プレミアリーグ
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 トッテナムの韓国代表FWソン・フンミン(30歳)とイングランド代表FWハリー・ケイン(29歳)のゴールデンコンビが、また新たな記録を塗り替えようとしている。

 今月19日に行われたプレミアリーグ第24節のロンドンダービーで、スパーズの誇る“黄金コンビ”が偉大な記録にまた一歩近づいた。ウェストハムを本拠地に迎えた一戦で、ベンチスタートとなったFWソン・フンミンは68分に投入されると、その5分後に味方からのパスを受けてDFラインの背後に抜け出すと冷静にゴールネットを揺らして2-0の勝利に貢献した。そのゴールをお膳立てしたのが、韓国代表ストライカーと息の合った連係を見せるケインだ。

 この得点によりソン・フンミンはプレミアリーグ通算98ゴール目。そのうち「23ゴール」がケインのアシストによるものだ。これは一人の選手から特定選手へのアシスト、いわゆる“ゴールデンコンビ”においてプレミアリーグ歴代2位の記録だ。そして1位の記録まであと1点に迫っているというのだ。

 それではプレミアリーグの“黄金コンビ”の歴代ランキングを見てみよう。

[写真]=Getty Images

■1位:24ゴール

フランク・ランパード → ディディエ・ドログバ(チェルシー)

ランパード、ドログバ
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 ソン・フンミンとハリー・ケインが目指すのは、元チェルシーの黄金コンビが打ち立てた記録である。2004年から8シーズンに渡ってチェルシーで活躍した元コートジボワール代表FWディディエ・ドログバは、2006-07と2009-10シーズンにプレミアリーグで得点王に輝くなど、同リーグで254試合に出場して通算104ゴールを叩き出した。

 そのうちの「24ゴール」が元イングランド代表MFフランク・ランパードによるアシストだった。2009-10シーズンにはドログバが29ゴールでリーグ得点王に輝き、ランパードも14アシストで最多アシストをマーク。ランパードのパスからドログバが6ゴールを決めて、チームも4年ぶりのリーグ制覇を成し遂げた。

 もちろん、ランパードは“引き立て役”だけに留まる選手ではなかった。そしてドログバも、ただゴールを決めるだけの選手ではなかった。ドログバは2005-06シーズンには11アシストでプレミアリーグのアシスト王(当時はそういう賞はなかった)に輝いているのだ。そして、その時にはランパードのゴールを6点もアシスト。そんな味方のお膳立てもあり、ランパードはミッドフィルダーながらプレミアリーグ歴代6位となる通算177ゴールを決めることに。そのうち12点がドログバからのアシストだった。

 ランパードは過去のインタビューで「いつも一緒にシュート練習していた」とドログバとの思い出を振り返ったことがある。「壁パスや彼の動き出し、自分がボックスに飛び込むタイミングとか、色々な状況について常に話し合っていたんだ。ピッチ上でのお互いの位置は感覚で掴めていたんだ」

 そのため、互いにゴールをアシストした回数は「計36回」。これはスパーズの黄金コンビに抜かれるまではプレミアリーグの最多記録だった…。

■2位:23ゴール

ハリー・ケイン → ソン・フンミン(トッテナム)

ソン・フンミン、ケイン
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 チェルシーコンビの記録まであと1ゴールに迫っているのが、トッテナムの現役ゴールデンコンビだ。前述通り、ソン・フンミンはこれまでプレミアリーグ通算98ゴールを決めており、プレミア史上34人目、アジア人としては初の100ゴール達成が目前となっている。

 そんな韓国代表ストライカーの得点のうち、約4分の1をアシストしているのがケインだ。この黄金コンビが最も輝いた瞬間は、2020年9月のサウサンプトン戦である。敵地に乗り込んだスパーズは、先制ゴールを許しながらもソン・フンミンの大量4ゴールで一気に逆転して5-2の勝利を収めたのだ。その時に、ソン・フンミンの4得点を全てアシストしたのがケインだった。当然、プレミアリーグの1試合における特定選手に対するアシスト記録ともなった。

 そしてソン・フンミンは昨シーズン、ケインからの5アシストの手助けもあり、23ゴールを叩き出してアジアとして初めてプレミアリーグの得点王に輝いて見せた。「ハリーと一緒にプレーできることを今でも幸運に感じている」と、先日ソン・フンミンは英紙『デイリーメール』のインタビューで相棒への感謝を口にしている。

 そしてこう続けている。「イングランドの人はみんなハリーが大好きだよね。彼は記録を打ち立て続けているしね。僕だって10年後、当時を振り返って彼と一緒にプレーできたことを特別だと感じるはずさ。どれだけ力になれたか分からないけど、少しは彼の力になれたと思いたいね」

■3位:22ゴール

ソン・フンミン → ハリー・ケイン(トッテナム)

ケイン、ソン・フンミン
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 ソン・フンミンが称えるようにFWハリー・ケインは数々の記録を打ち立てている。昨年のワールドカップでは2得点してウェイン・ルーニーが持つイングランド代表の歴代最多ゴール(53点)に並んで見せた。さらにトッテナムでは公式戦267ゴールを決めており、ジミー・グリーヴズ(266ゴール)を抜いてクラブ歴代最多ゴール記録を更新中だ。

 そしてプレミアリーグでは史上3人目にして歴代最速となる200ゴールを達成している。そのうち17ゴールは現在マンチェスター・Uに所属するデンマーク代表MFクリスティアン・エリクセンのアシストによるものだが、それ以上にケインの得点に貢献しているのがソン・フンミンである(22アシスト)。

 スパーズの“黄金コンビ”に序列はないようで、互いに同じくらいゴールをアシストしており、「計45」のコンビ間アシストはプレミアリーグ歴代1位。とはいえ、“ドログバ&ランパード”が12個もの主要タイトル(チャンピオンズリーグ1回、プレミアリーグ4回、FAカップ4回、リーグカップ3回)をチェルシーにもたらしたのに対し、今のところ“ケイン&ソン・フンミン”のコンビは無冠のままだ…。

■4位:21ゴール

ダビド・シルバ → セルヒオ・アグエロ(マンチェスター・C)

シルバ、アグエロ
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 4位はマンチェスター・Cに栄光をもたらした元スペイン代表MFダビド・シルバと元アルゼンチン代表FWセルヒオ・アグエロの名コンビだ。2011-12シーズンの最終節に、マンチェスター・Cに44年ぶりのリーグ優勝をもたらす決勝弾を叩き込んだアグエロは、プレミアリーグで275試合に出場して歴代5位の通算184ゴール。そのうち21ゴールが左足のマジシャンによるアシストだった。

 アグエロは何度もチャンスをお膳立てしてくれたダビド・シルバに感謝しており、2020年にダビド・シルバのマンチェスター・Cでの10年間を振り返る『エル・マーゴ』(スペイン語で魔法使いの意味)という本が出版された際には前書きを買って出てこう綴ったという。「クラブの垣根を超えて他のチームのサポーターからも称えられるとき、レジェンドが誕生する。それがダビドなんだ。マンチェスター・Cの歴史には“ダビド前”と“ダビド後”がある。君は、僕たちみんなを大きく見せてくれた。僕を含め、みんなが君からたくさんのことを学んだんだ」

■その他:

ピレスとアンリ
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(左)ピレスと(右)アンリ

 スパーズには、過去にも黄金コンビが存在した。それがMFダレン・アンダートンからFWティディ・シェリンガムのホットラインである。元イングランド代表FWシェリンガムは、1992-93シーズンに21ゴールを叩き出してプレミアリーグの記念すべき初代得点王に輝いた。その後もシェリンガムはゴールを量産し、通算146ゴールを決めているが、そのうち20点がアンダートンのアシストによるものだ。

 同じ20ゴールを生み出したコンビが、リヴァプールで活躍したFWロビー・ファウラーとMFスティーヴ・マクマナマンだ。元イングランド代表FWファウラーは、歴代最高にも挙げられる自慢の左足を武器にプレミアリーグで通算163ゴールをマーク。そのうち20点がマクマナマンのお膳立てだったという。

 プレミアリーグ史上最高傑作の一人とされる元アーセナルのティエリ・アンリにも心強い相棒がいた。アンリは通算175ゴールを決めているが、そのうち16ゴールは同胞ロベール・ピレスのアシストだった。本来ならば17ゴールになるはずだったが、アーセナルの黄金コンビは2005年のマンチェスター・C戦で獲得したPKで大失態を犯すことに。すでにPKからゴールを決めていたピレスは、2本目のPKもボールをセット。そしてシュートを打つかと思いきや、直接狙わずに軽くボールを触ってアンリへのパスを試みたのだ。しかしピレスが軽く触れただけのボールはPKスポットから動かず、横パスを期待して走り込んできたアンリはシュートを打てなかったのだ。前代未聞のカオス状態となり、最終的に審判はマンチェスター・Cの間接FKという判定を下し、アーセナルは絶好機を逃すことになった…。

 このように、プレミアリーグでは数々の黄金コンビがゴールを量産してきたが、それでもスパーズの“ケイン&ソン・フンミン”が現役最高にして歴代最高のコンビと言えるだろう!?

(記事/Footmedia)

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