子供が無料、または低額で食事できる「こども食堂」に、物価高騰の影響が及んでいる。
【映像】手作りコロッケだー!「こども食堂Qchan代官店」キッチンの様子(画像あり)
毎年増え続け、現在は全国7000カ所以上に広がっているこども食堂。愛知県名古屋市にある「こども食堂Qchan代官店」の藤江由美子さんも「油がすごく高くなった。揚げ物の回数が減った」と話す。
「油をたくさん寄付でいただいて、心置きなく揚げ物が作れるようになった。この3年間で、こども食堂や子育て支援の必要性、それに対する世間の関心が上がってきた。すごくありがたい」(藤江さん)
一般的に月1回や週1回の運営が多い中、「こども食堂Qchan」は月曜から金曜まで毎日オープン。実は、代表の藤江さんは一般企業の社員。こども食堂は所属会社が社会貢献活動の一環で行っている。運営費は親会社が出しているが、物価高騰は大きな痛手だという。
千葉市の「TSUGAnoわこども食堂」を運営する田中照美さんは「コロナ禍で虐待数やDV数、離婚も増えている。その中で『こども食堂』が必要な子供たちも増えた。求められているのは、食事だけではない」と話す。
「学校とは違う“居場所”の役割がある。7年目に入るが、当時小学3、4年生だった子供たちが今、高校生になってもなおいる」(田中さん)
なかには、中学校時代からこども食堂を定期的に利用し、社会人になった今でもたびたび通っている女性もいる。樹里さん(20歳・会社員)だ。
樹里さんが、こども食堂に通うようになったきっかけは何だったのか。
「先に通っていた先輩からの紹介だ。『食事をするため』が一番にあって、勉強、学習支援で毎週土曜日に通うようになった。地域の先生がボランティアで来ていて、数学や英語を教えてもらっていた。同い年の違う学校に通っている子、3歳ぐらいの子供もいて、親子で来ている人もいた。ご飯を食べるときは10人以上いて、本当にいろいろな層の人がいた」
ネットでは、子ども食堂に通うことについて「貧乏な家庭というレッテルを貼られる」「近所にバレたら恥ずかしい」「こども食堂が増える社会にしている時点で間違っている」といった声もある。実際に樹里さんの親も、通うことを反対していた。
「両親にあまりいい顔はされなかった。両親からしたら『ご飯も食べれないような子』と、思われたくないという理由だった。うちで食べられるのに、食べられないように見えてしまうから。実際、食べられてないのは事実だった。親にも直接言えなくて、家に居づらかった。こども食堂さんが助けてくれた」
「全国こども食堂支援センター・むすびえ」理事長の湯浅誠氏はこども食堂が増えた背景についてこう話す。
「コロナ禍があって、人とのつながりが非常に希薄になった。商店街はシャッター通りで、町内会もかつての『子供会』のようなものができない。本当に『地域のつながりを取り戻したい』と思っている人が全国にたくさんいる。そのうちの何分の1かの人が『これならできる』とこども食堂を立ち上げた。これが最大の要因だと思う」
湯浅氏の著書『つながり続ける こども食堂』によると、こども食堂には所得・年齢関係なく、0歳から100歳まで訪れるという。
「実質『みんな食堂』だ。入口で年収は聞かない。高齢者でも障害者でも外国籍でもいい。人を縦にも横にも割らない。ただ、『子供のため』と言うとみんなが集まってくれる。公園のような場所だ」
誰でも来ていい場所なのに、なぜ「貧困者のもの」というイメージがついてしまったのか。
「時代的な背景もある。こども食堂が、最初にできたのが2012年だが、メディアで取り上げられるようになったのは2015〜16年ぐらいだ。政府の貧困対策が本格化した年で、子供の貧困対策のツールとしてセットでメディアに取り上げられることが多かった。それを見た人たちが『そこは、食べられない子が行くところなんだね』というイメージで受け取ってしまった。でも、2012年に最初に始めた人も『どなたでもどうぞ』という認識でやっている。昔からこども食堂は変わっていない。世の中の受け取り方が変わっただけだ。みんなで楽しく食事してほしい。来た人が肩身を狭くして『お世話になります』みたいな顔をする場所ではない」
社会課題をつなぐ事業を行うリディラバ代表の安部敏樹氏も「子供の貧困という概念がミスリードだ」と指摘する。
「結局は世帯の貧困だ。『貧困の世帯に生まれてしまった子供をサポートをしましょう』という話で、貧困問題の解決策として、こども食堂が全世代型でも全く持っておかしい話ではない」
物価高や人手について、運営面はどうなっているのか。湯浅氏は「皆さんボランティアでやられているので、いろいろな評価の仕方がある」とした上で、こう答える。
「お金に余裕がないこども食堂は多い。たただし私が思っているのは、ここに政府が税金を入れる話になると、保育園や学校などもそうだが、ルールがどんどん決まっていく。例えば、勉強を教えるのは公務員の教員免許を持った人、子供は国家試験に受かった保育士さんが見ないといけないとなると、どんどん縛りが多くなる。こども食堂は自発性と多様性が生命線だ。ボランティアには、80代のおばあちゃんもいる。民・民で回していくのが今は大事なんじゃないかなと思う」
社会人になった今も通っている樹里さんは、改めてこども食堂をどういう場所だと思っているのか。
「私にとって、もう一つの実家だ。好きで来ていたし、今は社会人になって、人間関係など子供の頃とは違う悩みが出てきた。家族じゃない人に相談したくて、やっぱりここに来てしまう。私が誰かの相談を受けることもある。通いづらいと思っている子や親御さんが、もっと気軽に行ける場所になってくれたら、すごいいいなと思う」
(「ABEMA Prime」より)
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