将棋の藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)が3月2日、順位戦A級・最終9回戦を戦い、稲葉陽八段(34)に勝利を飾った。この結果、藤井竜王は7勝2敗でリーグを終え、名人挑戦へプレーオフ以上の進出を決めている。現在対局中の広瀬章人八段(36)が勝てばプレーオフへ、敗れた場合は藤井竜王が最年少名人への挑戦権を獲得する。藤井竜王は、自身の終局後に囲み取材に応じ、「挑戦の可能性を残した状態でリーグを終えられたことを嬉しく思っています」と語った。主な内容は以下の通り。
――最終局対局前の心境を教えてください。
大きな一番だと思っていましたが、今までと気持ちが違ったということはなかったです。
――名人挑戦に大きく近づく勝利。今の心境は。
まだ状況が決まっていないので何とも言えないところがありますが、今期A級初めてということで厳しい戦いになると思っていましたが、プレーオフ以上という成績でリーグを終えることができて良かったかなと思っています。
――藤井竜王にとって「名人」というタイトルはどのような存在ですか?
将棋界で最も歴史のあるタイトルなので、重みというものは大きなものかなと思いますし、順位戦をやっていった先に頂点に名人があるというシステム。そこに少しずつ近づけているというのは良かったなと思います。まだ名人を意識することはないですが、引き続き頑張っていけたらと思っています。
――幼少期には「名人をこす」という目標を立てていた。夢に近づいている。
小学校の低学年の頃の話なので、そろそろ時効にしてほしいと思っているのですが…(笑)。ずっと意識していたわけではないですが、大きな存在だと思っています。名人戦の舞台に立てるように頑張りたいと思います。
――挑戦は他力(の結果)となるが、どのように待機しますか?
前期のラス前(B級1組最終局の前局)も同じような状況だったのですが、その時は結局決まらなかったので、気楽にいようかなと思います(笑)。
――広瀬ー菅井戦の結果次第ではプレーオフの可能性も残っている。
まだどうなるか確定していない状況ですが、こちらとしてはプレーオフがあるというつもりでいます。
――6期目の順位戦での成績は56勝5敗。これまでの道のりはどのように感じていますか?
ここまで60局くらい指してきましたが、他棋戦の予選は東西が分かれていることが多いのに対して、順位戦はいろいろな棋士の方と長い持ち時間で対局できるということで、プロになった当初から順位戦ならではの充実感はいつも感じていました。まだ途中ではあるんですけど、一局一局やってきてA級という舞台で対局することができたのは良かったと思っています。
――順位戦で印象に残っている一局は?
すぐには出てこないです。
――A級順位戦では?
2回戦の菅井竜也八段戦です。中盤難しいのかと思っていた局面からあっという間に悪くなってしまったので、A級の厳しさを感じたというのもありますし、まだまだやっぱり力が足りないなと感じた一局でした。
――名古屋対局場で9局中6局を指した。
今期から開設していただいて、そこで指すことが多かったですが、異動の負担が少ないというのもありますし、地元で対局する機会は限られていたので、順位戦でその機会を多くいただけたのはありがたかったです。今までは東京か大阪かがほとんどだったので、自分の感覚としてもだいぶ負担が少ないのかなと感じました。
――今期黒星の2局も名古屋対局場だった。相性などは感じていますか?
偶然だと思います(笑)。ちゃんと調べたら相性の良し悪しはあると思いますが、対局するにあたって気にしても仕方ないので、自分としては気にしていないです。
――今期は6月以降、先手番で角換わり多用するようになった。集中的に指すようになった要因は?
角換わりの中でもいろいろな形はがあるが、後手が待機する形に対して先手が仕掛けていけるかというのがひとつのテーマで、その中で先手もいろいろ工夫する余地があるのかなと感じて角換わりを採用しているというところがあります。
――先手番で9割超えの高勝率をマーク。勝敗よりも興味、工夫が尽きないという理由?
従来あまりなかった指し方も有力なケースもあるということも少しずつ分かってきたというのもあって、工夫の余地の大きい戦型なのかなと思っています。
――広瀬戦は見届けますか?
局面次第ですが…(笑)。次の対局も近いので、その局面がすぐに終わりそうでなければ先に寝ると思います。
――ファンへ
本局勝つことができて、挑戦の可能性を残した状態でリーグを終えられたことを嬉しく思っています。まだどうなるかわからない状況ですが、次の対局も引き続き頑張りたいと思います。
(ABEMA/将棋チャンネルより)