今季のプレミアリーグではシーズン中に13回も監督交代が行われた。これは1992年にプレミアリーグが発足されて以降で歴代最多となっている。
監督を交代したことで調子が上向きになったチームもあれば、ほとんど効果が見られないチームもある。それでは、サッカー情報サイト『Football365』が一部の暫定監督を含め、今季の「監督交代」をランク付けしているので見てみよう。果たして、最も人事を評価されているクラブはどこなのか?
[写真]=Getty Images
■14位:トーマス・トゥヘル ⇒ グレアム・ポッター(チェルシー)
今季の監督交代で最下位にランク付けされたのがチェルシーの“1度目”の交代だ。2021年に就任からわずか半年でチームを欧州制覇に導いたトーマス・トゥヘル監督(現在はバイエルンを指揮)だが、今シーズンは開幕からわずか1カ月で解任された。2022年6月にチェルシーを買収したオーナーのトッド・ベーリーによる最初の監督交代だ。
記事は「当時はチャンピオンズリーグ優勝監督の解任も“今ほど”は馬鹿げているように思わなかった」と、トゥヘル体制が停滞していたことを指摘。それでいて、ブライトンから引き抜いた後任のグレアム・ポッターについては「自分に合わないビッグ6の職のためにブライトンで築き上げた全てを捨てた」と批判。そして「聞くか聞かないかは自由だが」と前置きをした上で「次に就任先を選ぶときは、ゴールを奪えるストライカーがいるクラブにしてね」とアドバイスを送った!
■13位:ラルフ・ハーゼンヒュットル ⇒ ネイサン・ジョーンズ(サウサンプトン)
最下位のチェルシーに続いて13位も今季2度の監督を交代に踏み切ったクラブがランクイン。「たまに凄い監督に見えるが、大敗を喫する癖もある」というラルフ・ハーゼンヒュットルを11月に解任したサウサンプトンは、後任に「一見すると自信満々だが、実は不確かな監督」を据えた。結局、イングランド2部のルートンから引き抜いたネイサン・ジョーンズ監督は、チームを浮上させるどころか最下位に転落させ、わずか3カ月で解任された…。
■12位:アントニオ・コンテ ⇒ クリスティアン・ステッリーニ(トッテナム)
トッテナムは先月末に、イタリアの名将であるアントニオ・コンテを解任して彼のアシスタントを務めていたクリスティアン・ステッリーニを暫定監督に据えた。新体制の初陣となった今月3日のエヴァートン戦は「コンテの要素が満載の滑稽な1-1」という結果。これまで長らくコンテの補佐役を務めてきた指揮官に劇的な変化は期待できないようだ。記事も、ステッリーニについて「コンテのTwitter Blue版」「コンテのカロリーオフ版」「“コンテニュー”」と揶揄している。
■11位:ブレンダン・ロジャーズ ⇒ アダム・サドラー&マイク・ストウエル(レスター)
2月11日にトッテナムに勝利して以降、7試合で「0勝1分け6敗」と大スランプに陥って降格圏に転落したレスターは、今月2日にブレンダン・ロジャーズ監督を解任した。後任を用意していたわけではなく、今月4日のアストン・ヴィラ戦は暫定的にコーチ陣が指揮を執ってホームで1-2の敗戦。試合後、共同で暫定監督を務めるアダム・サドラーは「何か連絡があるまで、クラブのためにマイク(ストウエル)と全力を尽くすだけ」と語っており、監督をやる気はなさそうだ…。
■10位:ブルーノ・ラージ ⇒ スティーヴ・デイヴィス(ウルヴァーハンプトン)
昨年10月にブルーノ・ラージ監督を解任したウルヴズは、元スペイン代表の指揮官であるフレン・ロペテギを引き抜けるまで、ユースチームを率いていたスティーヴ・デイヴィスを暫定監督に据えたが、8試合で「2勝1分け5敗」と苦しんだ。
■9位:グレアム・ポッター ⇒ ブルーノ・サルトール(チェルシー)
チェルシーは今月2日、ポッター監督の解任に踏み切った。昨年9月に就任したポッターはわずか7カ月で職を失うことになり、新監督が見つかるまではアシスタントを務めていたブルーノ・サルトールがチームを率いるという。記事も「めちゃくちゃな状況」と指摘。巷では「オーナーのトッド・ベーリーはチェルシーを買収せずにブライトンを買えば良かったのでは?」という皮肉が飛び交っているとか。
■8位:ネイサン・ジョーンズ ⇒ ルベン・セジェス(サウサンプトン)
11月に招へいされたネイサン・ジョーンズは結果を残せずにわずか3カ月で解任。「理解できる。納得いく。異論はない」と、記事はサウサンプトンの今季2度目の監督交代を受け入れつつも「だからといって支持はしない」とバッサリ。その理由は、解任されたネイサン・ジョーンズ監督が「プレミアリーグを代表する面白キャラ」になる可能性があったからだという。
■7位:パトリック・ヴィエラ ⇒ ロイ・ホジソン(クリスタル・パレス)
2021年夏からパレスを率いていたパトリック・ヴィエラ(46歳)は、抜本的なスタイルの変更などに着手して昨シーズンは12位でフィニッシュ。今季はさらなる飛躍が期待されたが、ワールドカップ後に不振に陥って11試合も勝利から遠ざかることになり解任された。後任はプレミアリーグの最年長記録を更新するロイ・ホジソン監督(75歳)だ。
記事は「悲しくなる解任劇」とヴィエラに同情。「ホジソン監督はチームを残留に導くだろうが、それはヴィエラが難しい試合を終えたあとだから」と指摘する。
■6位:ジェシー・マーシュ ⇒ ハビ・グラシア(リーズ)
好スタートを切りながら、気づけば残留争いに巻き込まれていたリーズは、今年2月にアメリカ人指揮官のジェシー・マーシュを解任。マイケル・スクバラ暫定監督を挟んで、プレミアリーグでの監督経験を持つスペイン人のハビ・グラシアを招へいした。記事は「あまりワクワクしない人選だが、監督がアップグレードされたことに疑いの余地はほとんどない」と後任監督を評価している。
■5位:スコット・パーカー ⇒ ギャリー・オニール(ボーンマス)
トップ5にランクインしたのは、今季プレミアリーグの監督交代の第1号だ。ボーンマスは、開幕4試合目でリヴァプールに0-9の歴史的な大敗を喫すると、チームを2部から昇格させた功労者のスコット・パーカーを解任してコーチのギャリー・オニールに指揮権を託した。するとオニールは、最初の6試合を無敗で乗り切って勝ち点10を稼ぐ手腕を発揮。暫定監督から正式な監督に昇格した。現在は降格圏の18位にいるが、15~17位と同じ勝ち点で並んでいる。もしリヴァプール戦の「0-9」が「0-7」で済んでいたら、得失点差の関係で降格圏から抜け出せていることになる!
■4位:スティーヴ・デイヴィス ⇒ フレン・ロペテギ(ウルヴァーハンプトン)
それほど目立ってはいないが「ロペテギ政権になってウルヴズは改善されており、残留できるだろう」と記事も高評価。ロペテギ政権になったワールドカップ後だけの成績を見ると、14試合で勝ち点18の12位と悪くない。下位にいる「他のクラブが残留だけを目的とした監督交代に踏み切るなかで、ウルヴズは中長期を見据えた人事」と記事は称えている。
■3位:グレアム・ポッター ⇒ ロベルト・デ・ゼルビ(ブライトン)
昨年9月、チームを“残留争いクラス”から中位定着へと導いたグレアム・ポッター監督をチェルシーに引き抜かれたブライトンは、後任に元サッスオーロの指揮官であるロベルト・デ・ゼルビを据えた。今回のリストの中で唯一、監督を引き抜かれた側のブライトンだが、その監督交代が功を奏している。
この状況について記事は「レモンを与えられたらレモネードを作れ」と説明。これは英語のことわざで、レモンという苦くて酸っぱい物でもレモネードという美味しいジュースを作れることから「逆境を利用する」という意味がある。そのブライトンは今、レモンと三笘薫を混ぜ合わせてチャンピオンズリーグという美酒を生み出そうとしている!
■2位:フランク・ランパード ⇒ ショーン・ダイシ(エヴァートン)
エヴァートンは、昨年1月に招へいしたフランク・ランパードを1年後に解任。そして、19位に低迷していたチームは“残留請負人”のショーン・ダイシを後任に据えた。すると、初陣で首位のアーセナルを撃破する大金星。その後も安定した成績で降格圏を抜け出しており、ダイシ監督は見事にチームを立て直して見せたのだ。これについて記事は「まるで運転中に完全に袋小路にはまってしまい、泣きべそをかきながら難しいバックを父親にお願いしたような状況」と批評している。
■1位:スティーヴン・ジェラード ⇒ ウナイ・エメリ(アストン・ヴィラ)
栄えある1位は劇的な復活を遂げたアストン・ヴィラだ。昨年10月にスティーヴン・ジェラードを解任した際、17位に低迷していたアストン・ヴィラだが、ウナイ・エメリ監督を後任に据えるとチームは大躍進。11月にエメリ監督が就任してからリーグ戦16試合で勝ち点32。同期間ではアーセナルとマンチェスター・Cに次いで3番目の成績。リーグ戦ここ6試合に限ると、アーセナルに次ぐ2位の成績(5勝1分0敗)だ!
気づけばチームは7位まで浮上しており、欧州カップ戦出場権を目指せる位置に着けている。もしヨーロッパリーグ(EL)出場権を獲得できれば、間違いなくアストン・ヴィラは優勝候補の筆頭に挙げられるだろう。というのも、エメリはセビージャ時代にELを3連覇しているほか、ビジャレアル時代にもEL優勝。さらにアーセナル時代には準優勝を果たしており、彼はELの優勝請負人なのだ。
というわけで、エメリを招へいしたアストン・ヴィラが今回の「監督交代ランク」で1位に選ばれることに。それにしても、トップ2がランパードとジェラードの解任というのは、イングランドファンからすると少し寂しい気がする…。
(記事/Footmedia)