男性の半分は結婚相手に選ばれない? 少子化対策、起死回生の糸口は…長年に渡る“タブー視”に専門家も疲弊
【映像】少子化待ったなし!最大原因は未婚化? 起死回生の対策は…
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 出生数が過去最小となる80万人を切り、少子化が進む日本。そんな中、話題になっているのが、自民党・少子化対策調査会の提言案だ。

【映像】世の中で半分の男性が結婚できないワケ(画像あり)

 案の柱は子育て世帯の税金負担の軽減や児童手当の拡充などだ。給付額を第一子につき1万5000円、第二子に3万円、第三子以降は6万円にするという。Twitterでは「ありがたい」と期待の声もあがったが、同時に調査会会長で元少子化対策担当大臣・衛藤晟一氏のこんな発言が反発を呼んでしまった。

「地方に帰って結婚したら、奨学金を減免する。子どもを産んだらさらに減免する」(衛藤晟一参議院議員YouTubeから)

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 奨学金の返済免除制度について、結婚や出産を条件とするような発言をした衛藤氏に、Twitterでは「結婚・出産と奨学金を結びつけるなよ」「地元に帰って出産したらって、私ら鮭かよ」など、批判が噴出した。

 岸田総理は育児休業給付金の改革なども表明しているが、はたしてどれほどの効果が見込めるのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、専門家と共に考えた。

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 日本の少子化対策がうまくいっていない最大の原因をどう考えるか。「パラサイトシングル・格差社会・婚活」の名付け親の山田昌弘氏(中央大学教授)は「なぜ30年前から対策をしていないのか?」と疑問を投げかける。

「結婚して正社員で子どもを産み育てている共働き世帯にとっては、いい提言かもしれない。しかし、今の若い人は多様化している。4分の3が結婚して子どもを2人ぐらい産んでいるのに対して、4分の1の若者が結婚せずにいる。その状況が30年続いている。出生数の急減は予測がついたはずで、研究者から見れば『なぜ当たり前のことに驚いているのか?』と言いたい」

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 少子化の最大原因に“未婚化”を挙げている山田氏。その理由として「経済的不安が非常に大きい」と話す。

「ほとんどの未婚者は親と同居している。だから収入が少なくてもいい生活できている。それが結婚して新しい生活を始めると、非常に生活が苦しくなる。これは、日本だけではなく、中国や韓国も同じだ。特にバブル以降の30年間、若い人の経済力は落ちて、さらに格差が広がっている。40年前までは、ほとんどの男性は正社員だった。そのときは給与が少なくても、将来は安定した生活ができる見込みで結婚できた。最近は、非正規雇用や中小企業に勤めて、なかなか給料が上がらない若者も増えた。今は結婚して子どもを育てるときに『ちゃんと生活ができるだろうか』という不安が強くなっている」

 収入が不安定な男性は、結婚相手として選ばれにくい。山田氏は「男性に平均収入を求めるのは普通の望みだが、平均というのはそれ以下の人たちが半分いる。決して高望みでなくても、半分しか結婚できなくなっている」と主張する。

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 また、生涯未婚率は一見男性が多いように見えるが、女性の場合、離婚後の再婚率は男性に比べて低い。一方、50歳で独身・配偶者のいない人の数は男女差がない。結果、ゆくゆくは孤独な高齢者を生んでしまうことにつながる。

 山田氏は結婚をできない・しないことについて「格差を認めるべき」だと指摘。ある種、この話題がタブー視されてきたことから、対策が及ばない状態になっていたと話す。

「私がいわゆるパラサイトシングル・親同居未婚者を提唱したのは25年以上前だ。そのときに、このまま親と同居したまま独身で結婚しないでいると『だんだん年を取って親が亡くなった後に大変だぞ』と25年前に指摘した。結局、政府は20年後、30年後の問題をあまり考えていない。その結果、中年未婚者は300万人とも言われるようになった。全体の中の4分の1に過ぎない正社員同士の共働き世帯にしか政策が刺さっていない」

 約30年前から少子化対策の重要性を訴え続けている山田氏。長年に渡って解決の糸口が見えない現状に「さすがに疲れた」と苦笑する。

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 奨学金に関しては、結婚後に減免、地方に帰って子どもを産んだ場合も減免するアイディアが元少子化担当大臣から出た。これに薬剤師でタレントの福井セリナは「弱みを握られている気分になる」と吐露する。

「奨学金を借りていた身だが、こんなことを言われると、正直ムカつく。私は地方に絶対帰りたくないと思っている。『やりたいことは諦めて地元に帰ってください』と言われているように感じた。これでハッピーに子どもが産めると思っているのか。将来の不安がなくなって少子化対策につながると思っているのか」

 「BlackDiamond」リーダーのあおちゃんぺは「出産時のお金よりも、その後の学費やランニングコストを補助してほしい。必要なものを全部学校から支給してくれたら、もうちょっと安心できると思う」と訴える。

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 山田氏も生まれた時や幼児教育、小学校、中学校ぐらいまでは「それほどお金はかからない」と話す。本当にお金がかかるのは高等教育であり、出費不安でなかなか子どもを産めない要因になっているという。

「ヨーロッパは原則、高等教育・職業教育の費用がタダだ。3人産んでも4人産んでも本人が大学に行きたければ『行けばいい』と気軽に言える。日本や韓国、中国はとにかく教育費は親が出すのは当然で、かつ受験競争は厳しい。子どもを希望通り産めない最大の理由は、教育にお金がかかりすぎるからだ。今回、これがほとんど政策に出ていない。やはり踏み込みたくない政府の意図を感じる」

 その上で、山田氏は「このままだと確実に日本は貧しくなる」と指摘する。

「29%の高齢化率が今後30%、40%となっていくと、今よりも税金や社会保険料はどんどん上がっていく。上がらないと高齢者は生活できない。日本人は海外で働いた方が、はるかにお金が稼げる時代にもなりつつある。私ぐらいの世代の人は『日本はナンバーワンの国だから移民も来てくれるはずだ』と思っているが、それは無理だ。私は海外に行くたびに日本はどんどん貧しくなっていると感じる」

(「ABEMA Prime」より)

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