これがフィッシャールールの過酷さか。8組の師弟により“最強の師弟”を決める超早指し戦「ABEMA師弟トーナメント2022」の準決勝第2試合、チーム谷川 対 チーム木村が2月4日に放送された。第3局は都成竜馬七段(33)と高野智史六段(29)による弟子対決に。千日手指し直しの激闘を高野六段が制し、声も枯れがれ「勝因は…わからないです」と一局を振り返った。
チームのために、師匠のために、そして自分のために。両チーム1勝1敗で迎えた第3局は、都成七段と高野六段による弟子対決となった。高野六段の先手番で始まった一局は、後手番の都成七段が振り飛車で趣向を見せるも意地と意地がぶつかり合い、難解な局面で千日手が成立。指し直し局は都成七段の先手番となった。
都成七段が8秒、高野六段は18秒と、共に持ち時間がほぼ無い中で指し直し局がスタート。全く気の抜けない状況から、戦型は相掛かりとなった。都成七段がペースを握ると、一気にリードを拡大。このまま都成七段が勝ち切るかという局面で波乱が待ち受けていた。
「勝ちになったと思って意気揚々と詰ましに行ったら、抜けていましたね」。都成七段が振り返ったのは最終盤。詰むや詰まざるやの大熱戦で、高野六段は冷静さを失わなかった。高野六段は禁じ手の打ち歩詰めの局面に誘導して逆転勝利。執念の粘りを見せ、指し直し局を134手で制した。
「勝因は…わからないです」と高野六段は声も枯れがれ。「いつ決めに来られてもおかしくないようなそんな局面がずっと続いていました。勝因は…わからないです。最後の最後で、これは打ち歩詰めで詰まないかなと思って…。本当に最後の最後というか、基本は負けだったと思います」と何とか一局を振り返った。激闘を演じた都成七段は「悔やまれる一局になりました」とガックリ。両者の表情が疲労を物語っていた。
弟子の死闘を見守っていた木村九段は、パチパチと両手を叩いて高野六段を歓迎。「傷だらけでも勝つのが大事。千日手だったからなあ。苦しい時間がずいぶん長かったけど、よく勝負に持ち込んだ、よく持ちこたえましたね」と労いの言葉をかけていた。
◆ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)