「コオロギ食」なぜ炎上 “給食提供”は早すぎた? 専門家「被害者はいないのに…」
【映像】「規模にびっくり」陰謀論まで…“コオロギ食”なぜ炎上?
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 イタリアで伝統食であるピザやパスタに、コオロギなどの粉の使用を禁じる政令が浮上している。イギリスのBBCによると「食文化を守るため」だという。

【映像】なぜ炎上? “給食提供”された「コオロギ食」(イメージ図)

 日本でも最近耳にするようになったコオロギ食。食糧問題解決のカギともされているが、Twitterには「毒だから食べるな」「人口削減計画だ」「コオロギ食は“陰謀論”」などの声があがっている。

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 なぜコオロギ食はSNSで炎上するのか。ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した、食用コオロギの品種改良や販売を行う株式会社グリラス代表の渡邉崇人氏は「どこかでネガティブな盛り上がりがあると予想していたが、正直タイミングと規模感には、かなりびっくりしている」と話す。

 昆虫食をめぐっては去年11月、徳島県の高校で集団給食を行った際、コオロギパウダーを使ったコロッケが提供され、全国初の試みに注目が集まった。食べる・食べないは生徒が選択でき、アレルギーについても事前に説明があったが、その数カ月後「子どもにコオロギ食を出すとは何事か」と県外からの批判が殺到。学校や教育委員会、さらにコオロギパウダーの商品開発を行うメーカーにまで問い合わせが来る事態に発展した。

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食用コオロギの品種改良や販売を行う渡邉崇人氏(株式会社グリラス代表)

 渡邉氏は「炎上のきっかけが給食かどうか、定かではない」とした上で「全員に強制させて食べさせるものではないと思う。選択できることが重要だ」とコメント。

「何より大事なのは、安全性だ。私も生産している側の人間なので、そこが担保できていないと流通させてはいけない。一般的な食品と同じだ。我々も常に流通させる際には殺菌や衛生管理には気を配っている。選択式だったとしても、給食にするタイミングは少し早かったのかもしれない」

 ジャーナリストの堀潤氏は「大手パンメーカーから『コオロギを使います』という話が出た時に『いつも食べているパンはもう買えません』みたいな声が急に出始めた。遠巻きに見ている時は『いいじゃないか』と思われていたが、自分の食卓に入って来た時に、一気にこういう声があがっていくんだと思った。間合いの詰め方が本当に難しい」と話す。

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 堀氏が「まだまだ国際規格やみんなが安心できる基準が足りていないと思うが、現状どうなのか」と質問すると、渡邉氏は「今まさに作り上げているところだ」と回答。「一番進んでいるのは東南アジアのタイで、政府主導で規格ができ上がりつつある。日本においても、いろいろな研究機関や団体と規格を決めようとしている」と述べた。

 他にも多くの虫が存在するが、なぜコオロギなのか。渡邉氏は「既存の畜産のタンパク質の供給源である牛、豚、鶏と比較して、必要になるエサの量が圧倒的に少ない」と話す。

「コオロギは変温動物なので、体温を維持する必要がないし、効率の良さがある。牛だと温室効果ガスがゲップとして出てくる問題がある。コオロギならそれもない。畜産として見た場合、育つのが早い方がいい。セミだと地中の中に何年もいて、なかなか厳しい。当然食用にするとなると、サイズが大きい方が食としては適している。育てやすく、育ちが早くて、大きく、餌が調達しやすい雑食がいい。その中で注目されているのが、コオロギ類とミールワーム類の2つだ」

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 内閣府が2018年時点で公表した情報には「昆虫および昆虫由来製品のアレルギー源性の問題」「重金属類(カドミウム等)が生物濃縮される問題」が指摘されていたが、現在は「甲殻類アレルギー等を持つ人は症状を引き起こす可能性がある」以外に懸念点はなく、安全と言えるとしている。

 日本では“逆風”となった昆虫食。専門家はどう受け止めているのか。「蟲ソムリエ」として445種の昆虫を味見し記録している、NPO法人「食用昆虫科学研究会」理事長の佐伯真二郎氏はこう話す。

「私もいつかこういう炎上は起きると思っていた。今回の件は、みなさん同意した上で食べていて、事故も起こっていない。被害者がいない中でここまで広がったことに、少しびっくりしている」

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 事態は約1年前にイベントで「食用コオロギ」を試食した河野太郎デジタル大臣にも“飛び火”し、「コオロギ事業には国の予算が6兆円使われている」などの陰謀論が飛び交う事態となった。

 佐伯氏は「昆虫食を研究してきて一度も聞いたことがないようなワードが本当に飛び交っていた。発がん性物質・酸化グラフェンの話にはびっくりした。実際に事件は起こっていないので、情報をしっかり見てほしい」とした上で「研究が足りないのは事実だ」と述べる。

「昆虫食は普通の食材と同じくらい研究がされるべき。すでに食べている人たちとこれから食べるかもしれない人たちが一緒になって、研究を続けていけばいい。陰謀論の性質上、正しい情報と間違っている情報が混ぜられがちなので、一つ一つ解きほぐしていけばいいと思っている」

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 タイやラオスといった国では、文化的に食べられているコオロギ。佐伯氏によると「タイでは年間2万トンくらい生産されている」という。今後、昆虫食がヨーロッパや欧米でも広がる可能性はあるのか。

 佐伯氏は「EUに関して言うと2015年から6年かけて調査をして、安全と結論づけられた。どれだけの速度かは分からないが、広がっていくと思う。その時にアジアが一つの生産拠点になるのではないか」と話す。

「最近、昆虫好きの少年少女たちが『味を知りたい』と言って保護者や先生が困ってしまう案件が増えている。保護者のみなさんが、追い詰められてしまわないかを懸念している。そういう場面で専門家がサポートしていければいいと思う」

(「ABEMA Prime」より)

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