今季のフランクフルトの攻撃は、2人のテクニシャンによって彩られている
日本代表MF鎌田大地とドイツ代表MFマリオ・ゲッツェだ。フランクフルトは2人のテクニシャンを筆頭にスペクタクルな攻撃を展開し、ドルトムント、ライプツィヒらドイツを代表する強豪に次ぐリーグ4位となる得点数を記録している。チャンピオンズリーグでは曲者揃うグループステージを制しラウンド16に進出。昨季は11位に終わったリーグ戦においても今季は欧州カップ戦を狙える6位につけるなど、躍進を見せている。この躍進を支えるのが、今季フランクフルトに新たに誕生した鎌田とゲッツェのユニットである。
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鎌田とゲッツェ、似た特徴を持つ2人のテクニシャン
鎌田とゲッツェはともに高いテクニックと広い視野を持つチャンスメイカーだ。厳しいプレッシャー下や狭いスペースでも技術がぶれることはなく、味方の能力を最大限に引き出すことができる。また2人は技術に秀でているだけでなく、豊富な運動量と攻守の切り替えの速さを特徴としており、守備面でもチームに貢献することができる。
そんな2人のフランクフルトにおける適正ポジションは2シャドーの1角だ。ただゲッツェの加入によって、今季から鎌田は今までよりもポジションを下げ、ボランチとしてプレーする機会が多くなっている。鎌田のボランチ起用にあたって、鎌田のクリエイティビティや攻撃力を上手く活かせなくなるという懸念が生じたが、この起用は結果として大当たりだった。
鎌田とゲッツェの併用によるメリット
2人の併用による最大のメリットはやはり高い攻撃力を活かせる点だ。単純にチャンスメイカーの数がゲッツェと鎌田の2人に増えるため、相手からするとパスの出どころを抑えるのが難しくなる。その結果、鎌田やゲッツェらの優れたパサーから、フランス代表FWコロ・ムアニやデンマーク代表FWリンストロムのようなスピードのあるアタッカーへパスが供給される機会が増えている。
昨季までのフランクフルトはラインを低く構え、守備を固める相手を攻略することを苦手としていたが、ゲッツェの加入によって、この課題は解決されている。鎌田1人では崩しきれなった場面も、ゲッツェの創造性が加われば、崩し切ることができる。
ゲッツェと鎌田のコンビネーションも魅力的だ。昨季は周りを活かす役目を主に担っていた日本代表MFがゲッツェの存在によって、フィニッシュにも絡めるようになっている。ワンツーはもちろん、ゲッツェが前線でためを作り、空いたスペースに鎌田が飛び込む形など、周りを活かすタイプの2人による連係は抜群だ。
鎌田とゲッツェの併用の効果は最終局面での崩しだけでなく、ビルドアップ面にも現れている。テクニックに優れた鎌田が低い位置からボールに関わることができるため、ビルドアップも安定化できる。それだけでなく、鎌田が低い位置に降りることで、鎌田はプレッシャー状況で前を向き、余裕を持った状態でボールを扱うことができる。このことから後方から質の高いボールや鎌田の得意とするスルーパスを供給しやすくなるため、低い位置からのチャンスクリエイトが可能となった。
今まで多くのチームがテクニシャンを複数枚並べることに苦労してきたが、フランクフルトは見事に鎌田とゲッツェという2人のテクニシャンを共存させた。上手いだけでなく、ハードワークもこなせるというのが、鎌田とゲッツェという”2人の魔法使い”の強みでもある。この2人の活躍がフランクフルトの命運を左右するだろう。