将棋の順位戦A級・最終9回戦が3月2日に行われ、藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)が稲葉陽八段(34)に91手で勝利した。この結果、藤井竜王は順位戦A級初年度を7勝2敗の首位で終え、自身初の名人挑戦へプレーオフ以上への進出が決定した。前局までに同星だった広瀬章人八段(36)も現在9回戦を戦っており、広瀬八段が勝利すれば両名でのプレーオフ実施、敗れた場合は藤井竜王にとって初の名人初挑戦が決まる。
藤井竜王が自身初の「将棋界の一番長い日」を白星で飾った。前期にB級1組からの昇級を決め、初のA級参戦となった今期を7勝2敗の成績で駆け抜けた。藤井竜王が狙うは、谷川浩司十七世名人(60)が保持する20歳2カ月での最年少名人記録の更新。7月生まれの藤井竜王にとっては、今期が最初で最後のチャンスとなっている。
長い歴史を持つ名人戦の過酷な挑戦権争いに加えて、来期の順位、残留を巡る熾烈な戦いが繰り広げられることから「一番長い日」と呼ばれるA級最終一斉対局。藤井竜王は、第75期(2017年)名人戦挑戦経験を持つ稲葉八段と対戦した。藤井竜王の先手で始まった本局は、「角換わり腰掛け銀」の戦型に。藤井竜王の得意戦型とあり、快調に攻めてペースを握った。
対する稲葉八段は受けに回って反撃へのチャンスを伺ったが、藤井竜王が強く踏み込みリードを拡大。夕食休憩明けに終盤戦に突入すると、竜を起点に後手玉を包囲していく。寄せ合いとなると、稲葉八段に粘りも許さぬ厳しい攻めで押し切り、鮮やかに勝利を決めた。さらに藤井竜王は、先手番連勝数を「28」に更新。羽生善治九段(52)が19歳だった1989年に打ち立てた先手番最多連勝数に並んだ。
勝利した藤井竜王は、「駒損で攻めが続くかどうかという局面が長かったが、こちらの攻めの細いので際どい局面が多かった。一局を通してそういう局面が多かったのかなと思います」と一局を総括。A級参戦初年度7勝2敗の成績については、「反省点もいろいろあったが、負けた将棋も含めて6時間という持ち時間をしっかり使って考えることができたかなと思う。その点は良かったですし、充実感があったかなと思います」と話した。
敗れた稲葉八段は、「想定外の形から受け身になってしまって、途中からは良いところがなかった」と一局を振り返った。今期は4勝5敗で終戦。「スタート2連勝だったが、内容と結果が伴わなかったので立て直していかなければならないと思うような、厳しい内容だった」と厳しい表情だった。
この結果、藤井竜王は7勝2敗で名人挑戦へプレーオフ以上の進出が決定。プレーオフか挑戦かは、現在対局中の広瀬八段―菅井竜也八段(30)戦の勝負のゆくえに委ねられることになった。広瀬八段が勝利すれば両名でのプレーオフへ、敗れた場合は藤井竜王の名人初挑戦が決まる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)