サッカーの最高峰リーグであるプレミアリーグ。その中でも栄誉であるMVPについてご紹介します。PFA年間最優秀選手賞や月間MVP、歴代のシーズンMVP一覧、2022-2023シーズンの受賞予想などをまとめました。
PFA年間最優秀選手賞
PFA年間最優秀選手賞はイングランドでプレーする選手を対象に、シーズンを通して最も活躍した選手に贈られる賞で、プロフェッショナル・フットボーラーズ・アソシエーション(PFA)の会員によって選出されています。
PFAとは、フットボール・アソシエーションクラブに所属するプロサッカー選手を会員とする労働組合で、設立は1907年。現在はおよそ4000人の選手が加入しています。
PFA年間最優秀選手賞は1973-74シーズンから実施され、4月にノミネート選手を発表。シーズン終了後にロンドンで表彰されます。同じプロサッカー選手の投票によって選ばれることから、最も栄誉ある賞として認識されています。
2023年3月には、元イングランド代表DFマイカ・リチャーズ氏が「PFA年間最優秀選手を今選ぶとしたら?」という質問に対し、マンチェスター・シティのハーランドやアーセナルのサカら6人の選手を選出、そのうちの1人にブライトン 三笘薫の名前を挙げています。
プレミアリーグ・シーズンMVP歴代受賞一覧
年度 | 選手名 | 国籍 | チーム名 |
---|---|---|---|
1973-1974 | ノーマン・ハンター | イングランド | リーズ |
1974-1975 | コリン・トッド | イングランド | ダービー・カウンティ |
1975-1976 | パット・ジェニングス | 北アイルランド | トッテナム |
1976-1977 | アンディ・グレイ | スコットランド | アストンヴィラ |
1977-1978 | ピーター・シルトン | イングランド | ノッティンガム・フォレスト |
1978-1979 | リアム・ブレイディ | アイルランド | アーセナル |
1979-1980 | テリー・マクダーモット | イングランド | リヴァプール |
1980-1981 | ジョン・ウォーク | スコットランド | イプスウィッチ・タウン |
1981-1982 | ケヴィン・キーガン | イングランド | サウサンプトン |
1982-1983 | ケニー・ダルグリッシュ | スコットランド | リヴァプール |
1983-1984 | イアン・ラッシュ | ウェールズ | リヴァプール |
1984-1985 | ピーター・リード | イングランド | エヴァートン |
1985-1986 | ギャリー・リネカー | イングランド | エヴァートン |
1986-1987 | クライヴ・アレン | イングランド | トッテナム |
1987-1988 | ジョン・バーンズ | イングランド | リヴァプール |
1988-1989 | マーク・ヒューズ | ウェールズ | マンチェスター・ユナイテッド |
1989-1990 | デイヴィッド・プラット | イングランド | アストンヴィラ |
1990-1991 | マーク・ヒューズ | ウェールズ | マンチェスター・ユナイテッド |
1991-1992 | ギャリー・パリスター | イングランド | マンチェスター・ユナイテッド |
1992-1993 | ポール・マグラー | アイルランド | アストンヴィラ |
1993-1994 | エリック・カントナ | フランス | マンチェスター・ユナイテッド |
1994-1995 | アラン・シアラー | イングランド | ブラックバーン |
1995-1996 | レス・ファーディナンド | イングランド | ニューカッスル |
1996-1997 | アラン・シアラー | イングランド | ニューカッスル |
1997-1998 | デニス・ベルガンプ | オランダ | アーセナル |
1998-1999 | ダヴィド・ジノラ | フランス | トッテナム |
1999-2000 | ロイ・キーン | アイルランド | マンチェスター・ユナイテッド |
2000-2001 | テディ・シェリンガム | イングランド | マンチェスター・ユナイテッド |
2001-2002 | ルート・ファン・ニステルローイ | オランダ | マンチェスター・ユナイテッド |
2002-2003 | ティエリ・アンリ | フランス | アーセナル |
2003-2004 | ティエリ・アンリ | フランス | アーセナル |
2004-2005 | ジョン・テリー | イングランド | チェルシー |
2005-2006 | スティーブン・ジェラード | イングランド | リヴァプール |
2006-2007 | クリスティアーノ・ロナウド | ポルトガル | マンチェスター・ユナイテッド |
2007-2008 | クリスティアーノ・ロナウド | ポルトガル | マンチェスター・ユナイテッド |
2008-2009 | ライアン・ギグス | ウェールズ | マンチェスター・ユナイテッド |
2009-2010 | ウェイン・ルーニー | イングランド | マンチェスター・ユナイテッド |
2010-2011 | ガレス・ベイル | ウェールズ | トッテナム |
2011-2012 | ロビン・ファン・ペルシ | オランダ | アーセナル |
2012-2013 | ガレス・ベイル | ウェールズ | トッテナム |
2013-2014 | ルイス・スアレス | ウルグアイ | リヴァプール |
2014-2015 | エデン・アザール | ベルギー | チェルシー |
2015-2016 | リヤド・マフレズ | アルジェリア | レスター |
2016-2017 | エンゴロ・カンテ | フランス | チェルシー |
2017-2018 | モハメド・サラー | エジプト | リヴァプール |
2018-2019 | フィルジル・ファン・ダイク | オランダ | リヴァプール |
2019-2020 | ケヴィン・デ・ブライネ | ベルギー | マンチェスター・シティ |
2020-2021 | ケヴィン・デ・ブライネ | ベルギー | マンチェスター・シティ |
2021-2022 | モハメド・サラー | エジプト | リヴァプール |
プレミアリーグが創設され、最初のPFA年間最優秀選手賞(MVP)に輝いたのは、アストン・ヴィラのポール・マグラー選手。強靭なフィジカルを誇るアイルランド代表のDFで、リーグ戦2位躍進の原動力となりました。
1994-95シーズンはマンチェスター・ユナイテッドのエリック・カントナ選手が受賞。1973-74から始まった同賞では初のフランス人選手の受賞となりました。
1999-2000シーズンからはマンチェスター・ユナイテッド勢が3季連続でMVPに輝き、2002-03シーズンからはティエリ・アンリ選手(アーセナル)が2季連続で受賞。連続受賞は初のケースとなりました。その後、クリスティアーノ・ロナウド選手(マンチェスター・ユナイテッド)、ケヴィン・デ・ブライネ選手(マンチェスター・シティ)も2季連続で受賞しており、長い歴史のなかで連続受賞はこの3選手のみとなっています。
またこの3人のほか、マーク・ヒューズ選手(マンチェスター・ユナイテッド)、アラン・シアラー選手(ブラックバーン、ニューカッスル)、ガレス・ベイル選手(トッテナム)、モハメド・サラー選手(リヴァプール)の4人が2度MVPに輝いた選手となっています。
攻撃的な選手が選ばれる傾向にある中で、2016-17シーズンはエンゴロ・カンテ選手(チェルシー)、2018-19シーズンはフィルジル・ファン・ダイク選手(リヴァプール)と、近年は守備的な選手にもスポットライトが当てられています。
月間MVP
プレミアリーグ月間最優秀選手は、プレミアリーグとパートナーシップ契約を結ぶEAスポーツが制定する賞で、1か月のうちに最も活躍した選手に贈られます。
同賞は1994-95シーズンに創設され、原則として翌月第2金曜日に発表。8月から翌年の4月まで毎月発表されます。
プレミアリーグ2022-2023・月間MVP歴代受賞一覧
受賞月 | 選手名 | 国籍 | チーム名 |
---|---|---|---|
8月 | アーリン・ハーランド | ノルウェー | マンチェスター・シティ |
9月 | マーカス・ラッシュフォード | イングランド | マンチェスター・ユナイテッド |
10月 | ミゲル・アルミロン | パラグアイ | ニューカッスル |
11月/12月 | マルティン・ウーデゴール | ノルウェー | アーセナル |
1月/2月 | マーカス・ラッシュフォード | イングランド | マンチェスター・ユナイテッド |
3月 | ブカヨ・サカ | イングランド | アーセナル |
プレミアリーグ・シーズンMVP予想
アーリン・ハーランド(マンチェスター・シティ)
プレミアリーグを席巻するハーランド選手は、今季のMVP候補のひとりでしょう。今季、ドルトムントから加入すると、開幕戦でいきなり2ゴールと衝撃のデビューを果たしました。
4節と5節には2試合連続ハットトリックを記録し、9節のマンチェスター・ダービーでもライバルを粉砕するハットトリックを達成しました。21節のウルヴァーハンプトン戦でも3ゴールを奪取し、今季すでに4度のハットトリックを記録。25節のボーンマス戦ではクラブのシーズン最多得点記録を塗り替える27ゴール目を決め、3連覇を狙うチームを力強く牽引しています。
残り試合でチームを優勝に導き、プレミアリーグのシーズン最多得点記録である34得点を更新すれば、文句なしでMVPを受賞することになるはずです。
ケヴィン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)
3連覇を狙うマンチェスター・シティにおいて、今季もデ・ブライネ選手は重要な役割を担っています。
視野の広さと卓越したパスワークを武器とする司令塔は、鋭いスルーパスやピンポイントのクロスで次々に得点機を生み出します。
マンチェスター・シティに加入した2015-16シーズンに9アシストを記録すると、ジョゼップ・グラウディオラ監督が就任した翌2016-17シーズンは18アシストをマーク。2019-20シーズンには20アシストを記録しました。以降のシーズンもコンスタントにアシストを記録し、今季もここまでリーグ最多の14アシストをマーク。リーグトップの得点力を誇るチームを、ハーランド選手とともに牽引しています。
2019-20シーズンと2021-2022シーズンにMVPを獲得した稀代のプレーメーカーは、果たして今季史上初となる三度目の受賞なるか。そのパフォーマンスに注目です。
マーカス・ラッシュフォード(マンチェスター・ユナイテッド)
2012-13シーズン以来、10季ぶりの優勝を目指すマンチェスター・ユナイテッド。その原動力となっているのがラッシュフォード選手です。
アカデミー出身の25歳のストライカーは、2019-20シーズンに17ゴールを挙げたものの、昨季は怪我の影響もあり、わずか4ゴールに留まりました。
しかし復調した今季は開幕からハイパフォーマンスを見せ、9月にはアーセナルを撃破する2ゴールを叩き込み、月間MVPを受賞。さらにワールドカップ中断が明けた17節のノッティンガム・フォレスト戦から一気にギアを上げ、10試合で10得点と驚異的なペースでゴールを量産。1月の月間MVPを受賞するとともに、チームを3位にまで浮上させました。
2月27日に行われたニューカッスルとのリーグカップでも2点目を叩き込み、タイトル獲得に貢献。この勢いを保ち、チームを逆転優勝に導けば、MVP受賞も十分にあり得るでしょう。
カゼミーロ(マンチェスター・ユナイテッド)
優勝争いに踏み止まるマンチェスター・ユナイテッドにおいて、カゼミーロ選手の存在は日増しに大きくなっています。
今季、レアル・マドリーから加わったブラジル代表のボランチは、加入当初はベンチスタートを強いられていたものの、10節のエバートン戦以降はしっかりとスタメンの座を確保。持ち前の守備力を遺憾なく発揮し、マンチェスター・ユナイテッドに安定感をもたらしています。
力強い守備と的確なポジショニングに加え、時折見せる攻撃性も魅力。13節のチェルシー戦では終了間際の同点ゴールでチームを救い、ニューカッスルとのリーグカップ決勝では、ヘディングで先制ゴールを叩き込み、マンチェスター・ユナイテッドの6季ぶりのタイトル獲得の立役者となりました。
レアル・マドリーで多くのタイトルを獲得してきた経験豊富なカゼミーロ選手は、リーダーシップと勝者のメンタリティを併せ持ち、近年は苦戦が続くマンチェスター・ユナイテッドに大きな影響力を与えています。
マルティン・ウーデゴール(アーセナル)
30節終了時点で首位に立つアーセナル。2003-04シーズン以来の優勝を狙うチームのキャプテンを務めるのは、マルティン・ウーデゴール選手です。
現在24歳のノルウェー代表MFは、早くからその才能を認められ、16歳の時にレアル・マドリーとプロ契約を締結。オランダのクラブやレアル・ソシエダでのレンタル生活で経験を積み、2020-21シーズンにレアル・マドリーに復帰。しかし出番に恵まれず、2021年1月にアーセナルに期限付き移籍で加入しました。
するとすぐさまポジションを掴み、翌シーズンより完全移籍へ移行。36試合に出場し7得点と主軸として活躍しました。
卓越したテクニックに加え、ハードワークも身に付けた天才アタッカーは、今季も攻撃の中心として活躍。3節のボーンマス戦では2ゴールを奪うと、4試合で3得点を決めた11月・12月は、見事に月間MVPに輝きました。
ここまで10得点・7アシストと目に見える結果を残す一方で、強烈なリーダーシップを発揮し、チームをまとめ上げています。
ブカヨ・サカ(アーセナル)
現在首位を走るアーセナルで強烈なインパクトを放っているのがブカヨ・サカ選手です。
ナイジェリアにルーツを持つ21歳のウインガーで、2018-19シーズンにアーセナルでプロデビュー。翌シーズンより出場機会を増やし、2020-21シーズンに主力に定着。攻撃的なポジションだけでなく、サイドバックもこなす汎用性の高さも示し、サポーターが選ぶシーズンの最優秀選手に輝きました。
2021-22シーズンは11得点・7アシストとともにチームトップの成績を残し、アーセナルのシーズン最優秀選手を2季連続で受賞。今季も12得点・10アシストは、ともにチームトップの数字となっています。
技術と身体能力を併せ持ち、リヴァプールやマンチェスター・ユナイテッドなど、強豪との大一番で結果を残す勝負強さも兼備。アーセナルが19年ぶりにリーグ制覇を果たせば、21歳の若さでMVPに選ばれる可能性もあるでしょう。
まとめ
シーズンを代表する選手に贈られるPFA年間最優秀選手賞。過去の受賞者を振り返っても、偉大なる選手たちが数多く名を連ねています。
優勝チームから選出されるとは限らず、選手自身が選考することから、じかに対戦した際に脅威と感じた選手や、衝撃度などが投票に影響しているはずです。
今季のプレミアリーグでも強烈なインパクトを放つ選手が数多く存在します。得点王レースを独走するハーランド選手か、あるいは復活を高らかに告げるアーセナル、マンチェスター・ユナイテッド勢が栄誉を手にするのか。それとも意外な伏兵がMVPを受賞するのか。優勝争いだけではなく、MVPの行方にも是非注目してください。
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