育成組織から大宮アルディージャ一筋の奥抜侃志にとっては大きな決断だった。ポーランド1部グールニク・ザブジェへの移籍だ。初めて挑む舞台でも、最大の武器であるドリブルは「通用している」と話す。「海外でプレーする」という「夢」を叶えたドリブラーは、今ポーランドの地でさらなる飛躍を遂げようとしている。
取材・文=三島大輔
写真=Górnik Zabrze(クラブ提供)
――昨年8月末にグールニク・ザブジェへの期限付き移籍が発表されました。改めてオファーが届いた時の心境や決断した理由を教えてください。
奥抜 自宅にいる時に電話でオファーの話を聞きました。迷いもありましたが、挑戦したいと思いましたね。相馬(直樹)監督には『自分が後悔しない道が良いぞ』という言葉をかけていただき、背中を押された感覚がありました。
――もともと海外志向は強かったのでしょうか?
奥抜 強かったですね。中学生・高校生の頃から、海外でプレーすることが夢でした。海外サッカー、特にプレミアリーグをよく見ていました。ドリブルで切り裂いていく選手を見て、海外でのプレーに憧れを抱いていました。
――今季はリーグ戦22試合に出場し、4得点を記録しています。
奥抜 結果としてはまだまだ足りません。もどかしさもありますが、ドリブルという自分の強みを発揮できている感覚もあるので、あとはゴールとアシストという目に見える数字を残していきたいと思います。
――やはり得点・アシストといった結果を残すと周囲の目は変わるのでしょうか?
奥抜 そうですね。コンスタントに良いプレーをするよりも、一発ゴールを決めた方が周囲からの評価は高くなると思います。
――エクストラクラサ(ポーランド1部リーグ)はどういった特徴のリーグなのでしょうか?
奥抜 球際が激しく、1対1の局面がすごく多いです。互いの良さを潰しながら、前からドンドン行くチームが多いですね。
――その中でグールニク・ザブジェはどんな戦術を採用しているのでしょうか?
奥抜 (ルーカス)ポドルスキ選手がいるので、彼が下がりながらゲームメイクをしてくれます。リーグの中ではボールを保持するタイプのチームです。監督からは『ボールを持ったら仕掛けろ!』と常に言われているので、自分の役割的にはすごくシンプルですね。
――ポドルスキ選手は日本でもプレーしていました。彼の存在は心強いですか?
奥抜 ヴィッセル神戸でプレーしていましたが、カテゴリーが違ったので対戦経験や面識もありませんでした。ただ、オファーが届いてからDM(ダイレクトメッセージ)で『ポーランドに来いよ!』と何回も誘ってくれました。加入してからもチームに溶け込めるようにと会話に混ぜてくれますし、いつも積極的に話しかけてくれます。
――プレー面ではやはり別格ですか?
奥抜 キックの技術とスピードは半端ないです! 初めて生で見てレベルが違うなと感じましたね。
――先ほど「自分の強みを発揮できている」という話もありました。ポーランドに来てから自信になっている部分について教えてください。
奥抜 ドリブルで縦に仕掛ける時の一瞬のスピードは通用するなと感じています。一瞬の間合いで抜いて、相手の前に入り込むプレーには自信があります。ポーランドはあまりグラウンドの状態が良くないので、タッチ数が多くなるカットインだと難しく、縦への勝負が多くなりました。日本にいた頃と比べて、縦への仕掛けは成長していると思います。今は1対1の場面が来たら、ほぼほぼ抜ける感覚があります。あとはドリブルで抜いた後のプレー、ゴールやアシストといった数字の部分が課題です。
――1対1で勝てるとなると「奥抜に出せ!」といった雰囲気になるのでしょうか?
奥抜 ホームゲームでは1対1になると歓声が上がるようになりました。『仕掛けろ!』という雰囲気を作ってくれます。ポドルスキ選手のサイドチェンジやボランチの選手が良いパスをくれるので、1対1の場面を作り出してくれるのは有り難いです。徐々に認められてきている感覚はあります。
――今季は三笘薫選手(ブライトン)と久保建英選手(レアル・ソシエダ)が活躍をしています。同じドリブラーの奥抜選手から見て、彼らのプレースタイルはどう映っているのでしょうか?
奥抜 三笘選手はボールタッチが独特で、タイミングの取り方が違うなと思います。リーチの長さも別格です。久保選手は頭が良く、三笘選手とはまた違ったスピードで抜くドリブラーかなと思います。縦に行く時は三笘選手のようなギアが一気に上がるようなドリブル、カットインは久保選手のように細かくタッチできるプレー。そこを使い分けられるプレーヤーが理想です。
――話は変わりますが、今季の大宮はいかがでしょうか?
奥抜 もちろん気にしていますし、試合も可能な範囲でチェックしています。栗くん(栗本広輝)、シバ(柴山昌也)、同期の佐相(壱明 ※SC相模原)とはよく連絡を取り合っています。
――年齢が離れた栗本選手と仲良しとは少し意外でした。
奥抜 年齢的には8個差ですかね。後輩の面倒見もすごく良くて、日本にいる時もよく2人で出かけたりもしました。
――約1シーズン欧州でプレーをして、今改めて感じることは何でしょうか?
奥抜 欧州でプレーし続けたいと強く思うようになりました。ここで生き残って、戦い続けていきたいと思います。
――5大リーグへのステップアップも見据えていると思います。
奥抜 ドイツは近いですし、ポドルスキ選手もいるので身近に感じています。よくブンデスリーガの試合も見て刺激をもらっています。
――日本代表への想いというのはいかがでしょうか?
奥抜 自分の目標ですし、日本代表を目指してチャレンジをしています。森保(一)監督の目に留まるような数字を残していきたいと思いますし、もっともっと自分に厳しくやっていきたいです。自分と年齢の近い選手が中心になってきているので、そこに自分も入っていきたいなと思います。
――では、最後にファン・サポーターへメッセージをお願いします!
奥抜 残り数試合ですが、しっかりと結果を残してチームの助けになれるよう頑張っていきたいと思います。日本からも応援よろしくお願いします!