マンチェスター・Cに所属するノルウェー代表FWアーリング・ハーランド(22歳)が、また新たな金字塔を打ち立てた。
11日に行われたチャンピオンズリーグ準々決勝ファーストレグのバイエルン戦で、ハーランドは76分にDFジョン・ストーンズが競り勝ったボールに飛び込んで右足を合わせてゴール。チームの3-0の勝利に貢献した。これでハーランドは今季公式戦45ゴール目。シティでの1年目にして「プレミアリーグ所属選手における1シーズンの公式戦最多ゴール記録」を更新したのだ。
また新たな記録を打ち立てたハーランド。それでは“ノルウェーの怪物”が今季シティで打ち立てた記録を振り返っていこう。
■デビュー戦で・・・
昨年6月にドルトムントから父親の古巣でもあるマンチェスター・Cに加入したハーランドは、プレミアリーグのデビュー戦となった8月8日のウェストハム戦でいきなり結果を残した。自分で獲得したPKを自ら決めて先制ゴール。プレミアリーグにおいて、デビュー戦でPKを獲得してそれを自ら決めた選手は2016年のアレシャンドレ・パト(当時チェルシー)に次いで史上2人目だという。
そして後半にもゴールを奪ったハーランドは、シティにおいて史上2人目となるプレミアでのデビュー戦で2ゴール。クラブの英雄であるセルヒオ・アグエロの2011年の偉業に並んで見せた。ちなみにハーランドは、ドルトムント時代の2020-21、2021-22シーズンの開幕戦でも2ゴールを決めており、欧州5大リーグで3年連続の開幕戦2ゴールとなった。
■開幕5試合で・・・
第2戦こそゴールを逃したハーランドだが、その後はプレミア史上6人目の快挙となる2試合連続でのハットトリックなど最初のリーグ戦5試合で9ゴール。ミッキー・クインとアグエロ先輩の記録(8ゴール)を抜き去って「プレミア史におけるデビューから5試合でのゴール記録」を打ち立てた。
これで8月のうちに9ゴール。これは「プレミアの8月の最多ゴール記録」となった。そしてイングランド代表の絶対的エースであるFWハリー・ケインをも凌駕。8月が苦手なことで有名なケインは、これまで8月のプレミアの試合は26試合に出場して8ゴール。ハーランドはわずか5試合で9ゴールを奪ってスパーズの点取り屋を超えてしまったのだ・・・。
■最速の10ゴール
3試合連続でのハットトリックに期待が寄せられた9月3日のアストン・ヴィラ戦では、ケヴィン・デ・ブライネの絶妙なクロスをファーサイドで合わせて先制点。その後はゴールを奪えずにハットトリック3連発とはならなかったが、それでもプレミアで10点目。「デビューから6試合での10ゴール」は1992年のミッキー・クインと並び最速記録となった。
クインは92年11月にニューカッスルからコヴェントリーに加入して6試合で10ゴールをマーク。そのためハーランドはプレミアにおいて最も早い時期での2桁ゴール達成となった。
■チャンピオンズリーグでも・・・
ヴィラの次はセビージャを餌食に。今季のチャンピオンズリーグ(CL)グループステージ第1節のセビージャ戦では2得点で4-0の大勝に貢献。シティの選手としてプレミアとCLのデビュー戦でゴールを奪った初めてのプレーヤーとなった。
これでハーランドは、ザルツブルクとドルトムント時代を含めてCLでは出場20試合で通算25ゴール。これはルート・ファン・ニステルローイとロベルト・ソルダードの16ゴールを超えて「CLデビュー後20試合での最多ゴール記録」を樹立したことになる。
さらにサッカー界の新たな皇帝であるキリアン・エンバペの記録まで更新。当時22歳47日だったハーランドは、エンバペの22歳80日を抜いて「最年少でCL通算25ゴール」に到達した選手になった。ちなみに、CLで歴代最多の140ゴールを決めているのはFWクリスティアーノ・ロナウド(現在アル・ナスル所属)だが、彼はCLの最初の20試合はノーゴールだった。
■ホームで3戦連続ハットトリック
勢いの止まらないハーランドは、10月2日に行われたプレミア第9節のマンチェスターダービーでもハットトリックを達成し、宿敵ユナイテッドを6-3で撃破した。
シティの選手がマンチェスターダービーでハットトリックを達成するのは史上3人目の快挙(フィル・フォーデンも同試合で4人目のハットトリック達成者となる!)。この試合のハーランドは3ゴール・2アシストで、「プレミアでのマンチェスターダービーでの1試合での得点関与数」の記録を打ち立てた。
これでハーランドはプレミア最初の8試合で3度のハットトリックという記録を達成。さらに8月27日クリスタル・パレス戦、8月31日ノッティンガム・フォレスト戦に続いて「プレミア史上初となるホームゲーム3戦連続でのハットトリック」となった。もちろんプレミア史における最初8試合での最多ゴール記録(14点)も打ち立てた。
■ハーランド家の記録も・・・
その後も次々に記録を打ち立てたハーランドは、クラブ史上初のプレミア7試合連続ゴールを達成するなど、ワールドカップの中断期間までにリーグ戦18ゴールを稼いだ。そしてリーグ再開後もハーランドの勢いは止まらない。12月28日のリーズ戦で2ゴールを奪い、プレミア史上最速となる出場14試合で20ゴールに到達。それまでの記録は元サンダーランドのケヴィン・フィリップスで21試合だった。
それと同時に偉大な記録まで塗り替えた。それは「ハーランド家におけるプレミア最多ゴール」である。リーズやシティなどで活躍した父アルフ・インゲ・ハーランドは、同リーグで181試合に出場して18ゴール。息子はわずか14試合で父の記録を抜き去ったことになる。
さらにペップ・グアルディオラの“生徒”としても記録を更新。最速で公式戦25ゴールを奪ったのだ。ペップの元でハーランドは20試合で26ゴール。あのリオネル・メッシでさえ、25ゴールを奪うのに28試合を要した。
■最速で4度目のハットトリック
「プレミア史上最多の年内ゴール数(21ゴール)」を叩き出して新年を迎えたハーランドは、1月22日のウォルヴァーハンプトン戦でチームの全得点を決めて3-0の勝利に貢献。これでハーランドは今季プレミア19試合目の出場で4度のハットトリック。ルート・ファン・ニステルローイの65試合を抜き去り、「プレミア歴代最速で4度目のハットトリック」を達成した。
ちなみに、プレミアにおける1シーズンの最多ハットトリック記録は1995-96シーズンのアラン・シアラー(当時ブラックバーン)で5回。この記録を抜く可能性は高いし、アグエロ先輩のプレミア通算最多となる12回の記録もいずれ凌駕するだろう。
ウルヴズ戦でのハットトリックで今季リーグ戦でのゴール数を19試合で「25」まで伸ばしたハーランドは、ケヴィン・フィリップスの26試合を抜いて「プレミア史上最速での25ゴール到達」となった。
■クラブ記録を更新
1月下旬から火薬が湿りだしたハーランドだが、2月15日のアーセナルとの首位攻防戦で今季プレミア26点目をマークしてチームを勝利に導く。
さらに2月25日のボーンマス戦でのゴールで、2014-15シーズンにアグエロ先輩が打ち立てた26ゴールという「シティのプレミアでのシーズン最多ゴール記録」をわずか24試合の出場で抜き去った。
■CLで1試合5ゴール
3月14日に行われたCLベスト16セカンドレグのライプツィヒ戦では大量5ゴールを叩き出し、チームを7-0の勝利に導いた。
ザルツブルク時代の2019年にCLデビュー戦でハットトリックを達成して以来となる、自身2度目のCLでのハットトリックだ。さらにハーランドは、ルイス・アドリアーノ、リオネル・メッシに続いてCL史上3人目の1試合5ゴールを達成。これでCL通算25試合で33ゴール。同大会における「最速(25試合)と最年少(22歳236日)での30ゴール到達」となった。
そして今シーズンの公式戦ゴール数を「39点」まで伸ばし、1928-29シーズンのトミー・ジョンソン(38ゴール)を抜いて94年ぶりに「シティの1シーズンにおける公式戦最多ゴール記録」を塗り替えた。ちなみにジョンソンは40試合で38ゴール、一方でハーランドは36試合で39ゴールだった。
■伝統のFAカップでも
ライプツィヒ戦の4日後のFAカップ準々決勝のバーンリー戦でもハットトリックを達成。今季シティで「6度目」のハットトリック(プレミア4回、CL1回、FA杯1回)だ。
プレミアに所属する全選手の今季ハットトリック数の合計数を超えてしまった(5名が1回ずつ)。
■プレミア選手の1シーズン最多記録
そして今月11日のバイエルン戦でネットを揺らして今季公式戦45ゴール目。これは2002-03シーズンのルート・ファン・ニステルローイ(当時ユナイテッド)、2017-18シーズンのモハメド・サラー(リヴァプール)の44ゴールを超えて「プレミアリーグに所属する選手の1シーズンの公式戦最多ゴール記録」となった。
ふたりが52試合で44ゴールを叩き出したのに対し、ハーランドはわずか39試合で45ゴール。さらに、2019-20シーズンの44ゴール(ザルツブルクで28点、ドルトムントで16点)を抜いて自身のシーズン最多ゴール記録も更新した。
■今後の記録
今季プレミアリーグで既に30ゴールを叩き出しているハーランド。この数字は、チェルシー(29ゴール)など8クラブのチーム総得点よりも多く、それを一人で稼いでいることになる。
そんなノルウェーの怪物には、今後さらなる記録更新に期待が寄せられる。例えばプレミアリーグのシーズン最多ゴール記録だ。ハーランドはアンディー・コールとアラン・シアラーが持つ記録(34ゴール)まで4点に迫っている。
プレミアリーグ以前も含めるとイングランドトップリーグにおける1シーズンの最多ゴール記録は、エヴァートンのディキシー・ディーンが1927-28シーズンに打ち立てた「60ゴール」だ。この異様な数字に追いつくのは難しいが、同氏が同じシーズンに打ち立てた公式戦の最多ゴール記録(63ゴール)ならば狙えるかもしれない。
果たしてシティのFWアーリング・ハーランドはどこまでゴール数を伸ばし、あといくつ記録を打ち立てるのか? ノルウェー代表のゴールマシーンから目が離せない。
(記事/Footmedia)