識者も「セオリーから外れている」と認めた“どこからでも入る袈裟固め”にグラップリングのトップファイターが大苦戦。最後は苦し紛れに顔面をかきむしり、サミング。反則すれすれの行為連発に視聴者から「可愛い顔してえぐい」と大ブーイングが起こったが、試合後のインタビューで「彼女は強い!」と感服。自らの苦戦と対戦相手の実力を素直に認めた。
2月25日にタイ・バンコクで開催されたONE Championship「ONE Fight Night 7」でダニエル・ケリー(アメリカ) と三浦彩佳(TRIBE TOKYO MMA)が対戦し、ONE初のグラップリングマッチに挑んだ三浦が大健闘。本職の強豪ケリーを相手に判定では敗れたものの大きな爪痕を残した。
昨年、ション・ジンナンとのタイトル戦で判定負け、続くダヤン・カルドソとの再起戦では肩の負傷で不本意なTKO負けと連敗中の三浦。打撃なし10分1ラウンドで戦うグラップリング戦の下馬評は当然ながら三浦が劣勢という空気だった。
さらに世界的グラップリング選手のフィールドで減量も伴う“53.5kg契約”の条件を飲んでの対戦に、視聴者から「ケリーの引き立て役」「かませ枠」と心無いコメントも並んだが、三浦はそんな雑音の予想を裏切る活躍を見せることとなる。
序盤ケリーの引き込みに素早く対応した三浦はがぶりの体勢で押し込む。ケリーがバックを狙うが三浦が得意の袈裟固めに移行、ケリーはディフェンスするも強引に体勢を整え腕を両足で極める“あやかロック”狙い。足で腕を挟みこみMMAでも幾度となく1本を取ってきた三浦の鉄板パターンにABEMA解説の大沢ケンジも「本当にこれだけやるんだ…凄いですよね。思った以上に勝負になっている」と驚きを隠せない。
中盤ケリーが袈裟固めから脱出しバックを取るが、三浦は首を取りながら体をひねり袈裟固め。どんな体勢からでも得意の形を作る三浦に視聴者も「凄すぎない?」「スゲエよ」「意外性の女」といった反応。さらにゲスト解説でブラジリアン柔術の第一人者である竹浦正起からも「セオリーから外れているのに技がバンバン入っている」と称賛した。
残り3分、スタンドからの攻防でも三浦がケリーを潰しトップを取り、判定勝ちを狙えるなか、ケリーがトップからバックへ、そしてチョーク狙い。きっちり防御する三浦にケリーは焦りからか手段を選ばず目に指を入れる反則すれすれの行為。
顔面をかきむしるだけでなく、指が食い込む悪質な攻撃に竹村も「男でもなかなかやらない」と語り、コメント欄も「可愛い顔してえぐい」「目潰しじゃないか」「目に手を入れて卑怯すぎる」と大ブーイング。
ケリーはチョークの体勢からフィニッシュを狙うが極め切れず試合終了。判定でジャッジは後半ニアフィニッシュに持ち込んだケリーを支持したが、相手の土俵での堂々とした戦いぶりに「期待以上に頑張った」「惜しかった」「負けたけど評価を上げた」と労いのコメント多数。ABEMAの実況・西達彦アナウンサーも「三浦選手は素晴らしいものを残しました。今やれる100%を出したんじゃないですか」と称賛した。
改めて「三浦の何が凄かったのか?」を問われた竹浦は「本来背中を見せる癖は(グラップリングでは)良くないのですが、背中を向けることで首を抱えて袈裟固めの体勢が取れるのは三浦さんしか出来ない技。リスク満点の戦い方」と振り返った。
そして、思わぬ苦戦を強いられたケリーは勝利インタビューで開口一番「彼女は強かった!」と感服。自らの苦戦を素直に認めた。その余裕のない曇った表情が三浦の健闘ぶりを物語っていた。