誰もがいつでも気軽に動画を発信できる時代。何気ない日常が大きな共感を得ることもあれば、批判を浴びることもある。そんな中、バズり動画の一ジャンルとして昨今人気を集めているのが“世直し系”動画だ。
【映像】悪質駐車犯「だめなんすか?」ブチギレる世直しYouTuber(実際の動画)
“世直し系”動画とは、路上喫煙、ポイ捨て、あおり運転など、法律やマナー違反を見つけては、注意して回る動画のことで、時には顔やナンバーなどを隠さずに晒す過激なコンテンツもある。
何のためにわざわざ動画を投稿するのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、5年前から世直し動画を投稿しているYouTuberのSOさん(42歳)を取材した。
正直、ちょっと怖そうな見た目のSOさん。実際に、道の駅の障害者専用スペースに駐車していた運転手とのやりとりを見てみる。
【SOさんのYouTubeより(一部始終)】
SOさん「なんでここ1時間も停めてんの?」
運転手「だめなんすか?」
SOさん「障害者とか誰かいるの? 体調が悪いの?」
運転手「今授乳中なんで」
SOさん「ん!?」
運転手「授乳中なので」
SOさん「1時間もいるでしょ?(実際には2時間)」
運転手「まあもっといる」
SOさん「もっといるでしょ?」
運転手「うん」
SOさん「1時間も授乳するの?(笑)」
運転手「いや、しないですけど」
介護士時代に、車いすユーザーの生きづらさを痛感していたSOさん。SOさんの指摘を受けて、運転手は通常のスペースに移動したという。
「介護の中で車いすの人、障害がある人の不満を聞いていた。『毎回行くスーパーの障害者用駐車スペースが埋まっている』と困っていた。一般常識的にちょっとおかしいなと思うことに声かけて『それってどうなの?』と声をかけている。YouTubeから警告も来ているから、アカウントもぎりぎりだ。でも、伝えたいことは伝えたい」
注意は正しい行動かもしれないが、YouTubeに投稿して晒す行為には賛否両論ある。街で聞いてみると「よく言ってくれたみたいな感じに思ってしまう」(社会人・25歳)といった賛成派の声のほか「見ている側としても、ちょっと不快感を感じる」(社会人・28歳)、「その場でパッと言うだけで良いと思った」(大学生・19歳)などの意見が寄せられた。
動画投稿のきっかけは“あおり運転”でバイクに乗っていた大学生が亡くなった事件を見てからだという。SOさんも、実際にあおり運転の被害に遭ったときは「動画を晒して、警察も呼んだ」と話す。
注意することで相手から逆ギレされたり、怖い思いをした経験はないのか。
「ある。法律に触れないように相手の顔を隠したり、絶対手を出したり脅さないようにしている。『表に出ろ』と言うのも強要になるし、窓ガラスを叩いても暴行になる。それはきっちり守っている。『盗撮だぞ』と言われたときは『証拠として撮っている』と言う」
世直し動画によって世の中が良くなると思っているのか。SOさんは「できる範囲で法律に触れない方法で、平和のために何かしたい」と話す。
「あおり運転の被害に遭って、メディアに動画を取り上げていただいた。それからどんどんドラレコの映像が出てきて、危険運転致死傷罪で処罰されるようになって、世の中が変わった印象があった。そうやって法改正されないと、平和にならない」
一方で、3年前からYouTubeチャンネル「オードブル(@odoburu)」でヤンキー撃退動画などを投稿しているTAKUMAさんは「もともと世直し系動画を投稿しているわけではない」という。
「本業は格闘技のジムを経営していて、仲間と一緒にグループYouTubeみたいな感じで始めた。たまたまホラー映画を撮っていたとき、白塗りのおばけ姿のままコンビニに行った。駐車場に座り込んでラーメン食べてるヤンキーが何人かいて『近づいていったら面白いんじゃないか?』と思って近づいたら、その動画がすごいバズった」
その後もコンビニの駐車場でたむろしている若者や、公園にバイクで乗り入れている人たちを撃退する動画を投稿。近隣住民の代わりに注意を呼びかけている。
「普通に注意しても帰ってくれないと思う。彼らに『何してるの?』と言っても『やることないからここにいる』という意見が多い。だったら『面白い』と心を開かせて『今日は解散で』みたいな感じの方がいい。正体はバラすようにしている」
笑いの要素を意識しているのか。TAKUMAさんは「僕ら自身、楽しまないと動画制作はできないと思っている。あとはインパクトがないと見てもらえない。僕が離れて見ていると、彼らは『なんだあれ』となる。エンタメ要素を加えた方が、多くの人に見てもらえるし、結果、世直しに繋がると思う。揉めることは好きじゃない。討論も苦手だ」と話す。
世直し系動画で実際トラブルになった例もある。わざと財布を路上に落として拾った人がどう対応するか撮影、警察に「持って行かれた」と被害を申告したが、撮影した人は偽計業務妨害容疑で逮捕された。
ほかにも、麻薬の密売人に売買を持ちかけて警察に情報をタレコミしたが、その行為の教唆、そそのかしに当たるとしてYouTuberが書類送検された事例もある。行き過ぎてしまったら自分が犯罪者になるかもしれない可能性について、どう考えているのか。
TAKUMAさんは「プライバシーは絶対に守るようにしている」と話す。
「動画は出す際に、声も変えて相手にもモザイクをかけている。逃げた後でも戻ってくる場合がほとんどだが、行ってしまった後でも追いかけて『動画を出していいか?』と必ず許可を取っている。『溜まるなとは言わないけど、溜まり方を考えてくださいね』と説得すると心を開いてくれて『分かりました』と言ってくれる。人が嫌な気持ちになったり、住所を特定されたりする晒しは本当に暴力だ。それは僕も求めてない」
(「ABEMA Prime」より)
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