「もう勝てるだろ」とスキが生まれた次の瞬間、ボディに突き刺さった強烈な一撃。しばしの沈黙を経て悶絶。さらにイヤ倒れというよもやの大逆転KO負け。直前に気の緩みを指摘していた実況席からは「余裕をこいた罰だ！」と厳しい言葉が飛び出した。
3月17日にタイ・バンコクで開催されたONE Championship「ONE Friday Fights 9」。ライト級 ムエタイ 世界タイトルマッチのレギン・アーセル（スリナム）とシンサムット・クリンミー（タイ）のダイレクトリマッチは4ラウンド中盤、アーセルのボディストレートにクリンミーが時間差で悶絶。そのまま立てずにKO負けを喫した。序盤から終始優勢で進めた試合が一発のパンチで覆る大逆転劇となった。
ラグビーからキックボクシングへ転身した異色の経歴を持ち、ONEに参戦するなりライト級のキックとムエタイで2冠王者となったアーセルと、カウンターの一発で劣勢を打開するタイでは珍しいロン毛のムエタイ戦士・シンサムット。前回は王座決定戦で対戦し、判定でアーセルが制したものの一部では“クリンミーが優勢だった”との声も多く、ダイレクトリマッチが用意された。
試合は終始、クリンミー優勢。1ラウンドのローキック合戦からの打ち合いでの左右フック、膝蹴り、ボディと確実に相手を削ると、2ラウンドにはヒジやミドルキック、さらに長いリーチを活かしたボディをことごとくヒットさせた。3ラウンド、序盤アーセルが飛び蹴りなどアグレッシブな攻撃を見せたが、これはクリンミーがしっかりガード。ロー、ミドルを返して相手を寄せつけない。
クリンミーが主導権を握り、誰もがポイントでも大きくリードしていることを確信していた中で迎えた4ラウンド、クリンミーが下がって防御を固め、流し始めたその時だった。アーセルが前蹴りで触り、クリンミーのボディに左を叩き込むとうつむき加減でしばし沈黙。その後、のたうち回りながらしゃがみ込み、大の字になって戦闘不能となった。
ABEMA解説・大沢ケンジもクリンミーの油断から生まれた痛恨のミスに「余裕をこいた罰。集中力を失ったら駄目なんですよ」とバッサリ。見た目以上に効いたアーセルのパンチに視聴者も「いいボディだったけど、それで倒れるほど？」「完全にイヤ倒れ」「一発でひっくり返した」と唐突すぎる逆転KOに続々と反応した。
さらに大沢は「（普通は）あのボディでは倒れませんよ。流し気味でお腹に力が入っていなかった。一発しかない、事故っちゃいけない状況で、顔だけ殴ってくると思ってたんでしょうね」とも続け、終始優勢の展開で気が緩んで結果、腹パンに対応できなかったことが敗因と振り返った。
