三笘薫のドリブルが再び輝き始めた。日本時間15日に行われたチェルシー戦の26分にカットインからシュートに至ったドリブルなど、ブライトンの中でも一際目立つパフォーマンスを披露。「決めればスーパーゴール」「メッシ級のドリブル」と、ファンも大興奮の一幕だった。
三笘は第29節ブレントフォード戦で1シーズンのプレミアリーグ日本人最多記録を塗り替えるなど、最近の試合では特に、得点に関わるプレーが際立っていた。一方で、最大の武器であるサイドでのドリブル突破を見せるシーンがそれ以前よりも少なくなっていた。
しかし、チェルシー戦では三笘がいい状態で1対1を仕掛けられる場面が明らかに増えているように見えた。デ・ゼルビ監督が率いるブライトンには、変化が起きているようだった。
三笘とのマッチアップ
チェルシー戦における最大の見せ場は、先述した26分のシーンだろう。カイセドが中盤でのボールの競り合いに勝利すると、三笘にパスが回ってきた。三笘は得意のドリブルをスタートさせると、2人の相手CBを流れるようにかわしていく。2人目のDFであるフランス代表バディアシルを抜き去った瞬間にニアを狙うも、GKケパの好セーブに遭い得点には結びつかなかった。それでも「決まれば伝説」級の好プレーでチームにビッグチャンスをもたらした。
この試合では、それ以外に何度も三笘が突破する場面が見られた。一つの要因として、チェルシーのランパード監督が「三笘対策」として本職CBのチャロバーを右サイドバックに置いたことが逆に、三笘にとって都合がよくなったのかもしれない。
足元でのドリブルだけでなく、裏を狙うプレーでも脅威になる三笘は、対峙する相手にとって厄介な存在だ。普段CBでプレーするチャロバーが裏を取られるプレーへの意識が強すぎたこともあり、三笘との距離感がかなり空いている場面が目立った。その結果、前を向いた状態でボールを受けることが可能となり、スピードに乗りやすいドリブルを繰り出せたのだ。
三笘自身も試合後のメディアへの取材でこのことに言及しており、相手の選手の特徴に助けられた側面がありそうだ。後半になって本職SBのリース・ジェームズがマッチアップするようになってからは距離を詰められたこともあり、あまり前を向けていなかった。
三笘のドリブルが減っていた理由
では、チェルシー戦以前の数試合ではあまりいい状態で仕掛けられていなかった理由はどこにあるのだろうか。その最大の理由は、デ・ゼルビ監督の指示を受け、大外ではなく内側のレーンに入ってのプレーを求められていることもあり、得意サイドでのアタック機会が減っていたことにあるだろう。それ自体は悪いことではなく、むしろインサイドでのプレーが増えたり、裏を狙ったりするプレーが増えたことで得点に絡むシーンが増えたことも事実だ。ブレントフォード戦での今季7点目も、背後を狙い続けていたからこそ生まれたゴールだったと言える。
ブライトンは何が変わったのか
この試合も、ブライトンは普段と変わらずGKからしっかりとボールをつなぎ、2CBと中盤が関わりながら、いつも通りのスリリングなビルドアップを見せていた。普段と異なる点としては、SBが中に絞るタイミングが良かったこともあり、中央に敵を引きつけ、CBと三笘のパスコースをうまく作ることができていたことだ。また、中盤の選手が数的有利を作れていたことで、カイセドやマクアリスターから三笘へのパスが通りやすくなっていたことも要因だろう。
さらに、この試合ではチェルシーが三笘に対して2枚の守備で対応しなかったことも、三笘が活躍できた要因の一つだと考えられる。1対1で高いドリブル成功率を誇る三笘を一人で止めることは、もはや世界トップクラスの対人能力を持つ選手ではない限り難しいだろう。
ブライトンは今週末のFAカップ準決勝でマンチェスター・ユナイテッドと対戦する。この試合で三笘とマッチアップする可能性が高いのが、プレミアリーグで最高の守備力を誇ると言われるイングランド人SBアーロン・ワン=ビサカだ。元イングランド代表DFで、リヴァプール一筋で活躍したジェイミー・キャラガー氏も「世界最高」と推したこの25歳のSBに対して、三笘はどのようなマッチアップを見せ、そして世界中を魅了してくれるのだろうか──。
(ABEMA/プレミアリーグ)(c)aflo