結婚制度のアプデ “夫夫”の弁護士「“議論を待とう”から進まない」 “事実婚”の池澤あやか「一方だけが姓変更の手続きをするのは不平等」
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 同性婚をめぐる「社会が変わってしまう」という発言について、岸田総理は8日、「ネガティブなことを言っているのではない。国民の家族観と密接にかかわるもの」と改めて述べ、幅広く議論していく考えを示した。性的指向や性自認の多様性に理解を促し、差別の禁止を目指す「LGBT理解増進法案」の成立に向け準備を進めている。

【映像】“同性婚&事実婚”当事者の不利益とは

 そうした動きの一方で、事実婚が増えつつあるというデータや、若い世代には法律婚に対し疑問や敬遠する向きも。8日の『ABEMA Prime』では、パートナーシップ制度の下“夫夫(ふうふ)”になった弁護士、事実婚を選択したタレントとともに、婚姻の形について考えた。

■同性婚「このままでは“議論を待とう”から進まない」

 2011年に同性のパートナーと結婚式を挙げた南和行弁護士。岸田総理の一連の発言について、「社会が変わるという前に、当事者がいるわけだ。僕がこうやって公表できるのは稀なケースで、ほとんどの人が言いたくても言えなかったり、法律や制度がないという背景がある。制度ができることで困っている人が助かる、あるいは何らかの権利が保障されるところからスタートしないと結局、“みんなの議論を待とう”から進まない」と話す。

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 南弁護士は同性婚を認めるべき理由として、何年一緒にいても法律上は「赤の他人」で社会保障や相続などで当事者が苦しんでいること、家族の形が変わってきている中で「子どもを産み育てる」婚姻制度の趣旨は時代に合わないことをあげている。

 「自治体によるパートナーシップ制度は、要は単なる“祝福”でしかなく、法律では何の権利も保障されていない。1年ちょっと前に大きい交通事故にあって救急搬送された時、パートナーもついて来たのだが、お医者さんは『手術の説明に立ち会うのは血縁じゃないとあかん』『お母さんおらんのか』と。足の骨折で上半身はピンピンしている僕が『パートナーだ』と言っているのに、『血縁の人に説明せずに何かあって裁判されたら病院が負ける』と言われたので、他の病院へ移った。大けがをしても意思や会話が明瞭な場合、立会人は自分で決められるが、結局のところ判断はお医者さんの価値観にかかってくる。ただ、医療の現場でそう言われたらみんな我慢してしまうではないか。事実婚状態の方たちの公正証書を作るお手伝いをすることもあるが、お医者さんに言われたらそういうものを見せなくてはならないのは、差別や偏見があるということだ」(南弁護士)

■“事実婚”を選択「一方だけが姓変更の手続きをするのは不平等」

 去年、事実婚を公表したソフトウェアエンジニア兼タレントの池澤あやか。法律婚をしていない理由について、「やはり姓が変わる影響が大きい。やるべきことを書き出したらとにかく多くて、例えば銀行は実際に行って一つひとつ書類を書かなければならない。しかも、カップルの片方だけがその負担を背負うわけで、不平等な関係だと感じる」と話す。

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 事実婚は“積み重ね”が大事だといい、「結婚式を挙げて写真が残っているか、継続的に同居しているかなど、求められた時にそれらを証明できるかどうか」と説明。ペアローンを組むのも金融機関ごとに判断が変わってくるそうだ。

 また、「とにかくお金がかかる。法律婚になるべく近い権利を得るために公正証書や遺言を作るが、行政書士や弁護士に頼まなければならず、5~10万円ぐらい。婚姻届ならタダだ」と訴えた。

 こうした意見にパックンは「夫婦同姓は世界で日本だけに残っている制度で、人権侵害だと思う。でも正直、夫婦別姓が認められれば事実婚の必要もないのではないか。事実婚をしているつもりの妻としていないつもりの夫が別れる時、一方が『離婚だ』と言ったら、『離婚じゃなくて離縁なだけだ』と裁判を起こさなくてはいけない。夫婦別姓を認めて法律上での結婚・離婚にすればその処理はしなくて済むので、お互いに楽だと思う」との考えを述べた。

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 南弁護士は「既婚者が婚姻届を出そうとしたら“すでに配偶者がいる。離婚しないといけない”と言われるが、制度がなければ二重に結婚ができ、“お前とは付き合っていただけだ”などと無秩序・無責任な話になる。亡くなった時に遺言で全財産をもらっても、税務署から“他人なのに全部もらった”と見られる。そういう“もしも”の時、関係を解消しようする時に制度がないと、みんながすごく我慢しないといけない。法律婚を全否定するつもりはないが、もっと使いやすくする中に夫婦別姓や同性婚というオプションが出てくると思う」と訴えた。

■夏野剛氏「同性婚をやらない理由がほとんどない」

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 Twitter上には「そもそも法律婚は必要なのか」との声や、「結婚制度がなくなったら困るか?」という質問に3割以上が「困らない」と答えているアンケート結果もある。

 近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は「婚姻制度には2つの意味があると思っている。1つは2人の経済関係を明確にすること。婚姻届を出した日から築いた財産は全部共有のもので、別れる時は原則半分にする。もう1つは子どもの親権。自分の子どもだというのが男性はわかりづらいので、“俺の子どもじゃない”と逃げるのを防止するために、2人に養育の義務が発生する。後者はDNA鑑定で科学的に親子関係が立証できるようになり、そこまで大きな問題ではなくなってきた。前者の規定はすごく重要なイシューで、“これは共有財産だ”という前提が事実婚にはない。ただ、経済関係を確定することに“異性じゃなきゃダメ”という理屈は全くなく、男女でも子どもを持たない選択をするカップルもたくさんいる。同性婚をやらない理由がほとんどない」と述べる。

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 南弁護士は「若い人は健康だし、経済的にもこれからということで“婚姻はいらない”となるが、年を重ねてそういうものが固まってくると必要になってくる。例えば“世の中に抗ってもしょうがない。隠すのがたしなみだ”という男性同士のカップルでも、ある程度の年齢になってどちらかが余命いくばくかになると、とりあえず養子縁組をする。つまり、婚姻の代替としてハック的に使うわけだ。男同士、女同士にかかわらず、“法律婚は使いにくい”という人がこれだけ表に出てきて、若い人らにも“なくても困らない”と言われているのであれば、今の社会に必要な枠組みをガラガラポンで考える時期かなと思う」とした。(『ABEMA Prime』より)

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