“無双”と言われた絶好調の三笘薫がついに封じられた。
2月19日に行われたプレミアリーグ第24節でブライトンはフルアムと対戦した。ブライトンは好調を維持する三笘薫を中心に勝利を目指したものの、日本代表戦士をはじめとする攻撃陣が抑え込まれる結果に終わってしまい、チームは勝ち点を手にすることができなかった。
三笘薫は圧倒的な成功率を誇るドリブルを武器にシーガルズ(ブライトンの愛称)の攻撃を牽引している。最近では2戦続けて決めた試合終了間際での決勝ゴールを含む、公式戦3試合連発を記録し、今ではもはやブライトンに欠かせないエース級の存在だ。この試合ももちろん先発出場を果たし活躍が期待された。その期待通り試合開始まもない前半3分、三笘は得意とするドリブルによって相手守備陣を切り裂き、イングランド人FWマーチへとパスで決定機を演出する。しかしここからフルアムの三笘対策が発動し、これ以降、日本代表FWは封じ込まれてしまった。
三笘薫とマッチアップしたオランダ代表DF 鉄壁の守備をみせる
この試合で三笘と対峙したのは、オランダ代表経験を持つ右サイドバック ケニー・のテテであった。テテは瞬発力とスピードがストロングポイントのディフェンダーである。そのため日本代表戦士を縦に誘導することで自身の強みを活かした勝負をしたいオランダ人DFは、三笘が内側へとボールを持ち運ぶのを妨ぎ、ドリブルのコースを縦に限定することができた。
三笘のドリブルの特徴は初速の速さを生かしたダイナミックなボールの持ち出しであり、簡単に飛び込むディフェンダーは三笘の餌食となって一瞬にしておいていかれてしまう。しかしテテは、三笘がボールを離す瞬間を見極め、簡単にボールに食いつくことはしなかった。この時点ですでに三笘とのマッチアップにおいてテテが優位に立っていたのだ。
フルアムはさらに三笘対策を敷いてくる。テテが攻略されたあとのカバーの選手をしっかり配置していた。三笘がテテの思惑に反して内側にドリブルを行うと、瞬時にゴールラインと並行にブロックを形成。三笘がテテを抜き去ることで生じる、三笘の足元からボールが離れる一瞬を狙い、日本代表戦士を封じ込めたのだ。完全にフルアムの研究の賜物といえる鉄壁の守備であった。
「立ち位置の変更」と「タッチの多様化」でさらなる進化
フルアムが三笘を封じることに成功したことで、今後ブライトンと対戦するチームはフルアムが行ったような三笘対策を模倣してくることが予想される。そのためには今回の反省を次戦以降に活かしていかなければならない。今回の試合で見えてきたものは、三笘と対峙する選手が縦に速く、正確にカバーを配置されると突破確率が著しく下がるということだ。その壁を乗り越えるためには三笘はさらに進化する必要がある。
1つは「立ち位置の変更」だ。三笘は主に左サイドに大きく開いてボールを受け、得意のドリブルで相手守備陣を翻弄する。しかしそのパターンだけであると相手チームはマークにつきやすく、次のプレーの予測も容易だ。そのため内側に移動しながらボールを受ける必要性がある。これにより左サイドでコンビを組むエクアドル代表DFエストゥピニャンの選択肢が大きく広がり、三笘だけでなく2人で深みのある攻撃が展開できるようになるだろう。エストゥピニャンとの連係は現時点でも多くはないものの見受けられるため、回数を増やして練度を高めれば相手チームにとって悩みの種となることは間違いない。
もう1つは「タッチの多様化」である。三笘はダイナミックにボールを持ち出し、初速の速さで相手を置き去りにするドリブルを得意としている。しかしこの試合では瞬発力とスピードを武器とするテテを相手に抜ききれないシーンがあった。速さだけでなく、より細かいタッチのドリブルを行い、狭いスペースでドリブルを成功させることができるようになれば相手は対応できなくなるだろう。
この試合では苦戦を強いられた三笘であったが、プレミアリーグでも屈指のウィンガーであることには変わりはない。エストゥピニャンとの連係を深め、得意のドリブルをさらに研鑽すれば“向かうところ敵なし”となる日もそう遠くはないだろう。
ブライトンの指揮官は、直接得点に結びつかなくても積極的にチャレンジする選手を好み、三笘についても「ベンチに下げることはできない選手」と評している。研究されてもそれを上回る進化をみせ、イングランドの地で“無双”する日本代表戦士に期待したいものである。(ABEMA/プレミアリーグ)(C)aflo