3月下旬に行われるキリンチャレンジカップ2023から、森保一監督率いる新生・日本代表が始動する。そのなかで不動のディフェンスリーダーとして期待されていたアーセナル・冨安健洋が、直近に出場したヨーロッパリーグのスポルティング戦での負傷により、今回の代表入りは見送りになる可能性が高まっている。
【映像】冨安健洋出場 アーセナルがイングランドフットボール史上初の快挙
サッカー専門サイト『transfermarkt』によれば、プレミアリーグの首位アーセナルで活躍する冨安の市場価値は、2500万ユーロ(約35億円)と日本の守備陣の中では最も高い。数字においても実力の高さが証明されている冨安は、当然森保ジャパンにも欠かせない“守備の要”だ。アーセナルで、日本代表でどれほど重要な役割を担っているのだろうか。
怪我の影響で出場機会減少も指揮官からは変わらぬ信頼
昨シーズンからイングランドの強豪クラブに加入した冨安は安定感のあるプレーと堅い守りで指揮官やサポーターの心を鷲掴みにした。しかし今季は序盤の怪我の影響もあって出場機会は減少し、決してレギュラーの座をつかんでいるとは言えない。それでも指揮官からの信頼は揺らいでおらず、モハメド・サラーやジャック・グリーリッシュらリーグ屈指のウイングとマッチアップさせるなど、重要な試合での起用も多い。
また冨安は依然として空中戦では無類の強さを誇ることや、ディフェンスならばすべて高水準で守ることのできるユーティリティな選手であるため、指揮官の助けとなっている。実際アーセナルの指揮官アルテタは、リーグ優勝のかかった試合でボールをクリアしなければならない状況において、それを行う選手を一人選ばないといけないとするなら「我々全員が冨安を選択する」とその信頼を口にしている。クラブでその守備力が重宝されている冨安が、代表でどのような活躍をするのか注目したいところだ。
日本代表では板倉滉とのコンビでCB起用が基本路線か
アーセナルでは右サイドバックとしてプレーする冨安だが、日本代表では3バックであれば右のストッパー、4バックであればセンターバックを主戦場としている。3月の代表戦に向けてはガンバ大阪で存在感を発揮する半田陸など、右サイドバックでプレー可能な選手が3人も選ばれているため、引き続きセンターバックでの起用が濃厚だ。
さらにチーム事情だけでなくプレー面においてもセンターバックで起用することを推奨したい。というのも冨安は空中戦に強く、サイドからのクロスにも対応可能であるからだ。加えて両足を精度高く使うことができることから、ビルドアップやフィードでの貢献にも注目だ。また守備の要としてセンターバックでコンビを組むと予想される板倉滉(メンヘングラートバッハ/ドイツ)と共にフィールドプレイヤーにおける最後の砦となることにも期待したいものである。
若きサムライブルーの成長を促す起爆剤に
一方で対人戦においても驚異的な強さを誇るため、右サイドバックなど相手のウイングと1対1になることの多いポジションでの起用も試してみたいところだ。あるいはボランチで使うことを試してみるのも面白いかもしれない。代表では絶対的な選手であるが、多くのポジションを高いクオリティで守ることのできる冨安だけに、様々な位置でプレーし周りの選手に刺激を与える起爆剤となってほしい。そうすることで代表におけるレギュラー争いもより激しくなり、サムライブルー全体のレベルも上がっていくことだろう。
冨安はまだ24歳ながらすでに日本代表の主力メンバーだ。W杯を終え、代表選手の入れ替わりが激しくなっていくことが予想される新生・森保ジャパンでも、変わらず不動の立ち位置を築き上げるだろう。怪我からの早期復帰を期待したい。
文・小柳津 諒 (ABEMA/プレミアリーグ)(c)aflo