「東京と名古屋は最悪の地形」“花粉症ゼロ”公約はどこへ? 政策の現在地は
【映像】スギ伐採に数百年? 東京は四方からスギ花粉の餌食に?
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 いよいよ始まった花粉シーズン。特に今年は関東や北陸、近畿などで、花粉の飛散量が過去10年で最多と予測されている。3日、環境省は花粉の大量飛散について、改めて国民に注意を呼び掛けた。

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 遡ること18年、当時観測史上最多のスギ、ヒノキの花粉飛散量が確認された東京都では、翌年30億円を超える予算を投入。花粉症対策に本腰を入れていた。自身も花粉症だった石原慎太郎都知事(当時)は、東京多摩地区の杉を伐採。従来より花粉の量が少ない樹木に植え替える事業を開始した。

 その後、小池百合子都知事も希望の党の代表として衆院選に臨む際、党の公約の一つとして「花粉症ゼロ」を掲げたが、以降、具体的な成果は聞こえてこない。

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 どうして日本は花粉症に無策なのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、専門家と共に考えた。

 花粉症の専門家として都の対策検討委員会のメンバーも務めた、気象予報士の村山貢司氏は「2月の末から花粉の量が爆発的と言ってもいい状態になっている」と話す。

「3月2日に東京郊外では、1日の花粉数が1平方センチあたり3000個、1平方メートルに換算すると1万倍だから3000万個だ。もう私たちの周りは花粉だらけという認識で今シーズンは過ごしてほしい」

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 なぜ今年は花粉が多いのだろうか。

「およそ10年前から杉の樹齢が高くなって、花粉の生産量がピークを迎えている。夏の気象条件で少し減ったり多くなったりを繰り返して、何年かに1度、条件が揃うと大飛散になる。今年の場合、6月から7月の日照時間、気象の条件が良かった。前年の花粉が少なくて、6月の日照時間が長ければ次の年は必ず多くなる。それがぴったり重なって記録的な大飛散になった。今年の花粉が多くなるのは、早い時期から分かっていた」

 村山氏によると「北海道の内陸部、旭川よりも北、もしくは沖縄であれば、杉が植えられてないので、スギ花粉はほとんどない」という。また、発症は「個人差があって、定量的に決まっているわけではない」と説明する。

「よくバケツで説明するが、中に花粉が溜まった結果、ある人はバケツの半分で発症するし、ある人はバケツが満杯にならないと発症しない。最近は70歳になって初めて花粉症になったという人もいる。一度発症すると、ほとんどの方が毎年発症する」

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 大気汚染は関係しているのか。

「発症するかどうかに大気汚染はほとんど関係ない。関係しているのは、花粉の量と、飛んでいる期間、空気が乾燥していることだ。ただ、発症した後は、大気汚染物質でも黄砂でも鼻を刺激するので、症状が非常に悪くなってしまう」

 地方よりも、東京で花粉症になる人が多いのは理由があるのか。

「東京周辺の花粉量は日本でも多い方だ。実は10年前調べた花粉症の有病率の調査では、山梨県が一番多くて、東京の1.5倍ぐらいの患者さんがいた。山梨は東京に比べたら人口も少ないし、周りにいっぱい自然も残っている。条件がそろっているから今も非常に有病率が高い」

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 発症率を見ると、主に太平洋側の地方に偏っている。

「冬場は“からっ風”が吹いて、空気が乾燥し、湿度が低く風も強い。黄砂や埃がいっぱい体に入ってきて、花粉症の有病率も高くなる。東京湾に注目してもらいたいが、大きな都市の中で東京は最悪の地形だ。西にも北にも東にも全部杉がある。どこから風が吹いても東京に集まってくる。例えば、福岡なら、北や西から花粉は来ない。仙台なら東からは花粉が来ない。東京と名古屋が、花粉が飛んできやすい最悪な都市だ」

 身近な対策として「加湿をしたほうが良い。湿気が多くなると花粉が落ちやすくなる」と話す村山氏。目はメガネをするだけでも、花粉の量は3分の1以下になるという。

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 石原慎太郎都知事(当時)が始めた杉伐採事業は今も継続しているが、林業の衰退もあり、なかなか進んでいない。

「当時石原都知事が杉を斧で切っているとき、私は隣にいた。その後、ずっと都の花粉の少ない森づくり運動の推進委員会の会長をしている。1年間に100ヘクタールずつぐらい花粉の多い杉を切って、花粉の少ない杉や紅葉に植え替えているが、日本にある杉林の面積をご存じだろうか。450万ヘクタールだ。ヒノキが260万ヘクタールで、スギとヒノキを合わせると、日本の面積のほぼ20%にあたる。1年に1万ヘクタールやっても450年かかる。東京にはあらゆる県から花粉が来ている。周辺と共同してやらないといけない。関東地方周辺は九都県市と言って、東京都と周辺の県と政令指定都市が共同して花粉対策をやっている。とにかく花粉症の原因である花粉を減らそうとしているが、何十年かかるか分からない」

 東京都だけスギやヒノキを伐採しても意味がないと話す村山氏。「結局は自分で自分の身を花粉から守ることが一番簡単だ。ほとんど対症療法しかない」とした上で、こう述べる。

「花粉症をなくすには杉の木を全部切ってしまえばいいが、とにかく最低数百年という時間がかかる。逆に時間がかかるからこそ、それを早めに少しずつやっていく必要がある。我々が『花粉症対策にもうお金は使わない』と放棄してしまったら、ずっと孫子の代まで花粉症で苦しむ」

(「ABEMA Prime」より)

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