近年、売れ残った食品の大量廃棄が問題になっている。こうした課題に取り組む食品ロス削減サービスの運営元、そしてサービスを利用する店側の声を取材した。
東京・港区のハイクラスホテル「ホテル ザ セレスティン東京芝」が販売する、パンの詰め合わせと弁当。それぞれ500~600円と、手頃な価格になっている。一流のシェフが手掛けた商品にも関わらず安価で提供できる理由について、ホテルの総調理長は次のように明かす。
「フードロスやSDGSを目的に、朝食ビュッフェで提供可能な食材を二次加工して、弁当にして販売をするというコンセプトで始めた」(ホテル ザ セレスティン東京芝・元小出満総調理長)
安さの理由は、朝食のビュッフェで提供された余り物だから。ビュッフェが10時に終わると、すぐさま販売用の準備に取り掛かる。
一番心がけているのが衛生管理。食品の再提供で必要になる加熱処理にもこだわりがある。
「乾いたオーブンで火を入れていくと、つやがなくなってしまう。なので、スチームコンベクションというスチームとオーブン機能が同時に使える機械で、約90度で1分半火入れをする。パンは逆に蒸気を与えるとしなしなになってしまうので、蒸気のないオーブンを使う。こちらも1分半過熱して、ぎりぎり殺菌できる範囲で二次加工して販売している」
販売の際に活用しているのが、2018年にサービスを開始したフードシェアリングアプリ「TABETE」。登録店舗数は、都心部を中心に約2500店舗を誇る。ただ、サービスを運営する株式会社コークッキングの伊作太一CPOは、開始当初は「あまり良いイメージを持たれなかった」と話す。
「当時は“食品ロス”という言葉自体、浸透していなかった。食品ロスといっても『何それ腐ってるの?』『食べてお腹を壊したらどうするの?』など、カビが生えた食べ物のようなイメージを持っている人が多かった。そうではなくて、ほんの数十分前まで店頭に商品として売られていたものがゴミ箱に捨てられている。一種の啓発活動も併せて事業を展開していく必要があった」(株式会社コークッキング・伊作太一取締役CPO)
しかしその後、恵方巻やクリスマスシーズンの食品廃棄の問題が報じられるようになり、「サービスへの理解が徐々に広がっていった」と伊作さんは話す。
販売する店舗は、食材の余り具合によって、その日に用意できる商品を登録。ユーザーがアプリ上で購入し、実際の店舗に受け取りに行くという仕組みだ。
「お弁当ですね、お弁当1個。11時にピックアップです」(ホテルの担当者)
販売開始後すぐに弁当が売れ、最初のお客さんが受け取りに来たのはビュッフェが終わった1時間後の午前11時だった。
「実際にこのホテルに泊まって、朝食のビュッフェを食べたことがある。少しでも(食品ロスが)減るのであれば」(初めて利用する客)
「とてもおいしくて、コスパがすごくいい。他の店舗も利用しているが、とてもいい取り組みだと思う。(買おうと思っていたが買えなかったことは)しょっちゅうある」(リピーター)
そのお手頃感から、人気の商品は争奪戦になることも。このホテルでは、パンが約9割、弁当の食材は5割程度の食品ロス削減に成功したという。
「当社では、個包装かつ温度管理ができている商品以外はすべて廃棄するというルールだった。だから、ずっと『もったいないな』『まだ食べられるのにな』といった心苦しい思いでいた」(ホテル ザ セレスティン東京芝・元小出満総調理長)
そんな作り手の思いも救う、フードシェアリング。TABETEでは、スーパーやコンビニ、さらには農場・メーカーなどの幅広い分野での食品ロス削減を目指していきたいとしている。
「特に、買い手側は毎日食べ物を買うので、毎回サステナビリティを意識して、そのうえで値段を意識するとなると、疲弊して途中で『いいや』と諦めてしまう。ある程度意識しなくても、半自動的に良い消費が持続的に行える仕組みを整えないと、広い意味でのサステナビリティは実現できない。なので、買う・売るというところの仕組みづくりをテクノロジーないしプラットフォームで作り替えていかないといけない」(株式会社コークッキング・伊作太一取締役CPO)
(『ABEMAヒルズ』より)