「骨退院を希望する家族も…」精神疾患に“身体拘束”は必要か? 専門家と考える正当性と人権
【映像】ひろゆき「生きる死体にするのも違う」精神科で暴行? 身体拘束の実情
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 東京・八王子市にある滝山病院で、入院患者への暴行の実態が明らかになった。関係者による告発を受け、警察は2月15日までに病院に勤務する50代の男性看護師を逮捕した。ほかにも3人が告発され、引き続き警察は実態を捜査している。

【映像】患者「痛い…」カメラが捉えた虐待の瞬間(音声あり)

 弁護士によると患者への暴行は日常的に行われていた疑いがあるという。ニュース番組「ABEMA Prime」では、精神病患者への虐待・暴行の実態、そして身体拘束の是非を考えた。

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 「精神科医療の身体拘束を考える会」代表を務める長谷川利夫氏(林大学保健学部教授)は「数年前から死亡退院率が高く、関係者の間ではよく名前が出ていた病院だった」と明かす。

「この病院だけの特殊な問題ではないが『暴力を振るっても構わない』という文化が醸成されていたのではないか。身体拘束は、やらないに越したことはない。できるだけやらない前提で何ができるか、組み立てていく発想が必要だ」

 長谷川氏の説明に、ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「夜中に暴れ出す患者がいて、他の人もパニックになったらどうするのか。当直の看護師も人数が少ないから、どうしようもない。現実問題として、そもそも建前通りにいかないと思う」と指摘する。

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 長谷川氏は「それは『精神科の患者さんは暴れるもの』という前提が含まれているのではないか」と話す。

「非常に穏やかな時間が流れている病院も実際にある。夜のコンビニに1人で行くほうが怖いなと思うぐらいだ。ただ、夜勤帯に職員2人で50人ぐらいの患者を見ているケースもある。2人のうち1人は看護師ではない、補助者のような立ち位置だ。日本の精神科病院は、他科に比べて医師人数は3分の1でよかったり、看護師は3分の2でいいという『精神科特例』がある。看護補助者も看護師とカウントしていい。すごくおかしな実態だと思う」

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 滝山病院は精神科が255床、内科が33床で合わせて288床に対し、医師の数は常勤3人、非常勤8人で看護師数が常勤12人、非常勤が164人となっている。この体制に長谷川氏は「全く例を見ないような非常勤の多さで、あまりにもアンバランスだ」と驚きを隠せない。

「実態は分からないが、週3日勤務の人を組み合わせて看護基準を満たしていたのか。いろいろな想像をしてしまう」

 行政側で「病院を潰してはまずい」といった配慮が働いているのではないか。長谷川氏は「それは大いにある」と答える。

「日本の場合、精神科病床の8割以上が民間病院だ。家族経営で精神科病院を代々やっていて、潰すことができない。病床の数を維持して保っている。患者の減少は、企業が縮小していくことと同じだ」

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 身体拘束がなぜ、法律で認められているのか。

「身体拘束は基本的にはやってはいけないが、一定の条件のもとに認められている。身体拘束と言っても、日本の拘束具は分厚い柔道着のようなものを使う。10年で2倍になったデータがあるが、スタッフが両脇にいて患者さんにゆっくり話しかけながら使うなど、いろいろなバリエーションがある。滝山病院が使っていた拘束具は、全部海外製だ。私は久しぶりに見た」

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 輸入した拘束具を使用することは、法律的に問題ないのか。

「法的には『身体的拘束を行う目的のために特別に配慮して作られた衣類または綿入り帯等』だ。それに当たるかどうかだ。特別に人を痛めないために、中に綿みたいなものを入れて、ソフトにしてあるか。ただ、告発状を見たが、そもそも身体拘束を医師の指示がない中でやっていた可能性もある」

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 数年前から噂が立っていたという滝山病院。こういう病院と知って入院させた家族はどれくらいいるのだろうか。

「数字ではちょっと言えないが、相当数いたのではないか。医療保護入院は、医師と家族が同意すれば入院させられてしまう。ここが精神科の難しいところだ。家族間で関係が悪化して、家にいられない人もいる。ベースに精神疾患があれば『じゃあ精神科病院に行ってちょっと入院しようか』となる。でも、ここまでの虐待を許容して入院させた家族はそんなにいないと思う。精神病院には“骨(こつ)退院”という言葉がある。悲しいが『もうお骨になって退院してきてくれ』という言葉だ。これを希望されている家族もいたのではないか」

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 患者にとっては明らかに良くない病院でも、ビジネスとして成立している。行政が規制を設けるしかないのだろうか。

「東京都などの自治体が行う監査や実地指導は、何日も前に全部アポイントを取る。例えば『院内感染を中心に聞きます』と言われて、打ち合わせして万全の準備で迎え入れる。そうではなく、たまに抜き打ちで入れてみるだけでも緊張感が出る。今コロナ禍なので非常に難しいかもしれないが、そういう活動をしている市民団体やグループの訪問を受け入れてもらえるような方向で進めていくといいと思う」

 報道で表沙汰になっても、行政が大きく舵を取らないのは何か理由があるのか。長谷川氏は「政治的な力量があって、なかなか風穴が開けられない」という。

「2020年3月に神出病院事件という虐待事件が発覚して、看護師・准看護師6名が逮捕された。陰部にジャムを塗って患者さんに舐めさせるなど、それはもうひどかった。208ページにわたる第三者委員会の報告書もある。ただ、その後なかなか十分な法改正ができなかった。僕は虐待防止に関して、精神保健福祉法という医療の枠組ではなく、虐待防止法の枠組みでやってほしかった。結局、政治との綱引きがあって、日本精神科病院協会のトップがワッと出てきて、全部ちゃぶ台返しみたいな感じになってしまう」

(「ABEMA Prime」より)

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