学校や職場で楽しみにしている人も多いお昼の時間。今、「お弁当」をめぐるある問題がSNSなどで議論になっている。
アメリカのメディアが伝えたのは、現地の幼稚園で「子どもに持たせたキムチ入りのお弁当が臭い」と保護者にクレームが入ったというもの。幼稚園の教諭は保護者に電話をかけ、「不愉快。臭くて他の園児の迷惑になる」と言ったという。キムチは園児の好物であり、保護者がこの顛末をSNSに投稿したところ、「人種差別だ」と憤る声が次々にあがった。
その意見の根底にあるのが「食文化を尊重すべき」との声。これまでも時に、香辛料の強いインド料理や中華料理のにおいが不愉快だと敬遠されたり、職場や学校、公共の場でにおいが強いものを食べたり持ち運んだりすることで周囲に不快な思いをさせてしまう、いわゆる“スメハラ”の問題が存在することも事実だ。
アメリカに滞在して24年、シリコンバレーで幼稚園を経営する中内玲子氏は「このニュースを人種差別として取り上げるのは大げさだと思う」と疑問を呈する。
「カリフォルニアはいろんな人種がいる所。それにみんな慣れているので、“この国だからこういう発言をしよう”というのはあまりないと思う。ただ、幼稚園ぐらいの子どもたちは素直に『臭い』と言ってしまう。他の子が不快に感じるようだとうちの園でも同じことを言うと思うが、言葉がきついために差別と捉えられてしまうかもしれない。お弁当を開いた時に毎回『なんか臭い…』と言われるよりは、不適切だと保護者に連絡することはあるかもしれない」
一方、ラジオDJのコーリア留奈は「文化を教える絶好のチャンスだと思う」との考えを述べる。
「この先生が『こういうことが起きた』と他の先生に共有して親への伝え方を考えていれば、保護者の方はSNSに書かなかったかもしれない。文化とにおいはすごく難しい問題だが、それをすぐ人種差別の話につなげてほしくない。私たちも納豆をわざわざ密室で食べたり、持ってきたりしないけど、それは日本人の価値観なのか、その配慮がアメリカではなかなか難しいと思った」
ライター・編集者の速水健朗氏は「食べ物は一番差別の入り口になりやすい。例えば、“アメリカ人はジャンクフードばっかり食べている”というかつての言い方がある。“アメリカ人のお弁当はりんごとパンで文化がない”みたいなのも差別だ。直結する問題として捉える視点は必要なことだと思う」との見解。
これにコーリア留奈は「私の父親が日本に来た時、おにぎりの海苔が『あの磯っぽい香りが、吐き気がするぐらい無理』だと。私たちからしたら海苔って苦手になるの?という感じだが、他の国の慣れていない食を不快に思う人もいるのかと思ったら、気をつけないといけないことがたくさんあると思う」と返した。
そうした中、中内氏は「マナーとして考えると、“他人が不快にならない”ということだけだと思う」と話す。
「例えば、トイレで次の人が不快にならないようにするとか、ご飯にしても周りにいる人を不快にさせないというのが、共通のマナーではないか。私はアメリカの幼稚園でも働いたことがあるが、お弁当から文化やいろいろなことが本当にわかる。こだわっているものもあれば、昨日の残り物のピザの人、インスタントヌードルなどいろいろある。それぞれ違っていていいが、周りが不快になるような癖のあるものは配慮するのは大事だと思う」
中内氏の園では、においに関するカリキュラムを入れているという。その上で、「好き嫌いはそれぞれの感覚で、自由でいいと思う。もしひとこと言うとしたら、保育者として、教育者として、違う文化などについて常日頃、『こういうものもあるよ』と子どもたちに伝えること。好きにならなくても、違いを知るというのはとても大事なのではないか」とした。(『ABEMA Prime』より)
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