さまざまな背景を持つ登場人物が、自分の心と向き合う過程を描いた漫画『君の心に火がついて』が話題を集めている。
「田代さん、うち来て長いし、そろそろ役職つけてもいい頃でしょ」
上司から昇進を聞かされ、努力が報われたと喜ぶ女性。しかし、理由は――
「女性の管理職を増やしていかないといけなくて。期待されてるのは女性ならではの細かい気遣いとかだから」
女性だから気遣いができるという決めつけに「能力に関係のないレッテルに薄い言葉が乗って私をコントロールする」とうんざりする、という内容だ。
レッテル貼りとは、物事を一つの型にはめて全体をひとくくりに判断すること。「女性だから」「ハーフだから英語が話せる」といった見た目以外にも「夜の街で働いているから遊んでいそう」といった職業レッテルや「九州出身なら亭主関白でしょ」といった地域レッテルなど、あらゆるカテゴリーに存在する。
ニュース番組「ABEMA Prime」で実施したアンケートでは「レッテル貼りをされたことがあるか?」の質問に7割以上が「ある」と答えた。
中にはレッテル貼りに本気で悩み、つらい思いをする人がいる。福本貴彦さん(25歳)は中学時代、あるレッテルを貼られ、悩んだ過去がある。
もともとは父親の仕事の関係で、海外に住んでいた福本さん。高校受験のタイミングで日本に戻ってきたという。
「当時、最初の定期テストの結果を見た担任の先生から『私が思っている帰国子女と違う』と言われた。僕自身、当時そんなに賢くなかった。確かに英才教育を受けた賢い帰国子女はいるが、僕はそうではない。その部分のギャップにすごく苦しんだ」
帰国子女は憧れの目で見られることもあるそうだ。
「同級生からは『いいな、うらやましい』と言われることが多かった。でも、それが先生をはじめ、少し年代が上になってくると『私の思っている帰国子女は賢くて勉強もできる』と失望されたような感じがあった。自分がなりたくてそうなったわけではないのに、決めつけられてしんどかった。帰国子女ではなく、生徒の一人として見てほしいと思った」
なぜ人はレッテル貼りしてしまうのだろうか。公認心理士の川島達史氏は「心理学の研究で分かっていることだが、いろいろな見方ができる感覚を持っている人と、その感覚が欠落している人がいる。認知の複雑性において個人差がある」と話す。
山中真理子さんも「長女」のレッテル貼りに悩んだ一人だ。
「当時、自分より明らかに小さい妹が家にやってきて、お母さんを取られてしまった。だから『お姉ちゃんになったね』と言われて育った。お母さんは妹の面倒を見ているから『なんでも自分でやらないと』と環境的にレッテルを貼られていく。私も『しっかりしないと』という意識がどんどん芽生えていった。だから人に甘えられないし、頼るのが下手だ。頼まれたら『ノー』と言えない。頑張りすぎる女子に育っていくことが多いと思う」
山中さんのケースは「長女症候群」と言われる。「長女で良かったこと」を聞くと、山中さんは、こう答える。
「とにかくなんでも自分でできるようになった。服のお下がりがないのも良い。ただ『妹になりたい』と思ったことはあった」
その上で、山中さんは「自分を苦しめているレッテルは、自分で剥がしていい」と話す。
「自分が姉であることは変わらない事実だ。長女の場合、自分以外の人からレッテルを貼られることもあるが、自分が『しっかりしないと』と思って、自分でレッテルを貼ってしまうこともすごく多いと思う。だから大人になった今、妹も大きくなっているし、そのレッテルを自分で剥がしていいと思う」
弁護士の南和行氏は「離婚の案件をたくさん見ているが、女性の中に『もっと早く相談したらいいのに』と思う人がいる」と話す。
「今思うと我慢していたのだなと。長女症候群的に『私は元々我慢しなくてはいけないから』と思って、しんどいと実家のお母さんに言えない。ついつい、大人も小さい子に『お姉ちゃんだから』と日常茶飯事で言ってしまう。山中さんの話を聞いて、あまりそれを小さい子にいうのはよくないなと思った」
(「ABEMA Prime」より)
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