プレミアリーグで屈指の得点力を誇るブライトンは、どのようにして相手を崩しているのか。好調を維持している日本代表・三笘薫の大活躍もあり、シーガルズ(ブライトンの愛称)は公式戦9試合連続で得点中だ。プレミアリーグの総得点数でも4位、平均得点数に至っては3位と攻撃的なフットボールでファンを熱狂させている。
【映像】三笘薫起点の“幻のゴール”を元日本代表・福西崇史が分析
その攻撃力をもたらしている一つの要因は、監督のロベルト・デ・ゼルビだ。このイタリア人監督は昨年9月前指揮官グレアム・ポッター(現チェルシー監督)の後任として招へいされ、今季のブライトンを好調に導いている。デ・ゼルビはイタリアの“ペップ”(現マンチェスター・シティ監督)とも呼ばれ、アタッキングな戦術をブライトンに持ち込み、現地サポーターだけでなく画面を通じて視聴する我々日本人ファンたちをも魅了している。
そんな攻撃的なフットボールを展開するブライトンの大きな強みは、サイドを起点とする攻撃だ。先日行われたクリスタルパレスとの“M23ダービー”でもその強みを活かした攻撃を見せている。本稿ではその試合で解説を務めた元日本代表・福西崇史氏が語った内容をもとに、ブライトンの持つ武器である「サイドを活かした戦術」を徹底解剖していく。
“幻”となったエストゥピニャンのゴール
先日行われたクリスタルパレスとの試合で迎えた32分、ブライトンは左サイドの崩しからエストゥピニャンのゴールで先制する。その後のVAR判定でこのゴールは惜しくも幻となってしまったが、福西氏はこの一連の攻撃にシーガルズの強みを見た。
福西氏の解説を嚙み砕いて説明すると、ブライトンは左サイドの高い位置で三笘がボールを持って相手守備陣を外に多く引きつけている。その後一度カイセドにボールを下げて相手のラインを引き上げさせ誘い出し、ボールに食いつかせたことで再び三笘にボールを戻すことで、中に広大なスペースができる。そしてそのエリアに進入したエストゥピニャンが、日本代表FWからフリーでパスを受けることができたことでチャンスが生まれた。
この一連の連係によってクリスタルパレス守備陣を左サイドに集めることができたため、ブライトンは右サイドでフリーな選手を2人つくることに成功している。その後、右サイドに展開しようとしたエストゥピニャンのパスは相手選手に当たってしまったが、こぼれ球を拾ったグロスが前向きでボールを持つことができたため、エストゥピニャンへのラストパスへとつながった。
右サイドへの展開はクリスタルパレス守備陣に引っかかってしまったものの、シーガルズのイレブンが意思疎通をできていたため、この決定機を演出することができたのである。加えて最近の三笘の好調ぶりが、相手選手を多くおびき出すことができた要因の一つだろう。結果として、ボールを回しながら人を動かしてスペースをつくり、そこを上手く使うというブライトンの戦術がはまったワンシーンとなった。
元日本代表・福西崇史が見たブライトンの狙い
この一連の攻撃の組み立ては、続く前半の41分のシーンでも見られた。今度は右サイドの高い位置でボールを保持することで、前から守備に来るクリスタルパレスの面々を誘い出す。そして中にできた広大なスペースを使ってチャンスを演出した。このシーンも残念ながら得点までは至らなかったが、サイドを攻撃の起点とするブライトンの狙いが見えた形となった。
サイドにボールを集めて相手選手をおびき出し、それによってつくられたスペースを使って決定機を演出する。このサイドでのボール保持を起点として相手守備陣を崩していくという、ブライトンの狙いがチーム内で意思統一されているということが改めてクリスタル・パレス戦で証明された。
結果的にM23ダービーでは惜しくも勝利とはならなかったが、チャンスを演出したシーンはブライトンの方が圧倒的に多く、これまでと同様に得点の期待感が非常に高い試合であった。クラブ史上初の欧州カップ戦出場権獲得に向けて、今季後半戦も持ち前の攻撃力を活かした試合運びを行い、これまで以上の得点と勝利を期待したい。
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