野球を知る人からすれば、キャッチボールを見ればその技量・力量がわかると言うが、MLBでもエースとして活躍する男のキャッチボールは、野球をよく知らない人が見たとしても、その威力に「さすが」と頷くしかないだろう。第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場する日本代表(侍ジャパン)の宮崎キャンプが2月17日にスタート。チーム最年長、36歳のパドレス・ダルビッシュ有投手は、MLB組としては唯一、初日から参加し、精力的に動いた。過去にバッテリーを組んでいた鶴岡慎也氏とのキャッチボールは見応え十分。グラウンドを囲むように集まったファンだけでなく、後輩のチームメイトたちも、その見事な投げっぷりに釘付けになった。
ただのキャッチボールではない。“ほぼピッチング”と言っていいほど、ダルビッシュのボールはうなりを上げて、鶴岡氏のミットを貫くほどに収まっていった。少しずつ距離を取り、遠投の距離になっても、コンパクトに振られた腕からドンと出てくるボールは失速するどころか、どんどんと伸びるような軌道を描いて、またミットに届く。数球見ただけでも説得力は十分だ。さらには肩がほどよく温まったところで変化球も試し投げ。マウンドの傾斜から投げるかどうかで大きく違うが、それでも伸びるストレート、大きく曲がる変化球に、ファンだけでなく選手たちも固唾を呑んでいた。
他のMLB組がアメリカでの自主トレをする中、唯一チームから侍ジャパンの合宿帯同を許されたダルビッシュ。練習の合間には、後輩投手に変化球の握りをアドバイスするなど、WBCという大会に勝つという以前に、集まった選手たちとの交流を率先して楽しんでいるようにも見えた。2度目の優勝時には、最後の打者を三振に奪ってマウンド上で雄叫びをあげたダルビッシュ。今大会ではただ勝つだけでなはく、多くの物を仲間に伝えようとしているかもしれない。
(ABEMA『SPORTSチャンネル』)




