森保ジャパンの第二章がウルグアイとの一戦で始まった。
【映像】三笘が先発、「国内組」西村がファーストタッチ弾 第2次森保J、初陣はドロー
日本代表は南米の強豪国相手に1-1のドローという結果に終わった。その中で左サイドにおける攻守の役割を担った三笘薫や伊藤洋輝はどのようなプレーを見せたのだろうか。昨年行われたFIFAワールドカップカタール2022まで三笘は後半から日本代表の切り札として使われることが多く、伊藤もベテランの長友佑都の控えに回っていた。
そのため2人が連係を深める時間はあまりなく、ワールドカップの直前期には批判の的とされていたことを記憶しているサポーターもいるのではないだろうか。そんななかで迎えた新生・森保ジャパンの初陣では先発出場を果たしたこのコンビが、左サイドで感じられた成長と課題を見ていきたい。
左サイドで見られた光景
昨年のワールドカップで伊藤は批判を浴びていた。というのもワールドカップ最終予選でカタールへの切符をつかむゴールを決めていた三笘に注目が集まっていたことや、伊藤がその日本屈指のドリブラーへとボールを配給せず、バックパスを多く選択するシーンが散見されたからである。
しかし今回の一戦では前半の10分に三笘が下がって相手守備陣を引きつけたことでできたスペースに伊藤が外から走りこむ場面が見られた。また左サイドバックの伊藤がポジションを中央にとることで相手の中盤の選手を釣り出し、左ウイングへのパスコースをあけるという動きもあった。ただシュトゥットガルトDFが積極的に高い位置をとるということはあまり見られなかったことも一つのポイントである。
この試合で見られた最も大きな向上したポイント
この試合で見られた最も大きな向上したポイントは、2人の位置の流動性が増したことだ。上でも述べたように10分には、伊藤が大きくオーバーラップをしてボールを前に持ち運ぶシーンが見られている。解説を務めた松木安太郎氏も「良いコンビネーション」とコメント。どちらもサイドを使えるような形を作ることに成功した三笘と伊藤のコンビを称賛した。
ただ前述のように今回の一戦では、左サイドバックが高い位置を取ることはそれ程なかったようだ。この理由として伊藤洋輝が所属クラブでは主にセンターバックで起用されており、サイドでのプレーに慣れ切っていないことが考えられる。普段は後ろで構えることの多い伊藤にとって、上下に移動することの多い左サイドバックでのプレーは難しいだろう。
またクラブで大活躍を果たしている三笘に対する相手のマークが厳しく、日本の誇るドリブラーも容易には突破できていなかったようだ。加えて三笘は攻撃において持つ選択肢が多いゆえに、それをサポートする側も正しい選択肢を選ぶのが難しい。そのためクラブとは異なりプレーを共にする時間がとりづらい代表戦では、力を発揮しきれないのだ。ただ三笘も伊藤もヨーロッパで活躍をする一流の選手である。より密なコミュニケーションを取り、左サイドでの連係を深めていってもらいたい。
連係で重要になってくるのが「偽サイドバック」
その連係で重要になってくるのが、サイドバックが中に絞る「偽サイドバック」という戦術だ。これによって相手の選手が伊藤に引き寄せられることで、ウイングへのパスコースが空きやすくなり三笘へのパスが多くなるだろう。ただこの戦術はサイドバックにより多くの役割を求めるため非常に難しい。また自陣のサイドに広大なスペースができ守備時には狙われやすくなることから、ボランチやセンターバックの守備負担が増えるというリスクもある。
しかしまだ20代半ばながらすでにヨーロッパで多くの強豪を相手にし、豊富な経験をしている三笘と伊藤ならば十分にこなすことのできる立ち回りだ。この2人の連係が深まれば左サイドは攻撃においては相手にとって脅威に、守備においては攻めづらいゾーンとなることは間違いない。これからの攻守両方におけるコンビネーションに期待だ。
(ABEMA/キリンチャレンジカップ2023)
(C)浦正弘