13歳の時に“強制入院” 東京都や病院などを提訴した高校生「児相にとって都合のいい収容所みたいな扱いだったのでは」 医療保護入院は時代遅れの人権侵害か?
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 17日、18歳の男子高校生が東京都などを相手どり1億円の損害賠償を求める裁判を起こした。

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 原告の火山優さん(仮名)は今から5年前、13歳の時に本人の同意なく精神科に医療保護入院させられた。これが違法であり違憲だとして、児童相談所を管轄する東京都、入院先の病院、そして母親を訴えたのだ。

 入院の要因となったのが親との関係性だ。火山さんが小学生の頃、両親が別居、母親との2人暮らしが始まったが、中学生になると関係が上手くいかず児童相談所に一時保護された。火山さんはその処遇を不服とし、脱走などを繰り返していた。

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 火山さんが当時の状況を情報公開請求したところ、児童相談所の担当職員が火山さんの扱いについて「虐待からの保護」から「非行・不法行為の恐れ」に変更していたことが判明。母親に「精神科への入院が必要」などと発言したことがわかったという。

 強制入院に関しては、国連人権委員会が日本に中止勧告を出しており、国会でも障害者総合支援法改正案の審議でその問題が指摘された。18日の『ABEMA Prime』では、火山さんと専門家に話を聞いた。

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 強制的に入院させられた当日のことについて、火山さんが振り返る。

 「学校に行こうと家を出た瞬間、前の方から児相職員が近づいてきて、書面を見せられた。距離があったので内容までは確認できなかったが、ひと言『一時保護する』と。待機していた職員や警察官、民間の介護タクシーの職員含め10人くらいが僕をみこしのように担ぎ上げて車両に押し込められた。そこから特に説明もなく、行き先も告げられずに、精神科病院まで連行された」

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 なぜ5年経った今提訴したのか。「1年前に無料で人権相談ができるところに電話したら、『とりあえず児童相談所と病院に開示請求をしてみるといい』とアドバイスを受けた。実施に出てきた記録を見て、医療保護入院に関しては少なくても違法だという確信に至った。また、カルテを受け取るために昨年3月に病院に行ったら、事務長から『君が入っていた時はなかったが、今は児童専用の閉鎖病棟ができている。児童相談所からの依頼は今も来ている』という話をされて、強い憤りを感じた。その後に外に出たら、児童病棟の窓から中学1年生くらいの女の子3人が手を振ってきたのを見て、“当時と何も変わっていない。むしろ悪化しているんじゃないか”と。解決しなければいけない問題だと感じた」と明かす。

 精神医療が専門の長谷川利夫・林大学保健学部教授によると、医療保護入院は精神保健指定医が判断し、家族の同意があれば本人が拒絶をしても入院させることができるという。児童相談所の関与については、「“そういうニーズ”があったんだろうと思う。彼らにとって非常に困難だと思われるような方々を、ある種のルートを作って精神科病院につなげていた実態があるのではないか」と指摘する。

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 東京都児童相談センターは番組の取材に対し、「児相はその子がどういうところで生活するのが最善かを組織として判断している。職員個人で判断することはない。そして児相が医療保護入院の必要性を判断することはない」「子どもの状況や養育環境を踏まえて精神病院への受診が必要と判断することはありうる。子どもや保護者への伝え方などはケースによるので一概には言えない」と答えている。

 これに火山さんは「事務長が言っていたのは『我々の立場上、児相から来た話や一時保護委託、医療保護の依頼というのは断ることができない。児相の意思を尊重しなければならない』と。精神科は骨折みたいにレントゲンでは分からないので、児相にとって都合のいい、いわば収容所みたいな扱いにされているのではないか」と疑問を呈した。

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 また医師から母親に対し、「本人に問題がない」「情緒障害というレベルにない」「病院としては何もやることがない」と児相側には記録としても残っているが、退院はできなかったそうだ。長谷川氏は「精神科の医療はいろいろな言葉を持っていて、診察をすれば何らかの疾患や障害などを当てはめるのは不可能ではない。恣意的な運用は可能だ」と話す。

 火山さんは、自身が保護所を脱走したこともあり、「児相の都合で入れられた」と推測している。「また同じ場所に入れても逃げられるんじゃないかと。精神科は閉鎖病棟というイメージがあると思うが、『そこに入れてしまえば逃げられないだろう』という記録も実際にいくつか残っている」。

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 火山さんは「事前に行われた医療保護入院に係る同意は違法」として母親も提訴しているが、大きく対立している要素はないという。「児童相談所に対しては、母親も関わってきた中で不満があると。僕が開示請求を始めた当初は未成年だったので、法定代理人の母親の協力が必要だった。そこは快く協力してくれて、母親の名前で開示したら出た証拠も非常に多くある」。

 病院や医師らに対しては「人権侵害かつ違法」などと主張しているが、長谷川氏は「隔離なんかだと、例えば不穏、多動、爆発性が目立ち、一般の精神病室では医療や保護を図れないとか、自殺企図または自傷行為が切迫しているとか、暴力行為、迷惑行為、器物破損行為が認められるという要件があって、それらに該当した場合にやむを得ずするもの。しかし、書面なんかを見るとどうもその欄には丸がついてなくて、最後に括弧書きで『行動が予測できない』ということで隔離されている。それはたとえ一日であろうとやってはいけないのではないか」とした。

 その上で、「精神科医療は病院のベッドの数がものすごく多くて、そちらに予算が振り向けられている。地域のグループホームだとか、精神疾患を持ちながらも1人で暮らせるような、いわゆる地域資源が非常に不足しているということだ。しかも精神科病院は民間の医療機関にすべて丸投げしてきたという歴史もあり、政策転換がしにくいままズルズルと来ている。医療保護入院として、医療または保護のために入院させることができるが、“じゃあ保護って何なんだ?”という疑問がある。そこは厚労省かどこかの検討会ではなくて、できるだけ地場から議論を深めていく必要があると思う」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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