去年6月、こども食堂に関する“あるツイート”が話題になった。投稿者はシングルファーザーだ。
「急にLINEで『ひとり親家庭の分しかご用意出来ませんので父親は御遠慮ください』って来た。『お子さんの分もご用意できません』だって…」
突然、よく利用していたこども食堂が母子家庭限定に。これにより、父親はもちろん、息子も利用NGになったという。最近でも改めて話題になったこのツイートには「男性差別だ!」といった声が寄せられている。
離婚した妻から過去にDVを受けたタカヒロさん(40代男性)は「男女で支援の差がある」と指摘する。
「110番通報したら、警察がすぐ来た。妻は無傷だったが、僕は腕から血が出ていた。それなのに、警察からは『妻から夫への暴力はDVじゃない』と言われた。児童相談所の職員は妻に『女性支援室に相談に行ってください』と言ったが、僕が『男性の支援もあると思うので、窓口を紹介してください』と言ったら『すみません、男性の方は扱っていません』と言われた」
DV被害や収入面など、弱い立場に置かれることも多い女性への支援は必要だ。一方で「男性が置いてけぼりになっている」という指摘もある。
「ABEMA Prime」に出演した、NPO法人「日本弱者男性センター」職員の日本武尊氏は「男性は声をあげづらい」と話す。
「僕自身も様々な事情から“弱者男性”と呼ばれる立場だ。生活保護も受けている。支援を受けようとすると『男だから大丈夫だろう』『男のくせにそんなことで弱音を吐くな』と言われ、男であることが逆に障害となってしまう」
冒頭のタカヒロさんと同様、過去に日本武尊氏もパートナーの女性からDV被害を受けていた。具体的にはどのような暴力を振るわれたのか。
「女性から『月に一回とあるテーマパークに連れて行ってほしい』とお願いをされていた。だが、収入的な理由で叶えられなかった。ある時、その件で彼女が急にキレ出して殴りかかってきた。私は身長180センチで身体も大きい。彼女は150センチちょっとの小柄だ。これが初めてではなかったので、僕が『ごめんなさい。もう別れてほしい』と言ったら、包丁を持ち出して『別れるぐらいなら死んでやる』と言われた。包丁を見た瞬間、すぐさま家を出て110番した」
その後、警察と一緒に家の中に入った日本武尊氏。すでに女性は包丁を置いていた。
「私の体にアザがいっぱいあったので、警察には事情を説明した。すると、警察からは『あなたはそれだけ彼女に愛されているんだ。なかなか女性が“別れたら死んでやる”なんて言われないよ。良かったじゃない』と言われた。『いやいや見てください。アザができているんです』と言ったら『あなたは男なんだから女性に殴られたぐらいでそんなこと言っちゃ駄目だ』と言われ、警察は何もしてくれなかった」
後日、役所に相談に行っても、逃げ込める場所は見つからなかったという。
「私には身寄りがないので、逃げる場所もない。役所に『シェルターで囲んでいただきたい、助けてくれ』と言ったら『男性を匿うシェルターはありません』と言われて終わってしまった。今の時代、お寺に行って匿っていただくこともできない。もう相談する場所がなくなって『次はどこなの?』となったとき、やっぱり僕たちのような民間NPO法人や一般社団法人、財団法人が何かするしかない。ただ、費用が足りないので、結局十分な支援ができない形で終わってしまう」
広報ウーマンネット代表で女性支援のあり方に精通している伊藤緑氏は「性別ではなく、人として困っている状況なら、その人に向けた場所を用意していくことが必要だと思う」と話す。
東京都のひとり親支援では、シングルファーザー、シングルマザーで受けられる支援に大きな差はない。
日本武尊氏は「金銭面でいうと、やっぱりシングルファーザーが有利だと思う。男性と母親、それぞれが必要とするものが違う」と述べる。
「私は日本生活支援協会という団体の代表もやっていて、男女ともに支援をしている。だからこそ、男性と女性の支援の差が見えてくる。ぜひ弱者の声を聞いていただきたい」
リディラバ代表の安部敏樹氏も「男性用のシェルターはあったほうがいい」と話す。
「少なくとも女性用シェルターに男性は入れない。私は一時期男性の性被害の取材をしていたが、男性の被害事案はとても多い。例えば、学校の中でも男性の性被害は起こっている。先生や先輩から被害を受けた話もある。だが、世の中に知られることはほとんどない。『男性らしさ』の中で、被害を訴えること自体が社会的に許されない。文化として、弱い男性がいることを周りが許容しない。それによって、実態の把握が非常に難しくなっている。被害を受けた男性が相談しやすくなる仕組みをどう作るか。その対応策の1つが男性シェルターかもしれない」
(「ABEMA Prime」より)
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