「親の学歴コンプレックスのリベンジと考えないで」少子化でも中学受験者数は増加 “ゆる受験”ブームも…当事者が明かす苦労
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 今年、首都圏で卒業を迎えた小学生およそ30万人のうち、私立・国立への中学受験者数は過去最高の5万人以上だった。

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 出生数も80万人を切り、少子化も課題になっている中、中学受験者数は9年連続で増加。この背景には、何があるのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、専門家と実際に中学受験を経験した親と共に考えた。

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 20年以上にわたり中学受験の現場を取材してきた、教育アドバイザーの鳥居りんこ氏は「大きなポイントは5つある」と話す。

【中学受験のブーム、主な要因】(鳥居りんこ氏)
・良い大学に入るため、系列の中高一貫校を目指す
・大学入試制度改革などに柔軟に対応可能
・一芸に近い入試方法の採用で応募ハードルが低下
・コロナ禍のデジタル化対応などが迅速
・首都圏、関西圏で顕著→周りが行くから自分も

「まず大学の入学定員が厳格化されて、文科省の方針で有名人気私大がグッと定員を絞ってきた。大学の入試改革も2020年度ぐらいから本格化して、小学生の親たちが心配になった。大学は『全入時代が来る』と言われているが、コロコロ方針が変わると『有名私大、有名国公立に入りにくくなるんじゃないか』と保護者は不安になる。『中学受験のほうがいい』と思っていたところに、新タイプの入試が出てきた。学校側としても少子化なので青田買いしたい」

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 長男と長女が中学受験を経験している鳥居氏。今は一芸入試に近い、プレゼン入試や英語に秀でている子のための入試などが出てきたという。

「中にはレゴブロックをうまく作る入試もある。今まで中学受験は“ガチ受験”と言われていたが、バンバン勉強ばかりする受験に対して、“ゆる受験”派が出てきて需要が出てきた。“ゆる受験”は勉強をバンバンする必要はないが、対策は必要だ。習い事と両立できるような塾もある」

 今後中学受験者が増えることで、全体のレベルが上がり、より厳しい戦いになっていくのか。

「高偏差値層にとっては相変わらず、すごく厳しい戦いだ。公立中高一貫校も増えているが、激戦に変わりはない。一方で、偏差値を追わない“ゆる受験”は非常に範囲が広い」

 中学受験をした生徒を取材すると「受験して良かった」と答える人が多いという。

「環境を選んで、自分の意思で行っているからだと思う。内申があって公立に行くよりも、自分に合っている環境を選び取ったという実感がある人は多い」

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 中学受験をするきっかけはどこにあるのか。娘が受験するまでの7年間をつづったブログが話題を集めた戦記氏は「当時商社に勤めていて海外駐在する可能性があった。小学校1年生の段階で中学受験も見ておこうと、軽い気持ちでSAPIXに入れた」と話す。

 去年、中学受験をした娘は第2希望に合格。中学1年生からは、東大受験指導専門塾に通っている。「娘は小学1年のときから6年間、3つの塾を掛け持ちしていた」というが、これは、本人の希望だったのか。

「ある程度、親の私が誘導して、行かせてみたら『面白かった』と言われた。それが積み重なって塾を掛け持ちすることになった。当時は『小学校1年生からSAPIXに通わせている』と話すと、『教育虐待じゃないか』みたいに言われた。ただ、小学校5〜6年生になると『もはや当然だ』という空気感になって、だいぶ世間は変わってきたと思う。小学校1年生のときはSAPIXの最下位のクラスだったので、一緒に朝5時に起きて、公文の算数を解いた。最初は2人でかなり濃密な時間を過ごしていた。子どもはすぐ忘れちゃうので、一緒にやらないと無理だ」

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 早稲田アカデミー元講師の三浦祐輝氏は「僕自身は中学受験をしてこなかった」とした上で、こう話す。

「本当に子どもがこんなことできるのかなと思いながら算数を教えていたが、気づいたら僕も頭が良くなっていた。中学受験の算数で、大人でも頭が良くなると知って衝撃だった。僕は家庭環境があまり裕福じゃなかったので中学受験はできなかった。大人になって改めて『この勉強だったらビジネスの世界で活躍できる脳みそが身につくんじゃないか』と僕自身の実体験から、子どもが生まれたら中学受験をさせてあげたいと思っていた」

 三浦氏の息子は来年2月に中学受験を予定しているという。

「うちは小学校1年生ぐらいから塾に通わせている。そこまで負荷をかけてないようにして、受験をするときに、本気を出してくれればいいかなと環境作りだけした。今は妻がメインで家庭学習の管理をしながら、分からない問題を僕が隣で教えている。4年生くらいのときは、少し教えようとすると嫌がってケンカになったので、僕は一旦手を引いた」

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 中学受験は親と子の距離感もポイントだという。三浦氏は「やっぱり嫌がることは無理やりしないのがすごく大事だ」とした上で「例えば仮に僕が優れた教え方をしても、本人の聞き方が悪かったら何も伝わらないどころかマイナスにしか作用しない。今は引くべきところは引いて、子どもが本気になったら、こっちも本気でやるような関わり方をしている」という。

「やはり成績が伸びないと家庭が暗くなって、夫婦仲も悪くなる。子どもは暗い顔をし、挙句の果てにすごく頑張って1カ月勉強してテストを受けたのに、成績が悪いと罵られる。これがほとんどの中学受験の家庭で起きている」

 田端大学塾長の田端信太郎氏も「去年長男が中学受験を終えたばかりだ。次は娘が春から小学5年生になる」という。

「自分は地方公立でここまできて、大学で東京に来た。個人的に中学受験に意味があるかよく分からない。ただ、意味がないと決めつけるわけでもない。長男は、中学受験して寮がある私立中学に入った。僕のスタンスは一貫して『勉強は誰のためか。親のためじゃなくて、自分のためだろう』だった。『勉強しなかったら誰が困るのかよく考えろよ』と言っていた。塾も行っていて、宿題でごちゃごちゃ妻と揉めていると、自分は『お前が嫌ならやめろよ、別に公立行けばいいじゃん』と常に言っていた。逃げ道と言えるか分からないが、父親と母親が一致して完璧に追い詰めるのは良くない。でも『もっとケツを叩けば良かったかな』という気持ちもあって、すごくモヤモヤする。正直、何が正解か分からない」

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 中学受験で第1志望に受かる子どもは4人に1人しかいないと言われている。学校選びについて、戦記氏は「SAPIXの上のクラスで優秀な子たちでも、いわゆる“御三家”に入ると半分が必ず下位50%だ」と話す。

「背伸びして、たまたま入ってしまった学校で、本当に幸せなのか、なかなか難しい。6年間、勉強で勝ったことしかない子が、頑張っても上位50%に行けない現実に直面してしまう。ここで、親の期待値が暴走すると、良くないと思う。やっぱり親と子は別人格だ。親の学歴コンプレックスのリベンジのように考えてはいけない。ちゃんと子どもの意見を尊重して、話を聞いてあげるのが大切だと思う」

(「ABEMA Prime」より)
 

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