田端信太郎「負のスパイラルになりやすい」リーマン後最大規模? シリコンバレー銀行破綻の影響は
【映像】米銀行“リーマン後最大規模”破綻相次ぐ…影響は?
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 アメリカで相次ぐ銀行の経営破綻に、不安が広がっている。10日、多くのスタートアップに融資していたシリコンバレー銀行(SVB)が事業を停止した。総資産はおよそ2000億ドル、全米16位の銀行の破綻は大きな話題となった。さらに12日、暗号資産関連企業との取引が多いシグネチャー銀行も相次いで経営破綻した。

【映像】テック系が51%も…!破綻のきっかけになったSVBの“特徴” ※円グラフ(画像あり)

 この事態を受け、アメリカのバイデン大統領は「銀行システムは安全であり預金も安全。国民は安心してください。我々は必要なことは何でもする」とコメントを発表。米・財務省も2つの銀行の預金を全額保護する方針を明らかにした。

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 2008年のリーマンショック以来、最大規模となった銀行破綻は、誰も予測できなかったのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、現地経営者と専門家と共に考えた。

 シリコンバレー銀行が経営破綻する前日の午後2時頃、投資家から“あるメール”を受け取った経営者がいる。米・カリフォルニア在住で、シリコンバレーでスタートアップを設立した川口耕介さん(Launchable代表)だ。メールには何が書いてあったのか。

「たった1行だけ『SVBからお金を動かしておいたほうがいい』みたいな内容だった。ニュースを見ると大変なことになっていた。何かしておこうかと思ったら、もうお金を動かせる時間じゃなかった。だんだん周りの人たちの様子も伝わってきて『真面目にヤバいのかもしれない』と思った。金曜日の朝になってみると、もう銀行の株取引が止まっているし、周りの創業者が『お金も動かせない』と言っていた。その後、ニュースで銀行が破綻したことがわかった」

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 それまでシリコンバレー銀行破綻の噂などは「全然聞いたことがなかった」と話す川口さん。今のシリコンバレーの状況をこう語る。

「今週は給料の支払いの週だった。企業にとって一番お金が動くタイミングなので、資金繰りがつかないと従業員に迷惑がかかる。経理担当者は眠れない週末を過ごしたと思う。先週はあちこちの会社が阿鼻叫喚で、パニックだった。日曜日の時点で『預金は保護される』というニュースが出て、みんな一安心した。今後長期的に見て、資金調達にどのような影響が出るのか気になるところだ」

 偶然、川口さんはシリコンバレー銀行からあらかじめお金を動かしていた。

「投資してもらったお金は別の銀行に預けたままになっていた。今回はたまたま運が良かった。今後、預金を分散する意識は高まると思う」

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 国内外の金融市場や個人投資家の行動を分析・研究している大槻奈那氏(名古屋商科大学大学院教授)は「SVBはシリコンバレーのスタートアップ企業にとっては、メインバンクだ」と話す。

「預金の口座を作ったり、貸出ししてくれたりと頼りになる銀行だった。日本でも十数年前、噂が噂を呼んで、取り付け騒ぎが起きた。破綻まではいかなかったが、ちょっとした噂が広がって、みんなで預金を下ろしに行くと、銀行からお金がなくなる。そうすると業務ができなくなって、破綻に追い込まれる」

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 破綻の2週間前、大手会計事務所はシリコンバレー銀行の財務状況に“お墨付き”を出していた。「財務状況は健全」とされていたが、なぜ破綻したのか。

「シリコンバレー銀行には、非常にいい格付けがついていた。財務や資本をみると、けっこうまともだ。一番の問題は預金で、お金の“集め先”が集中していた。一口当たりの口座が大きく、一人抜けるとあっという間にお金がなくなってしまう。一口一口が大きな預金口座だった」

 大槻氏の説明に、田端大学塾長の田端信太郎氏は「そもそも銀行は恐ろしいことをやっている」と指摘する。

「信用創造というが、例えば1000万円のお金を借りるとする。でも、いきなりみんな1000万円を使わない。今すぐに使わないから、900万円くらいを一旦預ける。そうすると、銀行からすれば『900万円が戻ってきた』となって、また9割を別の所に貸す。マトリョーシカの入れ子みたいだ。取り付け騒ぎは、日本でも大正時代からあって、格付け機関や会計事務所がどれだけ監査しても『あの銀行がヤバそう』とみんなが思ったら、実際にヤバくなる。リスク分散していないと、ベンチャーキャピタルもファンドもみんな潰れる。そうすると、預金が足りなくなってスタートアップが『つなぎで出資してくれ』と言っても、出資できない。負のスパイラルに陥りやすい環境だとは思う」

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 今の日本でも取り付け騒ぎが起きる可能性はあるのか。大槻氏は「あり得なくはない」とした上で、こう話す。

「そもそも、少し何か怪しいところがあるからみんなが取り付ける。急に騒ぎが起きることはあまりない。シリコンバレー銀行も、実は2カ月くらい前からTwitterで言っている人がいた。『どこかのネジが違ってきたらドミノ倒しのように倒れていくんじゃないか』と。そして噂が広がって、みんなが行動を起こした。本当に特殊なケースで、貸し出しを引き上げようとしたわけではないのに、預金がどんどん逃げてしまった。最初、アメリカの預金保険公社が『保険がついている預金だけを保護する』と言ったが、シリコンバレー銀行は90%以上に保険がついていなかった。だから、政府が『やっぱりみんな保護する』と言った。日本の金融機関は、過去に比べて相当健全だ。預金保険もしっかりしているし、安心感はある。ただ、可能性はゼロではない。『今後絶対に取り付け騒ぎが起きない』と言えるわけではない」

(「ABEMA Prime」より)

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