カーフ地獄で足がぐにゃりと崩され、転がりながらも、その勢いを利用して本能で見せた高速バックブロー。試合には敗れはしたが、印象的な反撃が反響を呼ぶ一幕があった。
4月29日に国立代々木競技場 第一体育館で開催された「RIZIN LANDMARK 5 in YOYOGI」。金原正徳と山本空良の対戦は判定3-0で金原が勝利を収めた。MMA歴20年国内のみならず世界を知る40歳の金原と元UWFインター・山本喧一を父に持ち、Uの遺伝子を現在に継承する22歳の山本。世代を超えた対戦は、試合巧者ぶりを随所で見せたベテランの完勝に終わった。
1ラウンド中盤に、山本のタックルを切った金原は上から肩固めのポジションで動きを封じ試合をコントロール。ラウンド後半立ち上がった山本のパンチに、金原が右カウンターを当てダウンを奪うとそのまま飛び込んで踏みつけ。ヒヤリとする場面も山本はラウンド終了のゴングに救われる。
蹴り足に力のない山本は2ラウンドも、金原の脱力した状態からノーモーションで放つローキックと、出どころが読みづらい細かいパンチに翻弄されなかなか手を出すことができない。ラウンド後半、山本が大きなモーションから右フックを当てるが、金原も体重を乗せた躍動感あるスーパーマンパンチ。さらに傷んだ足を狙いカーフキックで崩しにかかる。
3ラウンドも、金原はワンツーで再び山本からダウンを奪う。その後もグラップリングを得意とする山本の下からの足関やフロントチョークも極めさせず動きを封じながら体を入れ替えマウントからバックと制圧しそのまま試合終了。
判定結果は3-0。ゲスト解説の高阪剛も「(山本にとって)これは学びの時間だった」と振り返るほどに経験と巧さに秀でたベテラン金原の圧勝。コメント欄からも「金原選手の技術がやばい」「こんなに強いのか…」「今が一番強いんじゃないか」といった声もあがる。
そんな中、山本の気持ちの強さを象徴するようなシーンもあった。2ラウンド終了間際、金原の執拗なカーフキック地獄に足がグニャリと曲がり体勢を崩した山本だが、崩れた勢いを利用して、なりふり構わず必死のバックブローで反撃。
低空ながら拳が顔面をかすめると、予期せぬ反撃に金原も「やるじゃないか」とばかりにニヤリと笑みを浮かべる。劣勢のなか放った本能のバックブローに視聴者からは「根性がある」「足はもう駄目なのに」「ここでバックブローとは」といった驚きの声が上がった。
試合後、山本は会見に臨み「凄くいい経験になりました。自分の実力の無さともっと試合で自分を前に出せたら…」と悔しさを滲ませたが、同時に早い時点で右の拳を負傷し満身創痍のなかでの戦いだったことも明かした。
また「(当初の印象は)大人の圧があって嫌な感じだった」という金原から「お前がこれからは背負うんだぞ」と試合後に励まされたエピソードを披露。「戦い方をイチから考え直した方がいいと思う。これから勝つには今のスタイルを捨てなければ」と自己を見つめ直し再起へ向け早くも前を向いていた。
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