明け会見で正式に何らかの言及をすることも示唆した。
(C)3150 FIGHT