関東を中心に、14都府県で相次ぐ強盗事件。現在まで多く逮捕されている実行犯を集める手段の1つとして指示役が使っていたとされるのが、SNSなどによる「闇バイト」の募集だ。
犯罪の温床として問題視されている一方で、詐欺の容疑で逮捕・起訴された被告が「犯罪と知らずに応募した」と主張して裁判で争っているケースもある。どのような人たちが利用されてしまうのか、またどうすれば防げるのか。『ABEMA Prime』で専門家に話を聞いた。
この被告は女性で、「簡単な作業で日給1~3万円」というTwitter上の募集を発見。別アプリによるダイレクトメッセージでのやり取りを経て、「自宅に送られた荷物を別の場所に運んで指定の人に渡す」という指示を受けた。運ぶのは書類やカメラの部品だと説明され、「違法な仕事ではないですよね?」と確認したが、指示役の男は「違法ではない」と答えたという。女性はその仕事を2回請け負い、それぞれ2万円の報酬を受け取った。警察の捜査によると、運んだのは現金(1400万円、400万円)で、2審まで実刑判決を受けている。
この被告を弁護している林大悟弁護士は「見ず知らずの人に大事な書類などを渡して、公園などに行かせて1回2万円も払うというのは、“誰が聞いても怪しいじゃないか”“犯罪に関与していたことは知っているだろう”というのがまず1点。実は裁判所は、被告人が荷物の中身をお金だと認識してなかっただろうというのは認定している。被告人の氏名・住所宛てに荷物が送られてきているが、関連の裁判例を調べた中で、被害者から受け子の家に送らせていた事例は誰一人ない。警察にすぐ捕まるからだ。この重要な事実について、裁判所は過小評価なり無視をしている、要は都合の良いところだけを強調した認定をしている」と指摘する。
一方、元埼玉県警捜査一課刑事の佐々木成三氏は「多額の現金が犯罪者に渡っていることへの加担だ。彼女の役割がかなり大きかったと認識されたのだと思う」とした上で、女性が「違法な仕事ではないですよね?」と確認している点に着目する。
「周りの人に聞いて『これは怪しい』という答えが返ってくれば、彼女は止まっていたはずだ。こういった判例においては法の不知というか、違法性の認識のない者は不利になる。裁判所として、“多額の現金が犯罪者に渡っている結果がある。ただ、犯罪とは知らないから無罪にする”という判例は作れないという実情もあるのではないか」
では、認識している・していないは状況で判断するしかないのか。「難しいのは無罪の証明もできないこと。要は、“知らなかった”というのは彼女の言葉でしかない。今回は、彼女が少しでも怪しいと思った時点で違法性の認識があったと認定されたのだと思う」との見方を示した。
これに林氏は「電話で“もしかしたら違法かもしれない”と思って聞いたかもしれない。しかしその後、2時間ぐらいうつ病のつらさなどを聞いてもらって、最後は心を開いて信じている。つまり、荷物を受け取る時にはもう疑問はなくなっているということだ。この人は以前にも出し子の仕事を打診されて、“犯罪だから”と言われて断っている。そういう人が説得されてやってしまった事案であることは裁判で前提にしている」と補足した。
知らずに受け子になってしまうのは、リテラシーの問題なのか。巻き込まれないためにはどうすればいいのか。
佐々木氏は「“1日5万円、10万円”という情報がネットの中にありふれていて、“そういう稼げる仕事は実在するんだ”という認識が若い子たちにはあるんだと思う。闇バイトを手伝った子たちに聞くと、彼らには横の価値観でしか相談できる相手がおらず、“いいバイトだね”となってしまう。5万円を作るには生産性が必要だが、彼らにはそういう認識も全くない。今回の被告にも“楽して稼ぎたい”という隙があったのだろう。残念ながら、闇バイトを募集するアカウントをなくすのは今のシステム上難しい。停止されたらまた新しく作るいたちごっこなので、若者を応募させないアプローチを考えたほうが近道なのではないか」と訴える。
林氏は「私も日々考えているところだが、まだ答えはない。佐々木さんのような方が中高の学校に行って講演するとか、やはり教育の現場だ。これだけ浸透しているツールなので、そのリテラシーを身につけていかないとなくならないと思っている」と述べた。(『ABEMA Prime』より)
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