CL準々決勝
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 今シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)も佳境を迎え、ここまで勝ち上がってきた8チームが熱戦を繰り広げている。それではベスト4の座をかけた準々決勝セカンドレグをプレビューしよう。

[写真]=Getty Images

■チェルシーの奇跡は? (第1戦:レアル・マドリード 2-0 チェルシー)

チェルシー、レアル・マドリード
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 泥沼状態のチェルシーは、王者レアル・マドリードを相手に2点差を跳ね返さないといけない。過去2シーズンの欧州王者同士の対決となったこのカードは、ホームでの初戦を2-0で制したレアルが圧倒的に有利だ。

 ホーム&アウェイ制のCLの試合において、レアルはファーストレグを複数得点差で勝利したときに「95%」の確率で勝ち上がっているのだ。過去19回のうち、敗退の憂き目に遭ったのは1度だけ。それが19年前の準々決勝モナコ戦だった。当時、レアルはホームでの初戦に4-2で勝利するも、最終的に逆転を許してしまったのだ。

 ジネディーヌ・ジダン、ロナウド(ブラジル)、ロベルト・カルロス、ルイス・フィーゴなど世界的なメンバーを揃えた“銀河系軍団”は、敵地での第2戦でもラウールが先制ゴールを奪って一時は2戦合計5-2のスコアにした。しかし、そこから猛反撃を受けると、元レアルのフェルナンド・モリエンテスに2戦連続ゴールを許すなど3失点。セカンドレグを1-3で落として2戦合計5-5。アウェイゴール差で敗れ去った(ちなみにUEFAは2021-22シーズンから「アウェイゴールルール」を撤廃している)。

 一方、チェルシーは今季2度目の監督交代に踏み切り、何とかシーズンを立て直そうと奔走しているがチーム再建はうまくいっていない。クラブOBのフランク・ランパードを暫定監督に据えるも苦境を抜け出せていないのだ。今月15日に行われたプレミアリーグ第31節のブライトン戦では、MFコナー・ギャラガーのシュートが敵DFに当たってゴールに吸い込まれ、チームとして3月18日以来となる約1か月ぶりのゴールを奪うも、ブライトンのMFフリオ・エンシオに豪快な逆転ゴールを許してホームで敗れた。ランパード政権になってから3連敗。3月11日のレスター戦に勝利して以降、6試合も白星から遠ざかっている。

 そんなチェルシーにも希望の光はある。CLの決勝トーナメントで、ファーストレグを2点差で落とした直近2回はいずれも勝ち上がっているのだ! 2013-14シーズンにはパリ・サンジェルマンを相手に第2戦で追いついてアウェイゴール差で勝利した。さらに2011-12シーズンのナポリ戦では1-3で初戦を落としながら、第2戦では延長戦の末に4-1で見事に逆転勝利を収めたのだ。そしてチェルシーは、その11年前の再現を目指すことになる。当時、チェルシーは3月にアンドレ・ヴィラス・ボアスを解任し、クラブOBのロベルト・ディ・マッテオを暫定監督に据えて逆転劇を演じると、勢いそのままクラブ史上初の欧州制覇を成し遂げたのだ。

 再びシーズン途中にクラブOBを暫定監督に据えたチェルシー。頂点を目指すなら、まずはFWカリム・ベンゼマ(35歳)を止めないといけない。ファーストレグでもゴールを決めた経験豊富なストライカーは、イングランドのクラブを相手に最近8試合で11ゴール。CLで決めた直近11ゴールは全てイングランド勢との試合なのだ。そのベンゼマは、次の試合がCL史上5人目となる150試合目の出場になる。

■エースが帰ってきたナポリ (第1戦:ミラン 1-0 ナポリ)

ミラン、ナポリ
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 33年ぶりのリーグ制覇を前に少し足踏みしているナポリは、頼れるエースが復帰した。今季セリエAで21ゴールを叩き出して得点ランク首位を走るナイジェリア代表FWヴィクター・オシムヘン(24歳)が、週末のリーグ戦で内転筋のケガから復帰したのである。

 エース不在の間、ナポリは今月2日に行われたセリエAでのミランとのホームゲームを0-4で落とすと、先週のファーストレグの対戦も0-1で敗れて追い込まれた。それでもオシムヘンが戻ってくれば状況が変わるはず。同ストライカーはベスト16のフランクフルト戦では2試合で計3ゴールを叩き出してチームを勝利に導いているのだ。

 さらにナポリは、CLのホームゲームに絶対の自信を持つ。2017年11月にマンチェスター・Cに敗れて以降、CLのホームゲームは最近12試合に負けていない(9勝3分け)。今季に限れば4戦全勝。その4試合とも3点以上を奪い、リヴァプールやアヤックスといった難敵もなぎ倒しているのだ。

 対するミランは、CLで同胞のイタリア勢に負けたことがない。PK戦でユヴェントスを倒した2003年のCL決勝を含め、同じセリエAのチームを相手にCLでは6試合とも負けていないのだ。さらに今季の彼らは堅守が光る。1-0で勝利したファーストレグを含め、CLでは5試合連続でクリーンシートを達成。今週の第2戦でも失点しなければ、前回頂点に立った2006-07シーズン以来のベスト4進出となる。

■優勝候補筆頭のマンC (第1戦:マンチェスター・C 3-0 バイエルン)

マンチェスター・C、バイエルン
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 初戦を3-0で制したマンチェスター・Cは十中八九、いや「9割」の確率で突破が決まっている。これまでCLの決勝トーナメントで初戦を3点差以上で勝利したのは41チームあるそうだ。そして、そのうち37チームが無事に勝ち上がっている。3点差を跳ね返す大逆転劇を演じたチームは過去に4チームしかいないのだ(2004年のデポルティーボ、2017年のバルセロナ、2018年のローマ、2019年のリヴァプール)。

 マンチェスター・Cのジョゼップ・グアルディオラ監督は「10歳は老けた」とファーストレグを振り返り、「気を抜けば1~3点は奪われる」と第2戦に向けて警戒しているが、それでもマンチェスター・Cの優位は変わらない。彼らはゲームを支配するだけでなく、抜群の決定力まで誇るのだ。第1戦では、MFロドリがCL通算44試合目の出場で初ゴールを奪うと、エースのFWアーリング・ハーランドもチームの3点目を奪った。これでハーランドはCLで26試合目の出場にして驚異の34ゴール。そしてドルトムント時代に一度も勝てなかったバイエルンを相手に、8度目の挑戦で初勝利を挙げたのだ。

 そのマンチェスター・Cは準決勝進出が濃厚なだけでなく、優勝候補の大本命でもある。データ会社『Opta』の予想によると、マンチェスター・Cが準決勝に進む確率は「96%」。決勝進出は「66%」、そして優勝する確率は「45.34%」。2番目に優勝の確率が高いレアルでさえ「17%」なので、マンチェスター・Cが頭一つ抜け出していることになる。

 グアルディオラ監督も、2021年のCL決勝では当時チェルシーを率いていたトーマス・トゥヘル(現在バイエルンの監督)に敗れているが、さすがに3点差があれば問題ないはずだ。そのグアルディオラは、カルロ・アンチェロッティ(106勝)、アレックス・ファーガソン(102勝)に次いでCL史上3人目の通算100勝まであと1勝に迫っているぞ。

■崖っぷちのベンフィカ (第1戦:ベンフィカ 0-2 インテル)

ベンフィカ、インテル
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 “無双状態”だったベンフィカが、ここにきて勢いを失っている。今季ロガー・シュミット監督を招へいしたベンフィカは、同指揮官の下でシーズン開幕から公式戦13連勝という完璧なスタート。そして初黒星を喫する年末まで無敗を維持した。しかし、今月に入って歯車が狂い始めている。リーグ戦で宿敵ポルトに敗れると、先週のファーストレグでもインテルに0-2の敗戦。さらに週末には、DFニコラス・オタメンディのミスで後半追加タイムに決勝点を許して格下のシャヴェスにも0-1の敗戦を喫したのだ。これで5年ぶりの公式戦3連敗となってしまった。

 対するインテルも、決して調子が良いわけではないが、それでも初戦で得た2点差のリードは大きい。スポーツ専門サイト『ESPN』によると、CLの決勝トーナメントにおいて、敵地でのファーストレグを2点差以上で勝利したチームは「98%」の確率で勝ち上がっているという。過去49件のうち唯一の例外が2018-19シーズンのパリ・サンジェルマンだ。彼らはマンチェスター・Uを相手に敵地で2-0の勝利をおさめながら、第2戦ではホームで1-3の敗戦を喫してアウェイゴール差で敗退の憂き目に遭った。

 そんな例外はあるものの、インテルは前回優勝した2009-10シーズン以来となるベスト4進出に向けて視界良好だ。

 果たして、どこがベスト4に勝ち上がるのか? 今週のチャンピオンズリーグ準々決勝セカンドレグから目が離せない。

(記事/Footmedia)

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