今夜、キリンチャレンジカップ2023で “森保ジャパン・第二章”が幕をあける。
第2期・森保ジャパンを象徴する人選
2026年のFIFAワールドカップ・北中米大会を目指す“第2期・森保ジャパン”。16強に進出したカタールワールドカップのメンバーから現時点での入れ替えは9人だった。キャプテンを務めた吉田麻也をはじめ、権田修一、川島永嗣、酒井宏樹、長友佑都、山根視来、谷口彰悟、相馬勇紀、南野拓実といった選手たちだ。
特に吉田、酒井、長友の選外について質問が出た際に、森保一監督は「長く日本代表を支え、日本のために戦ってくれた彼らの大きさは、監督として大きな存在と感じていました。彼らにチーム作りでも支えてもらっていた」と前置きしながら「競争力という意味では、経験の浅い選手、若い選手にもチャンスを与えながら成長してもらえば」と語っており、今回の選考をもって、彼らが構想から外れたわけではないことを示唆している。
もちろん、北中米大会まで予選を合わせて3年半という期間があるため、そうしたベテランの力や経験が必要になってくるタイミングはあるはずだが、カタールで森保監督が感じた日本の課題と「ワールドカップで勝つ基準、世界トップ基準でやっていく」(森保監督)ために進むべき道を考えれば、初招集を含めてフレッシュな戦力の台頭が必要で、今回はそのスタートを象徴するメンバー構成になったと言える。
初招集は半田陸(ガンバ大阪)、角田涼太朗(横浜F・マリノス)、バングーナガンデ佳史扶(FC東京)、中村敬斗(LASKリンツ)の4人だ。角田は残念ながら怪我のため辞退となり、藤井陽也(名古屋グランパス)が追加で初招集となった。4人のうち3人がDFの選手であり、吉田、酒井、長友が外れたポジションにそのまま当てはまる。
中村に関しては、オーストリアでリーグ戦11得点4アシストを記録している。「左のウインガーとしてチームでも、ヨーロッパの舞台でも存在感を見せている」と森保監督。個人で違いを作れ、決定的な仕事もできるアタッカーを加えたいという意図が伝わる。
そうは言っても“第2期・森保ジャパン”の主軸を担うと考えられるのはプレミアリーグで大きく注目を集める三笘薫(ブライトン)をはじめ、鎌田大地(フランクフルト)、久保建英(レアル・ソシエダ)、堂安律(フライブルク)といったカタールワールドカップ組をステップに、さらなる成長が期待される選手たちだ。
ミスよりトライを評価していく段階
「強度の高い、いい守備からいい攻撃」をベースアップさせながら、高い位置でボールを奪ったところからのカウンターだけでなく、「ボールを握ったところからでも相手が嫌がる攻撃をしたい」と、森保監督は方向性を語っている。そのなかで、具体的なテーマに挙げていたのが“速攻から遅攻に移る時のプレス回避”だ。
つまりは守備がうまくハマってボールを奪い、そのままカウンターがハマった時はドイツやスペインといった強豪が相手でも十分に通用した。しかし、相手の守備を崩しきれなかったコスタリカ戦、さらにプレーの強度ではほぼ差がない中で、相手のゲームコントロールを上回れず、PK戦の末に涙を飲んだクロアチア戦は今後に向けた教訓になる。
無論、世界を驚かせたドイツ戦やスペイン戦も圧倒的にボールを握られて耐える時間が長く、そうした時間帯に追加点を許していたら後半の挽回も難しくなっていた。すでにある強みを捨てる必要はないが、もっと自分たちがボールを握る時間を増やし、そこから攻め切るためには、個の力を上げるだけでなく、チームとしての戦術的な落とし込みも必要になる。
日本サッカー協会は2050年のワールドカップ優勝を掲げているが、森保監督はこの代表から世界一を目指して、ベストを尽くすことを宣言している。
そうした基準でチーム作りを進めていくスタートとして、ウルグアイとコロンビアという強豪に、現時点でどれだけ出していけるか。細かいミスを気にするより、トライを評価していくべき段階だが、そのなかでもカタールワールドカップから引き続き招集されている選手は、改めて価値を問う必要があり、逆に初招集の選手やカタールで選ばれなかった選手は、チームのタスクをこなしながらもなによりスペシャリティを発揮する必要がある。
森保監督は「毎回チーム編成する時に、今回も26人を選ぶところで、何倍もの候補選手がいる」と強調している。来年1月に予定されるアジアカップまでしばらくはメンバーを固定せずに、入れ替えると予想されるだけに、早くもサバイバルは始まっている――。
文・河治良幸 (c)ABEMA (c)aflo