先月16日、アメリカ国内のコーヒーチェーン「スターバックス」店舗前で激しいストライキが起こった。
2021年12月に一部の店舗で結成されたスターバックスの労働組合は、コロナ禍で悪化した労働環境の改善、賃上げなどを経営陣に要求していた。しかし、経営側が労組以外の従業員を優遇したり、労組がある店舗を閉鎖したりしたため、訴訟やストライキで対抗している。
スターバックスの経営陣が批判の的となっているのはもう1つある。経営陣は多様性を重視し、黒人など有色人種の採用比率を上げることを目標にしていた。これが「白人に対して逆差別を行っている」と保守派から批判されている。
保守とリベラルの両面から突き上げを受けているスターバックス。企業は中立を保つことはできないのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、専門家とともに議論を行った。
ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「例えば、スターバックスがポリシーとして『白人優勢でやります』と言っても、僕はいいと思う。いろいろな商品があるのは多様性だと思うので『この会社はこうすべき』みたいなのを一律押し込めようとするのは、本来の多様性とは違うと思う」と述べる。
米ディズニーもフロリダ州で昨年7月1日に施行された「子供と従業員への不正を阻止する法律(Stop WOKE Act)」に対して沈黙している。この法律は白人男性が優位にあることなどを前提とした教育や研修を違法とする内容で、企業も対象となる。多様性を重視するディズニーの従業員がCEOを批判し、物議を醸した。
その後、CEOが法案と知事を非難すると、フロリダ州議会が税制優遇を取り消す法案を可決した。
米大学で研究員としてGAFAM規制などを研究した二階堂遼馬氏(東洋経済記者)は、これらの状況をどのように見ているのか。
「スターバックスは板挟みになっているが、何か実害が出ているわけではない。だが、ディズニーでは実際にリベラル寄りの政策を社内で取ったことで、税制優遇措置をはく奪された。先日、CEOも業績不振の責任を取って交代した。特に、フロリダ州知事のロン・デサンティスさんは“ポスト・トランプ”と言われている。2024年の大統領選で出馬する可能性もある人物だし、非常に危ういと思う」
アメリカの国としての分断が企業にまで及んでいるのだろうか。
「白人男性を中心としたアメリカ社会が構造的に変わってきている。社会の分断がますます深まっていると思うが、企業にとってみれば“ダイバーシティ”は競争力の源泉でもある。これが損なわれると、中長期的にアメリカ経済の成長を削いでしまう可能性もあると思う。企業の業績にもクリティカルに響くような状況だ」
ひろゆき氏は「僕は声があがるのはいいと思っている」とした上で「ただ『じゃあサンタクロースもアジア人にした方がいいよね』や『シンデレラを黒人にした方がいいよね』となると、『それは違うと思う』という人もいる。基本的に法律以外は自由にするべきで、スターバックスが有色人種を雇いたいならバンバン勝手に雇えばいい。株主が『おかしい』というなら株主訴訟でもやればいい。外野がどうこう言う問題ではない」とコメント。
「『スーパーマン』の最新作が多様性を入れて、カップルをバイセクシュアルにした。多様性の人たちはすごく応援していたが、いざ発売されたらほとんど買われなかった。いつもならランキングに必ず入ってくるのに、一切入らなかった。結局『言うけど買わない』という、声が大きいだけの人たちに振り回される。これは良くないと思う」
フリーアナウンサーの柴田阿弥も「ディズニーは私もすごく好きだ。一方で『白雪姫』は『肌が白いから白雪姫』とされている。有色人種の方が演じることに意見は出ると思う。でも、『アラジン』のジャスミンや『モアナと伝説の海』のモアナも人気だ。多様性は作品で出すこともできるし、やりようはたくさんあるのではないか。昔のプリンセス系の話は『最後に王子様と結婚するのが女子の幸せ、ハッピーエンド』になっているのも気になるが、それも時代に合わせていくらでもリメイクできる」と発言。
「日本でも東工大の女子枠などはすごく反対意見があったのではないか。企業や学校は『例え批判を浴びても、業績に少し影響があったとしてもやるんだ』と覚悟と意識の上でやっていくしかない。それを選ぶのはお客さんや働く人だと思う」
イラク出身の父と神戸出身の母の間で生まれた元TBSテレビアナウンサーの国山ハセン氏も「多様性を意識されて『あなたハーフですね。採用する。だって多様性を意識しているから』と言われたら、私は違和感を持つ。すごく難しい問題だと思う」とコメント。
作家の乙武洋匡氏は「私が五体不満足を出したのは24年くらい前だが『マイノリティだから起用されている』という側面はあったと思う。ただ、ファーストペンギンは必要だったとも思っていて、乙武という存在がいたから『障害者であろうがなかろうが物事をしゃべれる人間がいるんだ』という突破口が開けた。これが他の方の道につながっていった部分はあると思っている」と話す。
番組司会の平石直之アナウンサーは「どんなに中立を保ったつもりで放送しても、右からも左からもむちゃくちゃ言われる」と嘆く。
「どんなに真ん中に立とうとしても言われる。今、企業経営でアメリカに多様性の波がきているなら、きっと日本にも同じ波がくるだろう。言論の世界の立ち位置の難しさを痛感している」
(「ABEMA Prime」より)
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