G20外相会合欠席問題から考える「リモートで国会出席はダメ?」「なぜ日程調整できない?」今後も残る“先例”問題
【映像】「なぜここにいるのか」林外務大臣の答弁
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 ウクライナ問題を始め、世界の重要な課題について議論する「G20外相会合」。各国の外交トップが顔を揃える中、日本の林外務大臣が欠席したことについて、国内外から批判の声が上がっている。

【映像】「なぜここにいるのか」林外務大臣の答弁

 1日夜からインドのニューデリーで行われていた「G20外相会合」。アメリカ、ロシア、中国の外相らが出席する中、G7広島サミットで議長国を務める日本の林外務大臣は、参議院の予算審議を優先して欠席した。ちなみに、この国会での林大臣の答弁時間は1日約53秒、2日約1分54秒となっている。

 林大臣の欠席を受け、インドメディアは「日本の信じられない動きがインドを驚かせた」「両国の関係に影を落とす可能性がある」と伝えた。

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 リモートなどで国会に出席することはできないのだろうか。東京都立大学・法学部准教授で政治学者の佐藤信氏は「国会は閣僚が物理的に存在することが重要視されているのでリモートは認められていない」と話す。

「国会で大事とされているのが『基本的質疑』だ。大臣たちが整列する場で質疑する象徴的な場であることが重要視されている。閣僚が揃っていることに価値があるとされているので、リモートは難しいだろう。だが今回、国会と国益を勘案したことで『そこまで象徴的な意味はあるのか?』と問われる可能性はある」

 また、佐藤氏は林大臣の答弁時間についても触れ「時間が問題ではなく、身体がどこにあるかが重要だ」と述べる。

「外交的やり取りもオンラインで行うことはできる。しかし、開催国のインド側からすると『ほかの外務大臣は揃っているのに、日本は欠席している』という印象はあるだろう。外務大臣は国に1人しかいないので、“身体がどこにあるか”は象徴的な意味を持つ。今回は明確に国会を優先したということで、報道にもあったように『日本の対応はなんなんだ?』と思われるのではないか」

 「G20を優先すべきだったのでは」。野党だけでなく与党からも指摘の声が上がる理由に佐藤氏は「5月に控える広島でのG7サミットに向けた重要な役割があった」として、次のように解説する。

G20外相会合欠席問題から考える「リモートで国会出席はダメ?」「なぜ日程調整できない?」今後も残る“先例”問題
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「いま日本は国際社会、特に先進国を1つにまとめて、ウクライナや中国の問題に対応する姿勢を示す重要な局面にある。日本以外のG7はNATO(=北大西洋条約機構)加盟国でウクライナ侵攻に対して軍事的にも強いインパクトを持っているが、日本は地理的にも離れているし、どういう役割を担うかが問題だった。その中で日本は、“グローバルサウス”と呼ばれる南半球の途上国に対して『国際社会で一致団結して、ロシアを非難していこう』と発信する取りまとめの役割を担おうとしていた。

 そこで最も重要な役割を果たしているのが、議長国でもあった超大国インドだ。グローバルサウスの中でも影響力の強いインドだが、ロシアから兵器や資源を買い、ロシアに比較的融和的な態度を取っている。日本はインドをなんとか取り込もうとしてきたが、インドで開催されたG20外相会合を欠席した。2国間でやり取りできる機会を失ったのは大きな損失だ」

 出席することが望ましいのであれば、国会の日程調整はできなかったのだろうか。佐藤氏は「調整ミスとG20の軽視、どちらも考えられる」と指摘する。

「国会日程は議会運営委員会が決めているが、与党側から『この会議は重要だから、バッティングしないようにして』と連携することは可能だったはずだ。もうひとつの指摘として『突発的に起こる外交に関しても対応できなかったのか?』という問題があるだろう。

 基本的に国会は“先例の積み重ね”で運営される。先例に従って林大臣は国会に出席したが、先例は時代に合わせて見直すことができるし、今回の場合も変更できたのではないか。世間から非難されたことで与野党も問題を認識しただろう。外交は、自国だけで決めるわけにはいかない。柔軟に対応できるような先例を作ってもらいたい」

 岸田総理は、今月19日からインドを訪問し、首脳会談を行う方向で調整を進めているという。(『ABEMAヒルズ』より)

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